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投資は順張り、休暇は逆張り


娯楽施設や旅行は閑散期に限る

 世間では何かと話題に事欠かない大型連休だが、昨今のインフレと2年間下がり続ける実質賃金のダブルパンチで、消極的「自宅で過ごす派」が急増していた印象がある。

 私はドロップアウトするまでシフトワーカーだったので、強いて表現するなら消極的「職場で過ごす派」という、身も蓋もない現実が付き纏っていたが、いざ、毎日がホリデー状態となっても、世間の大型連休にわざわざ、いかにもな場所に行ってまで何かする気にはならない。

 宿が安い時期を狙って旅行している時点で、典型的な閑散期に偏るのは明白なのだから、宿が高い時期は必然的に引きこもるか、せめて日帰りで済む近場でやり過ごす形以外で旅行することがない。

 そもそも、満員電車とかマジ勘弁…と思ってシフトワーカーを選び、満員電車に乗るとしても、乗務員室に乗る側を選ぶ程度に人混みが嫌いなのだから、元々人が集まるような所があまり好きではない。

 だからこそ、ドロップアウトして普段は地方で隠居して、必要に迫られて都市部に出向く位が、案外ちょうど良い塩梅なのである。

 そうして、いざ旅行するとなっても閑散期真っ只中で、イベントなど皆無だったり、主要な観光名所が改修工事で建材に囲われているような時期に、淡々と各地をぶらついては気になった場所に立ち寄る。

 どこに立ち寄っても、概ね閑古鳥が鳴いていて、安価な料金で快適に過ごせてしまう状態に慣れてしまうと、インバウンドを始めとする団体旅行客とかち合った時のガッカリ感が半端ない。

 やはり、主要な観光名所は捨ててでも、娯楽施設や旅行は閑散期に限ると思ってしまう時点で、休日の過ごし方に関しては、逆張り思考なのだろう。

そもそも旅行の目的は何か?

 こればかりは私の天の邪鬼な性分が、遺憾なく発揮されている最たる例だろうが、そもそもなぜ旅行で主要な観光名所に行きたいのだろうか?

 年相応に今風の若者感を装えば、写真映えする名所や食事をSNSに投稿することで、キラキラ感を演出し、多くのインプレッションが得られることを期待して、わざわざ多額のお金を掛けて旅行するのが、20代の中央値的な感覚だろう。

 煎じ詰めると、自己顕示欲とか承認欲求の類を満たすために、金銭消費を行っているわけだが、周囲にキラキラアピールをしたところで、その欲求が満たされるとは限らない。アドラー心理学で言うところの「他人の課題」だからだ。

 自己顕示欲を他者からの評価で満たそうにも、相手の心を直接金で買っていない性質上、これを投稿したら、きっと周囲が羨むだろうと希望的観測を持ちながら旅をしているわけで、自身の本心から、あれやりたい。これ食べたい。の状態で普段とは違う地に出向いているとは言い難い。

 つまり、その想像力を働かせる能力があるのなら、そもそも妄想旅行で済ませてしまえば、コストは掛からないのだから、その方が得ではないだろうか?と言うのが、森博嗣さんの「お金の減らし方」で、他者のためにお金を使っていて、自分のためにお金を使っていないと揶揄するロジックである。

 私もシフトワーカーで手取り13万円みたいな環境で、20代半ばで身体を壊し、「金は命より重い……!」を体現した身として同感で、1円たりとも無駄遣いしないよう、何事にも自分自身が本当に満足するためにお金を使う至上命題を課している。

 だからこそ私の旅行は、知らない土地で気の向くままに行動しては、うまい飯と酒を飲み食いするのが主目的であって、その様子をわざわざ記録して、他人と共有する必要はなく、食べる前にメシの写真を綺麗に撮る概念がない。

 一応、稀に次回のための備忘録であったり、後から話のネタとして使えそうなものなら撮ったりもするが、それらは往々にして食べかけのため、優先順位が圧倒的に低いことは確かである。無論、アップロードすることもない。

みんなと同じはつまらない。でも投資は…

 そんな、みんなと同じはつまらない、逆張り大好きな捻くれ者の私だが、投資も逆張りかというと、そんなことはなく、コアサテライト戦略のコアには、インデックスファンドが鎮座しており、サテライトの日本の個別株も、時価総額の8割はバリューかつディフェンシブかつ知名度も高い優良銘柄の長期保有が基本で、紛れもなく順張りである。

 そもそも、マクロでは右肩上がりで推移している株式市場において、逆張りで利益が取れる自信があるのなら、売りから入れる信用取引の口座開設がマストだろう。

 しかし、私は自分自身を信用しておらず、例に漏れず信用取引をギャンブルの道具として使ってしまうような、愚かな人間側だろうとの前提で、過去の自身が「人は金を得るために(中略)命を削っている……!」状態で形成した資産を台無しにしないためにも、手堅く現物オンリーで、信用取引には手を出していない。

 ケインズの言葉を借りると、株式市場は美人投票のようなもので、自分の好みではなく、多数派の好みを当てるゲーム以上でも以下でもないのだから、それこそ想像力を発揮して、みんなが好みそうな銘柄を、注目されてない安い時期に買っては、みんなが欲しくなった時期に売れば良いわけで、そこに個人的なこだわりがあると、判断ミスの元凶となる。

 自分自身がマニアックだったり、ニッチなものに惹かれる性分だからこそ、特にこだわりのない王道銘柄を、冷静に分析して、順張り投資した方が、結果として期待値が高いとも捉えられる。

 逆説的に、私がつい熱狂してしまうような、一見すると掴みどころのない不思議な魅力を持つ銘柄は、悉く鳴かず飛ばずでパフォーマンスが悪かった過去があり、愚者らしく経験から学んだ知見から導いた境地が、投資は順張りの概念を形成したとも言える。


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