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いいですか、落ち着いて聞いてください。保険税に金融所得の反映「検討」ですよ


貯蓄から投資へ…からの増税?

 なぜ新NISAが始まるこのタイミングで検討案を示したのかは、資産運用立国の機運醸成に冷や水を浴びせている意味で疑問は残るものの、2年前から資産課税のあり方についての議論を進める方針であることは示唆されていたことから、個人的には今更感があり、SNS上でギャーギャー騒ぎ立てるような内容でもないと思う。

 そもそも、まだ検討段階であり、具体的な方針は何も決まっていない状態で、NISA課税だとか、二重課税ガーとか騒いだところで、28年以降に蓋を開けてみないと分からないのだから、騒ぐだけ野暮ではないだろうか。

 仮に現行の税制の延長線上で考えても、NISAは非課税であり、確定申告をする際にも、金融資産所得として計上されていないことから、非課税枠の1,800万円の範囲内であれば、仮に保険料に金融資産所得が反映されたとしても、大衆の大多数には現行通りで影響がないものと思われる。

 この検討案の意図は、新NISAの非課税枠では収まりらない、億単位の資産を有していて、配当だけで毎年一般的なサラリーマン(現役世代)の年収と同等か、それ以上の資産所得がある人が、分離課税で20.315%の源泉徴収だけ納めれば課税所得として計上されず、健康保険税が7割減免になるのは応能負担原則に反しているため、確定申告で個人の所得として計上する、総合課税と同じ扱いに是正するのが適切ではないか?から来るものと認識している。

 そのため、現役世代の負担をこれ以上増やさないためにも、担税力があるにも関わらず、税制上の歪みを突くことにより、合法的に税負担を逃れている者には、納めて然るべき税を徴収するための検討案だと、個人的には捉えている。

 しかし、世間では5年で新NISAの満額埋めることも儘ならず、恐らく影響を受けないであろうパンピーが、SNS上でNISA課税的な文言に踊らされては、自らの首を絞めていることに気付かぬまま、国の陰謀やら手のひら返しだと騒ぎ立て、資産持ち優遇税制を野放図にしている現状を、そのまま維持することを望む方向に世論が誘導されている辺りに、衆愚政治の縮図を感じてしまう。

既に配当の二重課税は、確定申告で軽減できる

 そもそも、配当所得を正直に確定申告をしている私からすれば、二重課税ガーとか騒いでいる人のうち、どれくらいの割合の人が、配当所得を申告しているのか見ものではある。

 企業からの配当は、特定口座源泉徴収ありの場合、受取時に20.315%が課税され、支払い配当の8割弱が個人の証券口座などに入金される。

 しかし、配当というのは企業の利益剰余金から捻出されるもので、この利益は税引「後」当期純利益が源泉となっていることから、既に企業側が利益に対して一度税金を納めている訳である。

 その利益の一部が、オーナーである株主に配当の形で分配された際に、更に20.315%の所得税、住民税を徴収するのは、課税する相手は違えど、同じお金に対して二重に課税している訳で、税の論理としておかしいのではないか?との見方が、二重課税アレルギーの方の主な見解となっている。

 確かに一理あるからこそ、二重課税調整制度対象ETFが増えている現状がある。ただ、日本株の配当に関して記せば、二重課税を是正する観点から、配当控除がある。

 配当所得を確定申告をすることで、個人の税率が適用され、課税所得330万円以下の方であれば、個人の税率10%−配当控除10%=0%が本来の配当に掛かる税率となり、源泉徴収された15.315%の所得税は全額還付される。

 住民税は個人の税率10%−配当控除2.8%=7.2%(源泉徴収差分の+2.2%)だけ納めれば良いことになっており、確定申告さえすれば、二重課税の問題は一定程度解消されている現状となっている。

 しかし、先述したように、確定申告で個人の所得に組み込み、配当控除を適用して所得税の還付金を受け取るよりも、分離課税のまま大人しく20.315%源泉徴収されて、個人の所得を増やさないほうが、多くの場合、健康保険税が安くなる歪みがある。

 だからこそ確定申告の有無を問わず、健康保険税に金融所得の反映させる案が槍玉に上がる側面がある訳で、SNS上で実質増税を騒いでいる方が、この辺りの背景まで考えた上で書き込んでいるようには思えないのが、私の率直な感想である。

不平等の資本主義、平等に貧しい社会主義

 とはいえ、現役世代の若年層からしてみれば、働くために借金してでも大学行ってください。返せないのは自己責任です。非大卒で食えない職に就いても自己責任です。

 真っ当に働いても重い税負担で手取りは増えません。でも、インフレで物価は上がります。年々生活は苦しくなる一方ですが、残業代で埋め合わせた結果、過労で潰れても自己責任です。ただし運輸・物流は潰れたら困るので4月から残業規制します。残業代が減って生活苦になっても自己責任です。

 終身雇用は維持できるか分かりません。だから、雇用の維持をダシに賃上げは渋り、年功序列制という名の元、若い労働力を安く扱き使います。嫌ならリスキリングして転職してください。ただし、学び直しても相変わらず食えないままだったり、転職で年収ダウンしても自己責任です。

 年金や退職金はアテにせず、資産運用で自助努力してください。損しても自己責任です。ただし、リスクを取ってガッツリ儲けた方は相応の保険税を負担してもらいます。←New!

 このように、リスクを取って自己投資した結果、稼げる職に就いたり、リスクを取って資産運用した結果、大勝ちしてお金の問題が解決しても、その先に重い税負担が待ち構えており、リスクを取っても報われない、無理ゲー社会となっている。

 そのため、特に学歴至上主義社会で、偏差値50に満たない、学力という物差しでは下位半数に位置してしまう層ほど、リスクを取るインセンティブがなくなる社会構造となっている。

 それならば一層のことリスクなど取らず、短期的は楽な、その日暮らしで適当にダラダラと過ごして、詰んだら生活保護でも取れば良い的な、国全体で経済成長を削ぐ方向に向いている感は否めない。

 それにより、なし崩し的にベーシックインカムにならざるを得ないのであれば、それはそれでアリな気もするが、不平等の資本主義を是正しようとした結果、平等に貧しい社会主義となることだけは御免被りたい。


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