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世界激走 アメリカ編 3

その日は、日帰りするつもりだったのと暑さ対策で、予定通り、早朝に出発した。

上から見たグランドキャニオンのトレイル
づっと続く先まで行くとそこからでも、コロラド川は見えます。
その少し手前の緑のとこら辺がインディアンガーデンです。
ファントムランチは、さらにその下です。

小さなリュックに詰めたのは、飲料水少しとリンゴ二個のみ。
そして勢い良く溪谷を下り始めた。朝一で、元気な僕たちは、足るようにして溪谷を下り先を急いだ。
この時すでにグランドキャニオンの罠にはまりかけていた。
谷底まで続くトレイルのだいたいの中間点にインディアンガーデンという場所があり、そこから、さらに少し歩けば、コロラド川を見下ろせる場所があるので、日帰りならば、ここで戻るのが賢明だ。
グランドキャニオンのトレイルトレキングの日帰りを考えている人がいるなら、インディアンガーデンまでを、強く進めます。
実際に、僕も、この後に、もう一度、溪谷を降りたことがあったが、その時には、インディアンガーデンで、引き返した。
インディアンガーデンまでは、途中水飲み場が数か所あり、人もけっこういる。
人どころか、ロバツアーがあり、けっこう人を乗せたロバ歩っていて、これが、ことのほか邪魔な上、たまにフンをしながら歩くものだから、さらに始末が悪い。
だが、この時には、その先に、何が持ち受けているか知らないまま、僕たちは、溪谷を完全に下った先にあるファントムランチまで行こうと決めていたので、さらに下った。
これで、完全に罠にはまった、というか、溪谷下りは、登山とは逆で、降りたら登り切らないと終わらない、そして、登りの方がはるかにキツい、アメリカ人はよく分かっているのだろう、インディアンガーデンから先は、ほとんど降りている人がいなくて、道を間違えたのではないかと不安になるくらいだった。
だが、道は一本道なので、間違えようがなく大丈夫なのだが、人がいないだけではなく、草木もほんど生えていない、そのうえ、水飲み場も一切なかったし、日陰も全くなく、容赦ない日光にづっと照らされ続ける事となる。
でも、まだ下りなので、なんとか足は前に進む、とんでもないキツさはなく、比較的余裕を持ってコロラド川のほとりに到達した。
そんな感じなので、登るときのことなど想像もできず、コロラド川に着いた、達成感に浸りながら、コロラド川に架かるブライトエンジェル歩道橋を渡り、ファントムランチまで、ゆっくり歩いて行った。

ブライトエンジェル歩道橋

しかし、この時、予兆は既にあった、急いで下ったせいなのだろう、足と特に足先が痛くなり始めていた。
ファントムランチに着き、ここは、宿泊施設など、それなりの施設があるのでランチにホットドックを食べ、ここは日陰もあるので、ゆっくり休むが、

ファントムランチにて

蓄積された疲労と身体のダメージは少し休んだぐらいで、回復するものではない。特に、足の指先は、なんかまずい感じになっていたが、どうすることもできない。
僕は、ここで一泊してから戻りたかったのだが、Kの帰国日程を考えるとそうもしていらえれず、トボトボと戻り始めた。
しばらく休んだせいで、歩き始めは、本当にきつかったが、まだ、平地なので、良かったのだが、ブライトエンジェル歩道橋を渡り、登りに入ると、急激に歩く速度が落ちた。
仕方ない、満身創痍なので、とにかく、止まらずに、一歩づつ歩き続けることが、重要だ、一度止まったら、しばらく、動けなくなってしまいそうで、怖かった、速度なんかどうでもいい。
インディアンガーデンまでは、水飲み場が無いので、ものすごく喉が渇いていた。
とうとう我慢できなくなり、リックをまさぐるも、僕らが持っていたのは、缶コーラだった。
それも、リュックに入れて背負っているのと、気温も高く、日光にも照らされ続けているので、なんか生暖かい、でも、のどの渇きを少しでも潤せれば何でもよかった。
でもそうではなかった、缶のプルトップを開けた途端、シュワシュワと泡が噴出し、嫌な予感がした。
まあ、リュックの中で揺られ続けたんだし、そうなるのは、無理もない。
飲んでみると、さらにシュワシュワで、ぬるま暖かい、砂糖水を飲んでいるようなもので、ほとんど、喉が潤をされることは無く、嫌な後味だけが残ることになった。

あわや遭難


仕方なく、トボトボとゾンビのように歩き続け、インディアンガーデンに着いた時は、ほんとにゾンビのようで、途中で死ぬかと思った。
たまに救助要請をする旅行客もいると聞いていたが、僕たちも危うくそうなりかけた。
インディアンガーデンで、動けなくなっていても不思議ではなかった。
まだ、この時は、大丈夫だったが、急いで下ったせいで、足の指先に、負担がかかっていたのだろう、日本に帰国してから、左右の足の爪が合計5本剥がれた。
この時、剝がれてなくてよかった、この時に、剥がれていたら、本当に、これ以上登れなかったかもしれない。
ただ、インディアンガーデンには、水も食べ物もあるので、水をしこたま飲んだ、こんなに水が美味しいと思ったことは無かった。
そして、休憩するも、休み過ぎると、動くのが大変になりそうだったので、早めに切り上げまた登り始めた。
明らかに分かるくらいに身体は重く、疲労が蓄積されているのが分り、足取りはとてつもなく重かった。
インディアンガーデンから上は、たまに水飲み場があるので、それを楽しみに登り続けた。
水飲み場にたどり着くたびに、生きてるって実感するようだった。
登り切った時には、もう夜に近い時間だった。
おそらく、降り始めてから、12時間はかかったと思う。
精も魂も尽き果てた状態で、とにかく、喉が渇き、お腹がすいていたので、近くのレストランで、冷たいコーラを飲み、食事をして、これまた、近くのモーテルを探し、シャワーだけ浴びてすぐに寝た。
もう、ベットの中で、何も考えることが出来ないほど、体力が消耗していてた。
何度も書くが、溪谷下りは、途中で止めても、登り切らなきゃ終わらないのがキツイところだ、登山なら、途中で止めた場合、下りなので、登るよりは楽なのだが、溪谷下りは逆なのだ。
まさしく、その夜は、泥のように眠る、といった感じだった。

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