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学費は奨学金と学内アルバイトで

私は修士課程の2年目から学内の奨学金を得てきました。退職して収入がなくなった私にとって奨学金はとても有難いものです。申請して得たものもありますし、大学から推薦されたものもあります。特に嬉しかったのは博士課程に入学した時、創立者の名を冠した特別奨学金を授与されたことです。博士課程の入学者試験の結果で選ばれるのですが、研究科で1名の枠に選ばれたのです。予想もしていなかったのでびっくりしましたし、私なんかがいただいていいのかなと思いました。でも、しっかり研究しなさいという意味だと思い有難くいただきました。

知り合いの中には「学費に困っている若い学生がいるのだから譲ってあげたらいいのに」という人がいました。確かに学費に苦労する学生は少なくありません。そうした学生を援助したいという気持ちは私にもあります。でも私が取得した奨学金は入試の結果であり、大学が選考したものです。フェアな競争で勝ち取ったものだと言えます。アカデミックな競争です。年齢は関係ありません。

さらに、私がこの奨学金を辞退したとしても次に受け取る人がどのような人だかわかりません。苦学生とも限りません。私より経済的にも豊かな人に渡るかもしれません。たとえ経済的に苦しい学生に渡ったとしても、それが困窮するすべての学生に役立つわけでもありません。奨学金制度の改善につながるなら別ですが、私一人の辞退で問題が解決するわけではありません。奨学金制度そのものの改善が必要です。

私は自分に与えられた奨学金を安易に返上するのではなく、課程を無事に修了したあと大学への寄付というかたちで「恩返し」しようと思いました。与えられた奨学金を有効に使うことがまず私の果たすべきことだと思ったのです。

学費補助のため私は学内のアルバイトもしました。正規の大学院生にはTA(ティーチング・アシスタント)というアルバイトがあります。TAは担当教員の指示に基づいて授業の補助を行います。授業にも参加します。具体的には授業が始まる前に担当教員のところに行き、出席簿と出席カードを受け取ります。配布する資料等があればそれも受け取り教室に運びます。資料はTAが印刷することもあります。教室では配布資料を所定の場所に置き、マイクやプロジェクターなど必要な機器を準備します。デジタル機器の扱いが得意ではない私もここでいろいろ覚えました。

授業が始まると端の方に座って授業を見守ります。途中で担当教員から何か頼まれたり、学生が何か言ってきたりすることもあります。すべて臨機応変に対応します。一定の時間が過ぎた頃に出席カードを配布します。出席カードは教室の入り口に置いておくことなどしません。欠席する友人の分を代わりに提出したり(代返のようなものです)、自分が欠席したときに友達に託したりするために余分に持っていく学生がいるからです。学生もそのあたりは知恵が働きます。だから授業中に学生一人一人に配布します。出席カードは授業が終了した時に回収します。ある程度時間がたった時に渡すのは最低限の時間は授業に出席させるためです。途中で退出する学生がいるからです。

配布は少人数のクラスではすぐに終わりますが、100人以上の大教室だと時間がかかります。配布しながら学生の様子を観察するのも面白いです。大教室で前の方に座る学生はやはりまじめな学生が多く、授業も熱心に聞いています。中央から後ろの方の学生は様々ですが、スマホをいじっている学生はいちばん多いです。出席カードを受け取ったら退出しようと目論んでいる学生は後ろの席に座っています。少人数の場合は終了間際に一人づつ回収して回ることもありますが、大教室ではそれは不可能なので退出時に一人づつ置いていきます。だから友達の分もいっしょに提出することができます。そのあたりはこちらも承知の上です。

TAの仕事は学生の様子を観察するとともにそれぞれの授業を体験できるというメリットがあります。授業もさまざまで大学教員の授業への向き合い方も見えます。授業に出ていろいろと勉強することもできまさに一石二鳥です。

学内アルバイトには試験監督もありました。学期ごとに行われる試験の監督をするのです。さらに入試のときは監督補助の仕事もありました。試験を行う側の様子も見られるので興味深かったです。

学割も学費の節約に役立ちました。社会人も正規の大学院生なら学割が使えるということを入学後に初めて知りました。収入のない私にはJRの運賃が2割引きになる学割はこの上なく有難いです。定期代もかかりますし、学会で遠くに出かけるときは交通費だって馬鹿になりません。学割はフルに活用しました。夫と旅行に行くときも私だけ学割が使えて気分を良くしていました。

学生であることは他にも役立ちます。展覧会や映画なども学生証を見せれば学生料金で入場できることが多いですし、旅行やショッピングの割引に使えることがあります。ソフトウェア製品も学生割引のあるアカデミックパックというものを購入しました。

生協にも学割と同じメリットがあります。書籍や文房具、日用品など2割引きで買えます。昼食も生協を利用すれば安く済みます。それに生協のメニューはバラエティに富んでいておいしいです。「こんな値段で食べられるの?」と驚きました。出資金は必要ですが後で戻ってきますし。

学生という身分の有難さをすごく感じました。



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