スリール

スリールです。好きなことは読書、映画鑑賞、美術鑑賞、旅。パリ留学経験あり。7年間で15…

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スリールです。好きなことは読書、映画鑑賞、美術鑑賞、旅。パリ留学経験あり。7年間で15か国旅しました。 国籍、年齢、性別、職業にとらわれず自由に表現します。目標はインスタ投稿中の写真に文章をつけていく!https://www.instagram.com/rire1108rie/

最近の記事

『コイン』とパリからのファンレター

1999年12月31日、ノストラダムスの大予言で世界は滅亡すると言われていた。幸いなことに世界は滅亡することなく、私は2000年のニューイヤーをパリで過ごした。 当時私は一年間パリに滞在していた。その時に持って行ったのが山崎まさよしのアルバム数枚。中でも思い出深いのが『コイン』という曲。夜中に何度も聞いて涙を流した。 友人から借りたポータブルCDプレイヤーパリに留学することになったとき、友人が成田空港まで見送りに来てくれた。イギリスに留学経験がある彼女は、日本語を話す機会

    • 『恋人までの距離』ユーロスターでの出逢いと夢の中の街ウィーン

      『恋人までの距離』1995年アメリカ映画。リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー主演。この映画について今回は書いてみたい。(多少のネタバレあり、核心には触れていません) ブタペストからパリまでユーロトレインでの移動中に出会ったジェシーとセリーヌ。二人は意気投合し、ジェシーが下車するウィーンでセリーヌも途中下車し、14時間だけともに過ごす。ホテルは取らず夜通し街を散策する二人。翌朝には別れて別々の国に帰らなければならない。他愛ない会話の数々に思わ

      • 南仏ホームステイ&ポルトガル一人旅~ポルトガル編①~

        リゾートを楽しむヨーロピアンでにぎわうリスボンパリのシャルルドゴール空港は7月だというのにどこか寒々しい空気がただよっていた。飛行機に乗り2時間半、リスボンに到着して空港におりたつ。雰囲気は一転して、リゾートを楽しむ観光客があふれていた。パリの空港が寒々しく思えたのはビジネスマンが多かったせいかもしれない。 スーツケースが出てくるのを待っていると、30代の日本人らしい男性と目が合う。「お仕事ですか?」と真面目そうなその人が聞く。ラフだけど、こぎれいなファッション、きっとビジ

        • 『Sing street』を観て

          二人の間の関係性に形はなく名前はつけられないけど、お互いを大切に思っている微妙な感情を表現している小説や映画が好きだ。単純に言えば友情以上恋人未満だけど、もっと美しくあやふやで、言葉にして名前を付けたとたん風に吹かれて消えてしまうような儚い関係。 小説なら『愛を詠む人』。映画だとソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』や『ゴーストワールド』も好き。 『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督もそんな関係を描くのがうまい監督の一人。『はじまりの

        『コイン』とパリからのファンレター

          起きても夢でも…

          1,2年ほど前から注目している女優さんがいた。絶世の美女ではないけれど、あどけなさが残る初々しいその笑顔をテレビで見るだけで、ピュアだったころの自分に一瞬だけ戻れる気がした。ナチュラルで澄んだ感性が演技にも反映されていてテレビで見るたび惹きつけられた。 しかし彼女はある過ちをおかし、メディアから消えた。 マスコミは彼女をこれでもかというくらい叩いた。彼女を庇う人まで叩かれた。 私の若いころを思い返してみる彼女はまだ22歳。私は22歳のころの自分を思い出してみる。人の愛し

          起きても夢でも…

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編④~

          おまけでつけたパリ観光もいよいよ今日で最終日、明日はリスボンへ移動。最終日のパリはどんな一日になるのか。 最終日のショッピングが…私はパリに到着した日に買い逃したものや家族や友人のお土産を買うため、再びマレに行くことにした。 ところが…マレに着いてびっくり!なんとほとんどのお店が閉まっていた。日曜はキリスト教で安息日。労働が禁止されているフランスでは、スーパーや百貨店などほとんどの店舗がお休み。やっているのはアラブ系か中華系の店舗だけ。私はすっかりそのことを忘れていたのだ

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編④~

          星の王子さまを育てる学校

          「ねえ、ひつじの絵をかいて」 王子さまはぼくにいいます。 およそ人が住んでいるところから千マイルもはなれている砂漠のど真ん中。 ぼくは王子さまにゾウをこなしているうわばみの絵をかきます。 「ちがう、ちがう!ぼく、ウワバミにのまれてるゾウなんかいやだよ」 サンテグジュペリ 「星の王子さま」一部抜粋 だれにも理解されなかったぼく「星の王子さま」の主人公、「ぼく」がウワバミにのまれてるゾウの絵をかくたびに大人はいいます。「そいつはぼうしだ」と。 ちがう、うわばみにのまれてるゾウ

          星の王子さまを育てる学校

          10年越しの猫たちとの再会

          25歳の初夏、鎌倉に行った。何もかもが新鮮で楽しかったあのころ。社会人になりお金も自由に使えるようになっていた。行きたいところに自由に行けるようになっていた。まだまだ知らない素敵な場所にもっともっと行ってみたい!そう思っていたあの頃。 静かな時間の流れる甘味喫茶初夏の鎌倉はひっそりとしていた。女子二人の鎌倉旅。海水浴にはまだ早く、紫陽花はもう終わってしまったその季節は人影もまばらだった。 サーファーでにぎわう海沿いも華やかですてきだけど、北鎌倉の渋い雰囲気に魅了された。い

          10年越しの猫たちとの再会

          「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読んで、時を経て理解した娘の発言。

          発売より一足遅れて購入した村上春樹さんの新作「一人称単数」。短編なのであっという間に読み終わってしまいそうでもったいなくて、毎日一話ずつ大切に読んでいる。中でも深い印象を残したのが「ウィズ・ザ・ビートルズ」。 たった一度しか会っていないにも関わらず、人生に深い影響を与える人は確かに存在する。あるいは一度も会わなくとも。読了後そんな人たちのことを久しぶりにじっくりと考えた。 今回はそんな感想と共に「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読んだことにより、時を経て理解できた娘との会話につ

          「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読んで、時を経て理解した娘の発言。

          「乾杯」が嫌いな私を変えた輝く夏の「Cincin!」

          私は乾杯が嫌いだった。それは生まれて初めて参加した飲み会でのできごと。飲みたくもないビールを「乾杯の時ぐらいは…」とつがれ、誰かの大きな「乾杯」の声とグラスのぶつかり合う鈍い音に居心地の悪さを感じた。長々と続く愚痴を中心とする不毛な会話にひたすら耐えた。 そんな私の「乾杯」嫌いを変えたのはパリでの「Cincin!」。フランスで乾杯の時に使われる言葉「Cincin!」のリズミカルな発音とグラスがぶつかる音が合わさり心地よく響く。夏の日差しみたいな金色のビールとみんなの笑顔がは

          「乾杯」が嫌いな私を変えた輝く夏の「Cincin!」

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編③~

          静かな時間が流れるピカソ美術館ピカソの絵画を初めて目にしたのはいつだろう。おそらく小学生のころ、美術の教科書で目にしたのが最初だと思う。 ルノワールやモネなど美しい印象派の絵画が好きだった私にとってピカソの絵画は奇をてらった落書きのように見えた。 しかし20歳の時、初めて訪れたパリでピカソの絵画を目にした時の衝撃は忘れられない。 落書きのように見えたキュビズムの作品が私の心を大きく揺さぶった。 まるで右の脳と左の脳を合わせてミキサーにかけられたような混乱した感覚。言語

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編③~

          村上朝日堂で村上春樹さんからメールの返信が来た話

          村上朝日堂、それは作家村上春樹さんと読者が交流できる夢のようなウェブサイトだ。村上朝日堂は1996年に開設され1999年に閉鎖されている。 14年ほど前、村上さんの大ファンだった私は期間限定で復活した際に 2通ほどメールを送信した。 今回は14年前に私が村上さんに送信したメールの内容を公開したいと思う。 伝説の村上朝日堂村上朝日堂という伝説のウェブサイトをご存じだろうか。 読者からよせられたメールに村上さんが返答してくれ、そのやり取りがウェブサイト上に公開される。 読者の様

          村上朝日堂で村上春樹さんからメールの返信が来た話

          ある梅雨の日、夢やぶれた私によりそってくれたスガシカオさんの曲

          スガシカオさんの曲には麻薬のような中毒性がある。彼の音楽でなければダメだ!他の曲はもう聞けない、そう思わせる強い力がある。特筆すべきはあの文学的な歌詞である。 彼は文筆家ではない、なのになぜこれほど人の心に強く響く言葉を紡げるのだろうか。 梅雨の日の午後、夢やぶれた私に寄り添ってくれた彼の曲と、それが与えてくれたものについて書いてみたいと思う。 夢やぶれて、、、それでも届けたいこの思い小説を書いてみたい、そう思ったのはいつごろからだろうか。日記帳に残された稚拙な落書きのよう

          ある梅雨の日、夢やぶれた私によりそってくれたスガシカオさんの曲

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編②~

          パリから帰国して3年、フランス語をほとんど忘れかけていることに危機感を覚えた私は、ニースでホームステイすることを決意。さらに航空券のストップオーバーを利用して「深夜特急」を読んで以来憧れていたポルトガルへ一人旅することに。 パリでは初めてユースホステルに泊まり、そこで知り合った日本人男性と意気投合。さてこれからどのようなことが待ち受けているのでしょうか。 現れたのはスペイン人女性!やがて本の話題で盛り上がっていた私たちのもとに、一人の女性が現れた。するとヒロシが「hola」

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編②~

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編その①~

          早朝パリのカフェにて 旅の行程は、パリに3泊→飛行機でリスボンへ。リスボン6泊→飛行機でパリへ移動。その日のうちにTGVでニースへ。ニースに3週間滞在→パリへ戻り帰国。約一か月の旅だ。 パリには早朝に到着した。まだぼんやりした頭をすっきりさせるため、人影もまばらなシャルルドゴール空港のカフェでクロワッサンとコーヒーの朝食をとった。コーヒーの香りとフランス語の響きが、パリに戻ってきたことを感じさせた。パリでの滞在は「深夜特急」で主人公が度々滞在していたユースホステル。初めて滞在

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編その①~

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~プロローグ編~

          2000年に一年間のパリ留学を終えて帰国した私は、その後日本で全くフランス語に関わらない暮らしをしていた。 高給取りではなかったが、当時実家暮らしをしていたので金銭的に余裕があった。平日のアフターファイブは買い物やグルメ、週末は映画鑑賞や旅行と忙しくしていた。 フランス留学のことなど忘れて、日本での生活を思いっきり楽しんでいた。 帰国から3年たったころには、簡単なフランス語会話すらおぼつかなくなっていた。 このままじゃいけない、あんなに忘れがたい貴重な経験をしながら得たフラン

          南仏ホームステイとポルトガル一人旅~プロローグ編~