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学校と政治の見えにくい関係

以前の記事を加筆修正したものです。

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勤務先の中学校に卒業生の一人が文化祭を見学しに来ました。10年以上前に卒業した20代後半の男性です。彼は教頭に案内されて展示会場をまわっていましたが、来賓のような雰囲気でした。他にも卒業生はいましたがなぜか彼だけが案内されていました。卒業生であることを強調しながら彼は生徒たちに声をかけ、しきりに握手をしていました。教頭が「この人はみんなの大先輩だからな。将来お世話になるかもしれないからきちんとあいさつしておけ」と生徒たちに言うのが聞こえました。私には何となく不可解でした。私を含めてほとんどの教師は彼が卒業したあと赴任しているので彼を直接教えてはいません。教頭も違います。卒業生を教師が温かく迎える気持ちはわかります。でもなぜ彼だけが特別待遇を受けたのかとても不可解でした

卒業生が中学校の文化祭に訪れるのは珍しいことではありません。でも、来校するのはたいてい卒業して間もない高校生です。彼のように卒業後何年もたって来る例は稀です。何か特別な目的があるときぐらいです。彼もそれまで訪れたことはありません。

さらに不可解だったのは彼には文化祭を見学する様子がまったく見られなかったことです。展示やステージ発表を見るでもなく、会場をまわりながら在校生に「部活は何やってるの?」「ポジションはどこ?」「僕も○○部だったんだよ」などと声をかけ、握手ばかりしていました。生徒たちも「大先輩!」と言って嬉しそうに握手をしていました。

数か月後、彼はある国会議員の秘書になりました。その後大臣にもなるよく知られた議員です。さらに数年後、男性は秘書を辞めて県議会議員選挙に立候補し当選しました。現在は某自治体の首長になっています。

彼はその年なぜ文化祭に来たのでしょう。卒業後一度も来たことがなかったのに。有名国会議員の秘書になることを報告しに? でも誰に? 数年後に選挙に出馬するつもりだったから? いつか首長になるための準備として? 勘ぐりたくはありませんがやはり疑問は生じます。生徒も数年後には有権者になります。彼があれほど熱心に生徒と握手していたのが将来の選挙のためだったとは思いたくありませんが、実に不可解な訪問でした。

公立学校の教員には政治活動は禁じられています。でも教え子が支援を求めてきたらどう対応したらよいでしょう。政治活動か否かの判断が難しいこともあるでしょう。教え子への温かい気持ちから行動した結果で教師が思わぬ処分を受けることがないことを願っています。

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