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レシピから自由になる為のレシピ。その5「レシピ本を読み解く。」2

前回は超有名イタリアンシェフの落合務さんの本から、実際のパスタのレシピをもとに、その行間に隠された「美味しいコツ」を書き出してみました。今回も落合さんの「ラ・ベットラ シークレットレシピ」から「豚ロースグリル バルサミコソース」のレシピの行間を洗い出して、解像度を上げていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

では早速。 


レシピの行間を読め。(肉料理編)


豚ロースグリル バルサミコソース

材料(一人分)
豚ロース肉切り身(約150g) 1切れ
赤ワインビネガー          20cc
バルサミコ酢          30cc
塩、コショウ、強力粉、
無塩バター、サラダ油     各適宜

作り方
豚ロースの脂身に切り目を入れ、塩、胡椒して強力粉をはたく。

 フライパンにサラダ油大さじ1と無塩バター小さじ1を熱し、豚肉の表面をこんがりきつね色に焼く。

 肉を返し、中火で火を通し、赤ワインビネガーを加え、強火でフライパンをゆすりながら水分をとばしバルサミコ酢を加え全体にからめて肉を取り出す。

 ソースの煮詰まり加減をみて水50ccを加え、塩コショウで味を整え、仕上げに無塩バターひとつまみを加えて乳化させ、肉にかける。

レシピはここまで。
前回のパスタのレシピと比べると少し詳しく書いてあるレシピです。でもやっぱり隠れたコツがたくさんあります。では材料から見て行きます。

材料の行間に隠れた情報。

まず、豚ロース肉 約150gとあります。この本のレシピでは黒豚ロースとなっていますが、お肉の質は好みと予算に応じて選べばいいと思います。ただお肉で割とはっきり言えるのは、値段がいいものが美味しいということ。値段の差は飼育環境の差が大きく関わっていて、いい環境で育てられた(つまりお金と手間をしっかりかけて育てられた)ストレスが少ない子達は美味しいという事です。こう聞くと、やはり生命をいただく訳ですから敬意持って料理をして、食するのは大事なことだと思います。
話を戻します。量もそれぞれ。食べ過ぎに気をつけてお好きな量を食べましょう。それと部位の話も。ロースとありますが、個人的にはヒレがオススメです。この料理はソースが濃い。ロースは脂身と赤身のバランスが良い部位ですが、割とこってりしてますので濃い味のものが食べたい時はいいかもしれませんが、胃がもたれることも。ま、若いときは全然気になりませんでしたが。

赤ワインビネガー、バルサミコ酢。
2種類の酢を使うって珍しいですよね。ここはこの料理最大のコツかもしれません。作り方のところで解説します。量は参考程度に。もちろんお肉の量と関係してきます。その2の「計量をやめてみる。」で話したように勘を磨いていきましょう。

塩、コショウ、強力粉、無塩バター、サラダ油、適宜
まずは強力粉。薄力粉でも大丈夫です。小麦粉をはたいて焼くのにはいくつかの意味があって、
・香ばしくカリッとした歯応えに仕上がる
・コーティングして旨味を逃さずジューシーに焼ける
・焼いてるあいだに逃げた粉でソースにトロミがつく
・ソースが絡みやすい
などです。そんな特徴を踏まえると、薄力粉と比べて強力粉の方がトロミも強く出るし、カリッとした感じも強い仕上がりになりますが、わざわざそのためだけに強力粉を買うほどの違いはないっす。薄力粉でも十分美味しいです

無塩バター。なぜわざわざ無塩と言っているのかというと、調味を計算しやすいからです。塩を添加されたバターを使うたびに仕上げに入れる塩の量を調整しなきゃならないのは面倒だからです。意外に塩きいてますからね。

次にサラダ油。イタリアンだからオリーヴオイルじゃないの?と思うかもしれませんが、ボクもお肉を焼く時はオリーヴオイルじゃなく、サラダ油を使います。(ちなみにボクはヒマワリ油を好んで使っています)。旨味が強いお肉に、コレまた旨味と香りの強いオイルを使う必要がないからです。オリーブオイルは高いですし。塩に関してはまたどこかで書いて見ようと思います。

作り方の行間に隠れたコツ。

次に作り方を見ていきましょう。

1豚ロースの脂身に切り目を入れ、塩、胡椒して強力粉をはたく。
ロース肉には脂身と赤身の間に筋が走ってまして、これを切っておかないと火が入った時に筋が縮んで丸まってしまうんです。丸まってしまうと表面全体に火が当たらないので均一的に焼けないんですね。この作業はやっておいた方がいいです。均一的に焼けないということは、火が入りすぎて硬くなった所と生焼けの所が出来てしまうという事です。衛生的にも筋切りはやって下さい。イメージがわかない方に丁度いい映像を見つけました。自分で撮った動画ですが(笑)よかったら参考にしてください。

*切り目を入れるのは4分50秒あたりから。

塩の量がわからないという声も聞きます。これはレシピ化するのが難しい所なんですね。お菓子のレシピのように全部決まってたら楽ですが、お肉の量もまちまちですし、ソースとの兼ね合いもありますから。そしてこの料理は焼き上げるまで味見もできません。前回のパスタの回でも話しましたが、下味が付いてないと、いくら美味しいソースをかけて食べても間の抜けた味になってしまいます。ソースとお肉の味をつなぐものがないからなんです。塩加減に自信がない時は優しめの塩で焼きましょう。しっかり下味はつけたいですが、ここでは優しめにして食べたときに塩が足りなかったら、その時に足すことはできます。かけ過ぎた塩は戻せないですから。そして強力粉(薄力粉)を、付いてない所がないように、まんべんなくつけて余分な粉をしっかりはたいて落とします。余分な粉がついいると焼いている途中に落ちて焦げてしまうんです。すると焦げ臭くなってしまうという訳です。

2 フライパンにサラダ油大さじ1と無塩バター小さじ1を熱し、豚肉の表面をこんがりきつね色に焼く。
フライパンにサラダ油とバターとありますが、ボクはここでバターを入れることはありません。理由は

1.ロース肉で脂身がありこってりしてるから
2,ソースの仕上げでもバターを使うから

です。バターも使った方が香り高いかもしれませんが、その辺は好みです。

表面をこんがりきつね色に焼く。火加減が気になる方もいるかもしれませんが、これは経験を積んでいくしかありません。片面で7〜8割くらい火を入れてしまいます。つまり7〜8割ほど火が入ったタイミングで焼き色が淡かったり、焦げていてはいけません。フライパンでお肉を美味しく焼くコツは、

1、まずお肉を入れる前にフライパンをしっかり熱する(熱くしすぎてもいけませんヨ)

2、お肉を入れたら油を馴染ませるために揺すりますが、そのあとはあまり動かさないようにする。

3、たまに焼け具合をそっと覗いて火加減をこまめに調整する

です。焼き色をつけるというのは、カリッとした食感と香ばしさという香りをつける大事な作業です。こればっかりは経験を積んで感覚を手にするしかないです。失敗を恐れず納得するまでやりましょう。一度掴んでしまえばそれはあなたの財産になりますよ。

3 肉を返し、中火で火を通し、赤ワインビネガーを加え、強火でフライパンをゆすりながら水分をとばしバルサミコ酢を加え全体にからめて肉を取り出す。
なぜ中火かというと、7〜8割火が通ってますから裏面にもある程度焼き色をつけるには中火くらいが丁度いいのです。一口に中火と言ってもガス台の種類にもよるし、フライパンの大きさや厚さ、何枚お肉を焼いているかにも、その時のお肉の状態にもよるので、やはり感覚です。自分を信じて勘をきかせましょう。バルサミコソースなのに赤ワインビネガーも使うってよくわからないですよね。これも下味なんです。お肉にも少し酸味をつけておくと、バルサミコソースの酸味と橋渡しができて馴染みやすいんですね。白でなく赤ワインビネガーなのもバルサミコ酢と馴染むからです。強火で水分を飛ばすのは酸の角を和らげるのと、お肉に酸味をつけるのが目的で、ソースへの影響を避ける為かと思われます。バルサミコ酢を全体にからめて取り出したあともまだ余熱で火が入りますから、火加減というのは本当に厄介ですヨ、ほんとに。。それとバルサミコ酢を入れる前に油がたっぷりあるようなら余分な油は捨てましょう。

4 ソースの煮詰まり加減をみて水50ccを加え、塩コショウで味を整え、仕上げに無塩バターひとつまみを加えて乳化させ、肉にかける。
ここで隠れているのはまず、フライパンには焼いたお肉の旨味がたっぷり付いているということです。バルサミコ酢を入れたら火を弱めてフライパンを洗うようにソースに旨味を閉じ込めて行きます。ここで50ccと具体的な数字が出てきましたが、煮詰まり加減をみてという所を見逃してはいけませんヨ。必ず50cc入れろとは言ってません。ひっかけ問題ですね。一度煮詰めてからのばすというのはよくやるんです。旨味を凝縮してからのばす、パスタソースでもやりますし、煮込み料理でもやります。これは例えば干し椎茸などのように、干した物を戻すと旨味が強くなるのと同じ原理かと思われます。ソースの濃度がいい感じになったら、塩コショウを入れ(ここも怖かったら優しめで、食卓で食べながら塩を足しましょう)仕上げにバターを入れて乳化させると。乳化はドレッシングのアレです。ドレッシングって放っておくと容器の中で油と液体が分離してますよね?かける前に思いっきり振って乳化させてトロリとするアレです。のでフライパンを揺すってバルサミコ酢とバターの油をぶつけて乳化させます。あとは温かいうちにお肉にかけて美味しく頂きましょう!

豚肉グリル バルサミコソースの動画。

ボクが撮ったバルサミコソースの動画です。お肉がヒレなのと、ビネガーではなく赤ワインを使っていますがほぼ同じです。
良かったら覗いてみてくださいませ。

誰も知らないアナタだけの近道。

初めてレシピの行間を紐解いてみましたが、文字にしてみるとなかなかの情報量です。これに加えて音や香りや見た目、勘や感覚的情報も汲みとってるんですから、料理人ってやっぱり凄いですね。自分に感心しましたよ(最近じぶんを褒めることを覚えました)
まだまだ隠れたコツはあるかもしれませんが、レシピというのがいかに曖昧かというのはわかっていただけたかと思います
レシピは道しるべ。何度も歩いて自分の道を発見した人が独自の味、アナタの味を手にします。そして、コツや料理の理屈を理解していれば、その時々の状況に応じて手を抜くこともできるのです。時短レシピもいいけど、急がば回れという言葉もあります。自分のものにしてしまえば、誰も知らないアナタだけの秘密の近道を見つけられるかもしれませんよ。

※最後まで 読んでいただきありがとうございました。

この「レシピから自由になる為のレシピ」では、できるだけ皆さまが気楽に身構えずに、しかし料理が身につくようにと書いているのですが、何せ文章に関してはドのつく素人でございますので、もし何か「こんな風にしてみたら?」や、「コレってどうゆうこと?」など、料理に関する質問や書き方の提案などありましたら、どしどしコメントして頂けると嬉しいです!自分が解る範囲でお応えできたらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします!!




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