32歳コンビニ人間の料理スタート物語

世の「簡単にできるレシピ」は真のコンビニ人間の気持ちを理解していない。
卵すら稀にしか買わない人間だ。まず、野菜を買うのにハードルがある。余るし、包丁で切ったりしないといけないからだ。
「みりん大さじ1」などとさも当然のように書いてあるが、みりんなんて買ったこともない。一人暮らしには多すぎる。だいたいみりんって何だ?原料は。

そんな私だったが、30歳も過ぎ、ちょうど外出しづらいご時世となったこともあり、料理をしてみるかという気になった。しかし仕事も忙しく、新しいことを始める心の余裕に欠けていた。
なんとか一念発起し、まずは作ったことのあるチャーハン(永谷園のチャーハンの素を使用)から始めようと思い、コンビニで卵とチャーハンの素を買ってきた。そこで気づく。サラダ油の賞味期限が切れている。
やむを得ず、今度は久しぶりにスーパーに足を運んだ。だが、住宅街のスーパーの品揃えは一人暮らしのコンビニ人間など相手にしておらず、小さいサイズのサラダ油がない。そこで、その場でネットで調べると、オリーブ油なら代わりに使えそうだった。量の割に高いが、むしろそのサイズがちょうどいい。

そこで偶然オリーブ油を買ったのが良かった。
後日、Twitterを見ていたら、貧乏で面倒くさがりだという漫画家が「どんなにやる気が出なくても、さっと作れて安くて美味い」とペペロンチーノの作り方漫画をアップしていたのだ。
その材料に「オリーブ油」があり、この前買ったな…じゃあ作ってみるかという気になった。ニンニクチップと唐辛子は買ったこともないし売り場も知らなかったが、自主的にやってみようという気持ちになったら体は動くもので、翌日にスーパーで探して買ってきた。

そこから何度かペペロンチーノをつくったり、カルボナーラやカレーもつくった。料理ができる人には信じがたいかもしれないが、レンジでチンするパスタソースしか使ったことがなかった私は、「パスタってフライパンでソースと和えるんだ」と思った。フライパンに入れても焼きそばにはならないんですね。
カレーはバーモントカレーだ。上京して14年、初めてルーからカレーを作った。これまで全てレトルトカレーだったのだ。弟に言ったら「大学1年生でやっとけよ…」と呆れられた。

年末に実家に帰ったとき、白菜のスープが食卓に出た。「これ簡単につくれる?」そんなことを親に聞くのは史上初めてのことだった。何のことはない、湯を沸かしてコンソメと白菜を入れればいいのだった。友人との鍋パ以外で初めて、白菜を買った。コンソメに至っては初めて手に取った。

あとは洗い物にハードルがあったが、このことは長くなるので次回書いてみたい。

さて、女は家事、男は仕事というような古い価値観には全く共感しないが、田舎の家庭で「男の子だから料理はできなくても大丈夫」という雰囲気で育ってしまったことは否めない。それに昔から偏食で、食事の時間自体が楽しくなかった印象もあり、料理には苦手意識ばかりがあった。

だが少しずつでも料理を始めたことで、これができるようになると何事も段取りが上手くなるだろうと思った。仕事にも良い影響があると嬉しい。

そして今32歳になったが、遅れて始めた分まだまだ伸び代があるのだとポジティブに捉えて、料理上手とまでいかなくとも人並みには習慣的に料理をしていきたいと思う。

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