購買のパラダイムシフト黎明期?
新型iPadの裏で、iPad miniが値上げ
今年に入って再びiPadが欲しいと思いながらも、新学期の学割&ギフトカードのキャンペーンを見送って、5月の発表イベントを心待ちにしていた一介のAppleユーザーだが、リークもあって製品仕様や価格帯に関しては概ね予想通りだった。
とはいえ、2022年から加速しているインフレと円安のダブルパンチによって、新型iPad発表の裏で、為替レートの改定により、iPad miniが値上げとなった。
一昨年だっただろうか。MacBook Air(M2)が発表され、型落ち品となるMacBook Air(M1)はドル建てでは値下げされたものの、為替レートが急激に円安に振れたことで、円建てでは値上げという事態が発生して、衝撃を受けたと同時に、最初期にMacBook Air(M1)を買っていた私からすれば大勝利な結果となった。
しかし、今回も為替レートの改定で製品そのものの価値は何ら変化していないどころか、むしろ新製品の投入で相対的には、付加価値が目減りしているとも捉えられる状況にも関わらず、値上げしている。
その意味で我々購買者が、ここ30年間で形成されたデフレマインドを、払拭すべき局面に差し掛かっている過渡期なのかも知れない。
もはやデフレ経済ではない?
デフレ経済の特徴として、モノが売れないため、基本的に待てば待つほど価格が安くなる傾向にある。これには商品価格が値下げされる意味合いと、通貨価値が上昇する意味合いの両方がある。
では、インフレはどうだろうか?昨今のインフレはコストプッシュ型との見方が強く、購買力が上昇しているディマンドプル型とは言い難い状況のため、モノが飛ぶように売れている状況ではない。
とはいえ、昨今の円安基調やインフレ傾向が変わらない限り、輸入品を中心に、基本的に待てば待つほど価格が高くなる傾向は、冒頭のiPadやMacBookの例があるように、紛れもない事実だろう。
こちらも商品価格が値上げされる意味合いと、通貨価値が下落する意味合いの両方があり、Apple製品に関しは、後者の要因が変数として大きいと思われる。
Mマークでお馴染みのハンバーガーも、22年3月までは110円で買えたものが、3度の値上げを経て、23年1月には170円まで値上げされた。1年で実に1.5倍以上の値上げとなる。
東京を冠しているが厳密には千葉にある、某ネズミの遊園地の入園料に関しても、コロナ前は7,500円だったものが、24年現在では最高値で10,900円となり、こちらも1.5倍弱の値上げとなる。
しかし、我々の賃金は1.5倍にはなっていない意味で、これはインフレというよりも、スタグフレーションと表現した方が正確だが、国民の金融リテラシーに合わせているのか、メディアでこの言葉が使われている光景をあまり見かけない。
値上げが顕著なモノほど、ここ数年で1.5倍みたいな上がり方をしている意味で、もはやデフレ経済ではないのかも知れないが、未だ我々の消費性向は、1円でも安いものを求めるデフレ時代から、さほど変わっていない。
時代は「安く」買うから「早く」買うに?
私が愛用しているソムリエナイフは、フランスの職人がハンドメイドで作っているもので、決して安くはなかったが、コロナ禍で家飲みを少しでも楽しくしようと奮発して買った。
今では同じものが、並行輸入品であっても、当時購入した正規品の倍額を出しても買えない状況となっており、今日買えるモノが、明日も同じ値段で買えるとは限らない意味で、このソムリエナイフには、ある種の資産性すら見出せる。
そう考えると、これまでの(デフレ)時代は、良いものをできる限り安く買うことが最適解だったと思われるが、これからの(インフレ)時代は、資産価値の伴うものを、できる限り早く買うことが最適解となるのかも知れない。
デフレからインフレに転換することで、「買い物上手」の定義が180度ひっくり返る可能性がある訳だ。
無論、資産性を伴っており、値上げしても購買力が保てる商品を扱う企業は、このパラダイムシフトに順応できるため、業績や株価の上昇が期待できるだろう。
逆説的に、デフレ時代の覇者で価格破壊をウリにしていた企業は、パラダイムシフトに対応できないと、差別化できずに淘汰されるリスクが付き纏うことも考えられる。
個人的には、日本経済そのものが、人口減少や少子高齢化に伴い、人口動態としては縮小傾向にあることは変わらず、明るい展望が思い描けない以上、国力は低下する線が濃厚であり、必然的に日本円の価値も目減りする=マクロでは円安傾向が続くものと予想しているが、未来がどうなるかは誰にも分からない。
そのため、未来永劫出国するつもりはないものの、資産保全の観点から保有資産の半分を外貨建てにして、円高、円安のどちらに転んでも大丈夫なポートフォリオを組んでいるが、インフレ時代が到来するならば、金融資産に限らず、実物資産にも保全の観点が必要となる日は近いのかも知れない。
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