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JR東、みどりの窓口縮小を凍結


窓口でしか出来ない手続きに来る人は少数

 民鉄とはいえ、元業界人として、地方移住をしてから、首都圏に出向く度に、みどりの窓口が減っている実感があった。

 コロナ禍に伴う利用者減を契機として、これまでガンガン削減してきたが、コロナ5類以降によりインバウンドを含む需要が、2020年以前に戻りつつある中でのGWに突入し、繁忙期にパンクして苦情のオンパレードに、経営陣が根負けしたのが事の真相だろう。

 私は人混みと並ぶのが何より嫌いであり、鉄道員だった知識を活かして、指定席券売機(MV)で発券できる乗車券類は、基本的に券売機でしか発券しない。

 それでも学割やら、乗車変更、発券や払戻しに制限のある切符の場合は、窓口でしか対応できないため、致し方なく並ぶ。とはいえ、最後にJR東日本エリア内で並んだのは、地方移住前にSuica記名式の払戻しをするためで、それ以外は専ら指定席券売機(MV)やネット予約で済ませていた。

 元駅員の経験上、窓口の要件の8割は乗換案内に付随する形での切符の購入か、道案内に収斂して、窓口でしか出来ない手続きに来る人は少数派である。

 だからこそ、いざ自分自身が旅客として並んでいると、前の人が、やれ何時の新幹線や特急に乗りたいだの、そんな要件ばかりで、それ券売機で出来るやつ!と、駅員に同情してひとりでイラつくのが目に見えているため、必要に迫られない限り並びたくない。

完璧主義が現場を疲弊させる

 デジタル弱者切り捨て御免派閥を擁護する意図はないが、デジタルディバイドを是正するために、使えない人に合わせた制度設計ばかりが良しとされるが、これでは、これではデジタルに疎い人が寿命を迎えて世代交代しない限り、一向に効率化が進まないことを意味する。しかも日本は長寿社会であり、世代交代にも時間を要する。

 結果として、中途半端にアナログを残して、デジタルと混在している状態では、オペレーションコストが無駄に増加し、それが従事者の負担となっている。

 いくら公共交通機関とはいえ、コストが無限に割けない以上、健康保険証のように、多少強引でも誰かが音頭を取って線引きしては、レガシーシステムを切り捨てて一気に効率化を突き進め、その過程で新たな問題が生じたら、個別に対応し改善していくのがあるべき姿のように思う。

 誰一人として取りこぼさないという完璧主義にも似た理念は、一見すると弱者救済の民主主義万歳感すらあり、他者からは素晴らしく映るため、誰からも批判されずに済むかも知れない。

 しかし、そうして責任を取って然るべき対価を受け取っている、権限を持つ者が保守的な事なかれ主義で、問題を見て見ぬ振りをしては、先送りに徹すると、間違いなく現場が徐々に疲弊していく。

 そうして末端の従事者が、低賃金の割にオペレーションが複雑で、本来であれば上役が取るべき責任まで取らされる構図が常態化すると、成り手が不足してサービスダウンに直結するのは、バス業界の現状を見ても明らかだろう。

 米国社会のように、人手不足により人件費が高騰し、人を雇うくらいなら、機械化・効率化した方が安上がりな状況となれば、一気にデジタル化が進む可能性もある。

 とはいえ、そもそもの出発点が誰一人として取りこぼさない完璧主義が前提である以上、オペレーションが複雑怪奇となっているわけで、マンパワー頼みの構造を抜本的に変えない限り、劇的な効率化ができるようには思えないのが正直なところで、苦情が殺到したみどりの窓口に関して、本質的に何をすべきか、答えは出ているように思う。

貪欲に学び続ける姿勢が、未来を救う

 非常に手前味噌だが、私は鉄道に限らず、交通機関、携帯電話、クレカ、ポイ活、保険商品、税金など、事あるごとに他人から「マニア?」と言われる程度に、造詣が深いと勘違いされることがしばしばある。

 鉄道に関しては元プロだったこともあるが、要するに身近にあって関心を引いたものが、一体全体どのようなシステムで動いているかと、全体像を把握しなければ気が済まない嫌いがある影響だろう。本質的にはナゼナゼ期の3〜4歳児と変わらない。

 しかし、そうした気になったことを、納得するまで徹底的に調べる(有耶無耶な状態が気持ち悪くて耐えられない)癖がついていることで、自力でできることの幅が、中央値的なパンピーより広いのも、また事実である。

 税理士みたいな、修得するのに数年掛かりの高度な専門領域であれば、その道を極める覚悟を決めた人以外は、報酬を支払ってプロに一任するのが合理的だが、乗車券、携帯電話、保険商品、住宅あたりは、確かに一部複雑な仕組みではあるものの、要点さえ抑えてしまえば、プロに一任するほど高度な領域でもない。

 一般論として、対面販売の方が営業マンの人件費が乗っかっている分、コストが掛かっている訳で、営利企業としては、その人件費をいかに回収するかを目論むのは当然であり、そこで、よく分からないからプロにお任せと言っている顧客は、鴨が葱を背負って来るのと何ら変わらない。

 交通機関に関しては公共財の性質が強いため、ぼったくられる心配こそないものの、携帯電話、保険商品、住宅、税金あたりは、人生の中でバカにならない出費の割に、請求金額の算出根拠には無頓着だったりする。

 個々人が、そうした身近にあるものに関心を持つことで、全体のリテラシーが底上げされると、今よりもデジタル化が進みやすい社会へと変容し、それがまわり回って、人口減少時代に生きる、未来の私たちを救う可能性を考えると、貪欲に学び続ける姿勢が重要なのだと常々思う。


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