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米国生債券が魅力的な利回りだが...


デフォルトリスクは事実上無視できる。

 生ビール、生肉、生債券が嫌いな人間は少数派だと願いたいが、完全な主観に他ならないため、コミカルな文面はこれくらいにしておく。

 「生債券」と聞くと、何だか美味しそうに聞こえるが、これは国債なら、その国が発行した債券を直接買う場合を「生債券」と呼び、社債や債券ファンドの債券を買う場合とは区別している。

 別に生だから債券の性質が異なるとか、そういった類の違いがあるわけではないが、強いて違いを挙げるとすれば、発行母体が米国のような超大物の場合、デフォルトリスクを事実上無視できる点だろうか。

 とはいえ、投資の世界に絶対はなく、米国がデフォルトすることも想定した上で、ポートフォリオ全体のバランスを鑑みた方が、より堅実な運用に一歩近づくのは間違いない。

 そんな生債券だが、某ネット証券で調べてみると、利回り4%超の取扱銘柄が出てくるわ出てくるわ。投資の世界では、安定運用で年率4%を叩き出すのが難しい部類にも関わらず、米国の生債券は名目上の元本保証でそれが叶ってしまう意味で、魅力的な投資商品に映って見えるのが現状である。

為替リスクも長期なら大きな影響はない?

 日本の長期金利が1%にタッチするかしないかの状況下で、同じ生債券でも米国なら4%以上の利回りとなるため、非常に投資妙味があるものの、我々は日本でJPYもとい日本円を使って生活していることから、クーポンをUSDもとい米ドルで受け取ると、外貨両替の手間とコストと為替リスクが付帯してしまう。

 米国のFRBが利下げに転じる可能性を示唆している頃合いなのに対して、我ら日銀は利上げを示唆している。日米の金利差が縮小するなら、セオリーとして短期的にはドルが売られて、円が買われる円高に振れる可能性が高い。

 つまり、1年程度の短期スパンで利回りに釣られて米国債を保有した場合、確かに名目上は4%超のクーポンを受け取れるかもしれないものの、4%の為替差損で円建てだとプラマイゼロか、むしろマイナスとなる可能性はある。

 購入時の為替レートが1ドル150円の場合、償還時の為替レートが144円になると既にその水準となり、損したくないのであれば、再びドル円が150円台になるまでドルのまま持ち続けるほかなく、資金効率としては微妙と言わざるを得ない。

外貨両替のコストも考慮すべき。

 それに加えて、我々は日本円で決済している以上、ドルで運用するために円をドルに変え、取り崩す際にはドルを円に戻さなければならず、往復で外貨両替する際に生じるコストは考慮すべきである。

 いやいや、永住権を取得するつもりで、その時のための備えで片道しか支払う気がないとか、某ネット銀行のように、外貨預金の残高を現地のATMで引き出せる利点を活かして、海外旅行のための積立ができればそれで良いとか、はたまた米国の銀行口座やクレカを保有していて円でもドルでも決済可能な方であれば、この手のコストは考慮しなくても良いのかもしれない。

 しかし、上記の方はおそらく少数派で、大多数は日本に住み、日本円を決済するのが基本姿勢だろう。それを考えた際に、外貨両替のコストはバカにならない。

 私は株屋であり、FXは畑違いのため、些か情報が古いかもしれないが、最も低廉な外貨両替は、FXでレバレッジをかけずに買い建て、それを現引するイメージが強く、これは、一回の両替が最低1万通貨であることを意味する。

 1万ドル…つまりは最低150万円規模にならないと、この技は使えないため、億り人で毎年1万ドルくらいは何だかんだで増えて現金化するから、別に大したことないと思える領域にでもならない限り敷居が高い。

 多くの人は150万円はまとまったお金に他ならず、両替する額が大きくても数十万円単位が関の山だろう。しかし、小口で両替したいとなると、無駄に手数料が上乗せされてしまうのもまた事実で、そうしてチマチマ掠め取られることの繰り返しで、持てる者と持たざる者の格差が生じる。

最も懸念すべきはインフレリスク。

 さて、債券の話なのか、FXの話なのかよく分からなくなってきた所で本題に戻すと、ここまで米国債券のデフォルトリスク、為替リスクとそれに伴う両替コストについて、最近考えていることを徒然と記してきた。

 一昔前の私であれば、この辺りで考え尽くした感が出ていたかもしれないが、最も懸念すべきリスクは、デフレ脳の日本人にはピンと来ないインフレだろう。

 CPI(消費者物価指数)の数字を見て分かるように、米国のコア指数は年率4%前後のプラスで推移している。つまり、昨年100万円で買えていたものが、今年は104万円支払わなければ買えない状態となっている。

 勘の良い方はお気付きだろう。冒頭に債券を「”名目上の”元本保証」と記したように、年率4%のクーポンが付いた債券を100万円分購入した場合、毎年4万円分の利息が貰える訳である。

 とはいえ、利息が4%貰えて、物価が4%上がったら差し引きゼロ。現預金に比べれば、インフレで目減りしない分、良いような気もするが、元本に関してはインフレ耐性もない。

 ここに、為替リスクの観点では短期よりも長期が望ましい反面、インフレリスクの観点では長期よりも短期が望ましく、どの程度の塩梅で保有すべきか難しくて、債券ファンドを選びたくなる。

 計算を簡単にするために、残存期間18年の債券で利回り、インフレ率共に4%と想定すると、72の法則で18年後に複利運用で倍になる計算である。

 100万円で債券を買い、クーポンで100万円受け取ったとしても、満期到来時の物価が2倍になったとすれば、償還時に受け取る元本は現在価値換算で50万円相当。クーポンを加味してトントン前後の計算になる。

 現預金よりはマシだが、株式と異なり成長性があるわけでもないなら、向こう1年分の生活防衛資金をキャッシュで温存しておき、それ以外を余剰資金として運用した方が、規模が大きくなる前段階の資産形成では有効だと考える。

 債券投資は億り人に近づく過程で意識するくらいが丁度良く、私のようなその足元にも及ばない8桁勢には、些か早いオプションなのかも知れない。


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