第2章 RIAA-DSD基本編1

1.新DSDの検討

1−1 アナログかデジタルか

まず、アナログにするかデジタルにするかの検討である。アナログは放送等の転送段階でノイズ等いろいろ問題があるし、何を今更ながらという感もある。あとテープ代がべらぼうに高い(オープンリール)か極端に安い(コンパクトカセット)ものしかない。コスパのいい中間的なテープは生産中止に追いやられている。 私の敬愛する金田さん(金田明彦氏)も経年劣化でアナログ録音(オープンリール・コンパクトカセット)をやめている。以上のことによりデジタル録音方式にせざるを得ない!

1−2 PCMかDSDか

次に PCMとDSDについてであるが、PCMの場合、 A/D・D/Aで変換してるのはせいぜい20ビットまでで、24ビットはディスクリートでつくらざるを得ない。(24ビットADCは一応あるが、デジタルフィルターが常時ON状態であり、薄いカーテンが掛かったかのような若干薄い音になる。それでもデルタシグマをPCMに変換するより遥かにマシ!)すべて測定器用途であるためオーディオ用にするには多少の手間がかかる。

その点、DSDは 1ビットはオーディオ用ADC・DAC主流で結構あるし、マルチビットデルタシグマ仕様もちらほらある。

1−3 1ビットDSDかマルチビットDSDか

しかし、マルチビットデルタシグマは互換性がなくなるし、PCMと同様ビット数とサンプリング周波数を増やす競争も起こりうるし、マルチビット化するにあたりMSBとLSB つまり最大と最小の入力レベルが決まってしまうため、不採用となった。

そうすると 1ビットDSDということになるが、高周波ノイズ(80kHzで-60dB)が問題なので、それをなんとか除去しなければということで、既存の DSDとの互換性を一切なくして、互換性完全無視のDSDを開発することになった。

1−4 RIAAカーブ方式かドルビー・dbxノイズリダクション方式か

1ビットDSDのまま、高周波ノイズを除去するには、2つ方法がある。

1つ目は レコードのRIAAカーブみたいに、高域ほど全帯域持ち上げて録音再生する方法である。もう1つはドルビーやdbxみたいに、高域ほど思いっきり持ち上げて録音再生する方法である。どちらも再生時に高域のノイズを打ち消すことができる!

この2つの方式を鑑みると、前者のRIAA方式の方が圧倒的に有利である!

というのも、後者のドルビーやdbxのノイズリダクションを使う場合、著作権等の問題が生ずるし、一般的にICを使わざるを得ない。アナログ回路に ICを使うとどうなるかというと、非常に音が悪くなるので、絶対使いたくない!

ところがレコードのRIAAカーブだと、ディスクリートフォノイコライザーはザラにあるので、RIAAカーブを採用したDSD 方式を新たに開発することになった。

後位相特性に関しても、ドルビーや dbx だとフィルター乗数とか、6db オクターブを超えることもありうるのであまり使いたくない。一方RIAAカーブの場合 6dbオクターブで全帯域を F 分の 1 特性で持ち上げて録音しているため、自然の法則に則った設計であり、極めて理想的な状態で得られる。さらなる高音質化を実行するには、電流出力アンプ 等を工夫すれば良い!

1-5 サンプリング周波数はどれがいいか?また、44.1系統48系統どちらが良いか?

次に、サンプリング周波数領域である。DSDであるため必然的にPCMよりサンプリング周波数は高くなる。一般的にクロックは高く取ればいいと言われるが、位相ノイズが増えてしまうのであまり高くとってもいけないのである。オーディオ用クロックがなぜ10MHzが主流かということをよく考えてほしい!例えば100MHzとか1GHzと取る場合、相当な記録領域が必要である。周波数が高くなればなるほど位相ノイズは増える。従って音響用より映像用のクロックの方が位相ノイズが多い! 映像と同居すると音が悪くなるのはこうしたことが理由である。したがって 音と映像は完全分離して記録すべきである!また、現在の主流は10MHzのため、なるべくその近傍で取った方がいい。10MHz近傍なら位相ノイズは極めて少ないので、もしOCXOで直結するならば、低域で最大120dBもの位相ノイズを減らすことができる。これを最大限に確保するならDSD の場合、最低でもクロック周波数11.2896MHzの1/2できれば1/4を確保した方がいい。そうすると、1/4分周の2.8MHzまたは1/2分周の5.6MHzが最適任となる!11.2MHz、22.4MHz、44.8MHzは11.2896MHzを超える位相ノイズの多いクロックを使わざるを得ないため不要である!(同様にPCMの176.4kHz以上も11.2896MHzを超えるクロックを使わざるを得ないため不要である!88.2・96kHzあれば十分である!) 11.2M以上はビットレートも増えるので送り出しのトランスポートにも多大な負荷がかかる!なお、48kHz系統のDSDは存在しないので、この際無視する。48kHz系統を無視することによって 44.1系の11.2896MHzのOCXOを2.8Mと5.6Mを切り替えて使えばいいので、理想的で最適な動作が実現できる!

従来のPCMの場合、48系と44.1系統 2つ必要だったため、どうしても製品に妥協せざるを得ない。(今のOCXO主流である10MHzでPLL駆動等で妥協している!) 44.1kHz系の1系統に統合することで極めて理想的な最適な動作が確立できる。

1−6 アンバランス方式かバランス方式か

あと、アンバランス方式かバランス方式かについて検討する必要がある。従来の録音方法は、アナログ(オープンリール・コンパクトカセット・LPレコード)であれ、 デジタル(CD・DAT・固体レコーダー)であれ、左右2系統のアンバランスである。つまり左右1つずつしか使ってない。(アンプ部分がバランスであっても、記録部分は最終的にはアンバランスに変換される。たとえプロ用であっても!) 

それに対して、バランスというのは、左右ホットとコールド各々を記録する方法である。つまりアンバランスの倍必要になりトータル4チャンネル分必要になる!RIAA-DSDの場合1ビットである分、S N の確保が問題になる。バランス化することによって、SNは3dB上がり、振幅も3dB上がるので、聴感上のダイナミックレンジは大幅に増えるだろう!従ってバランス方式を採用することにした。これも世界初仕様である!

これ以上ノイズを減らしてダイナミックレンジを増やすには、パラ接続というよりもパラで録音してそれを再生するという方法もあり得る。従って 世界初の完全バランス方式を採用することにした。バランス化するとスルーレートが3dB上がるので、オペアンプにも効果的になる。民生用等に安く作るためにオペアンプを採用せざるを得ない場合はより効果的である。ディスクリートであるともっといいが、プロ及びマニア向けに限られるだろう。シングルのオペアンプを4機つけることによって、従来のままでもかなりいい音が得られるように工夫する。

1−6 ADC・DACのパラ接続は?

さらなる高音質化として パラ接続というのがある パラ接続というのは、ADCやDACをN個使った場合、SNはルートN倍上がるという仕組みである。 これによって4個接続した時は2倍S/Nが上がり、16個接続した時は4倍S/Nが上がり、256個接続した場合16倍S/Nが上がるということである。現状では1チャンネルあたり16個でバランス仕様であるがゆえに、16×4=64個が最大ではないかと考えている! これをプロ用として採用し、セミプロとかもしくはマニア用としては、 4パラ接続 で16個ということも考慮している!マルチトラックレコーダーとして最大64トラック録音も検討中である!


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