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敢えて「競争しない」生き方


いかに比較しようがない状態を創るか

 唐突だが、投資の神様の呼び名を持つ、バフェット氏の若かりし頃の資産推移をご存知だろうか。

14歳 5,000ドル
19歳 1万ドル
21歳 2万ドル
26歳 14万ドル
30歳 100万ドル

 為替レートが150円/ドルと仮定して、21歳時点は300万円相当と、高卒で社会に出た私でも、年間100万円程度の種銭が捻出できていたから、それくらいの金額はあった。

 しかし、そこから僅か5年後の26歳で2,100万円相当に成長する。そして、更にその4年後の30歳に1.5億円。いやいやいや、桁がおかしいだろ!全くもって参考にならん。と思ったのは私だけではないはずだ。

 今もなお、経済成長し続ける米国社会と、30年間、成長という成長がなかった日本社会との差から、預金大好き日本人には、複利運用の概念が希薄であり、資産が指数関数的に増えるイメージが湧かないことも、現実離れした数値で参考にならないと思わされる節はある。

 そもそもバフェット氏が投資の神様と呼ばれているのは、長期運用で年率20%という、インデックスファンドの期待リターンを凌駕する結果を出しているからだ。

 しかし、誰もが真似できる芸当だったら、みんな仲良く億万長者になっている筈だが、現実はそうなっていない時点で再現性はなく、バフェット氏にしかできない芸当があると捉えるのが自然だろう。

 そもそも資産推移を自分のそれと単純比較しようがないことは、投資手法は多種多様であり、資産規模、銘柄選定、売買タイミングなどを、全てバフェット氏と同じように運用できないことからも明白だろう。比べるだけ野暮である。

知らぬ間に競争社会のレールに乗って疲弊する

 我々は義務教育で事実上、社会で労働者として従事するための職業訓練を受けて、最終学歴となる学校を卒業後に、多くが労働者として社会に出る。その過程で、成績という名の尺度で、他人と比較されるのが当たり前となり、それに対して何の疑問を抱かなくなり、知らぬ間に競争社会のレールに乗せられては、ヒエラルキーの頂点に立てない者が疲弊していく。

 私はたまたま早生まれで、ハンディキャップを背負ったことで、勝ち星がなかったことから、成績など採点しやすい偏った指標で、しかも恣意的な判断基準であることを察し、それだけを以て他人と優劣を比較されることへの嫌悪感が強く、無意識的に競争社会のレールに乗らない人生戦略にシフトしていった。

 私のように、たとえ芸術的能力や空間認知能力が突出していたとしても、美大を除き、それらが入試で評価されることはなく、反対に言語や計算能力が高い者が評価され、良い大学や良い会社に入れる社会システム。

 これが変わらない以上、「しまりました!学科では私が圧倒的に、不利ィィィ!」となる結末が目に見えており、本能的に同じフィールドで闘ってはいけないと、競争しない生き方を模索する運びとなった。

自分のペースで心の平穏を保つ

 そうして、奨学金という名の教育ローンを背負ってまで大卒となり、まるで金太郎飴のように杓子定規なリクルートスーツに身を包み、複数社に御社が第一志望ですと嘘八百を並べては、内定を貰うレッドオーシャンな環境は何としても避けたい。

 だから、手に職をつける意味で工業高校に入り、在学中に電気工事士の資格を取り、高卒でそこそこの会社に何年か勤めてみてから、身の振り方を改めて考えようと思いながら電鉄会社の駅員となっていた。

 しかし、労働集約型産業で初任給は安く、フルタイムのシフトワーカーで手取り13万円という、働いているのに生活保護レベルの賃金で、下手な年金暮らしの高齢者よりも安い月給で酷使される罰ゲーム状態。

 そんな環境下で社会インフラを支えているにも関わらず、SNS上で「お前が終わってんだよwww」と同じような境遇の方が煽られる体たらく。主に労働はクソである。という固定観念が10代のうちに形成され、いかに働かずラクに生きるかを考えるようになり、株式投資に行き着いた。

 最初は旧NISAの年間120万円(最初期は100万円)の非課税枠の範囲内で、今流行りの高配当銘柄でインカムゲインを得て、低賃金の足しにした。

 最初の頃は年間数万円+株主優待。120万円を配当利回り4%で運用しても年間配当4.8万円だから、金融資産所得を増やすよりも、支出を引き締めて可処分所得を増やすほうが容易いことに気付き、Lean FIREのそれに近い人生設計の礎を築いた。

 多くの学生が、良い大学を出て、知名度、給料、世間体の良い企業で、正規雇用される人生を漠然とイメージしがちだが、この道は高学歴エリートと競合することになるため、天才か、努力ができる恵まれた才能や環境を持ち合わせた人を除けば、同じフィールドで競うのは分が悪い。

 私の場合、どのみち早期リタイアをするなら、キャリア形成など意味がなく、年功序列を口実に若い時に安く使われるだけなら、高卒でさっさと資産形成して、運用期間を長く取る方が理に適っていると考えた。

 そうして自分のペースで競争しない、比較されない生き方を選ぶと、心の平穏が保てる人が一定数居るのも事実で、個人投資家に留まらず、自営業や独立といった多様なスタイルが、世間に広く認知された方が、今ほど生きづらさを感じる社会ではなくなるような気がしてならない。


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