最近の金融市場動向(2022年3月)
大事なことなので、初っ端から正直に記すと、
今後の市場がどうなるかは分からない。
分かると豪語するのは未来人と詐欺師だけだが、これだけで終わってしまっては味気ないので、私なりの考えを記そうと思う。
何より円安。
執筆時点では125円を突破し、2015年来の安値で推移している。実際に、外貨建て資産の推移を円建てで確認すると、年末辺りにNYダウが最高値を更新した時よりも時価総額が上回っている。
米国株式自体は下落しているのに、円建ての時価総額は最高値を更新していることからも、円の価値がすごい勢いで下落しているのは素人目でも明らかである。他の通貨との金利差が激しいことから、利子を殆ど生まない日本円を保有する意味は薄く、売り圧力が強いことで、現状のレートになっているものと思われる。
また、日銀の指し値オペも金利上昇を抑制することから、海外の投資家目線では円建てで資産を持つ魅力はないのだと思われる。金利を上げたら良いと思う方も居るかも知れないが、金利が上昇すると、マネーサプライ(=市場の通貨供給量)が減少することとなり、企業の資金繰りが苦しくなってしまう。連鎖倒産などの事態に陥れば、失業者で溢れる可能性もゼロではないと言う難しい局面になっているのは間違いない。
経済における通貨は人体で言うところの血液のようなもので、現状の日本の景気動向で、通貨の循環を鈍化させてしまうと、リーマンショックの時のような大企業の経営破綻が起きてもおかしくない状況ではある。
だからこそ、金利は上げられない。金利が上昇しないから、利上げを示唆している米ドルをはじめとする通貨に資金が流れ、反対に円は売られて、悪い円安に陥っているわけである。
疫病でいつまでも経済活動を制限し続けたことによる代償を円安と言う形で支払う羽目になっていると言っても過言ではない。どこかの美しい国ニッポンと鳴く首相は輸出を有利にするために円安に誘導する政策を行っていたが、日本には大した資源がない。そのため、製造業はまず材料を輸入するのだから、売上が上がっても、製造原価も上がるのだから利益ベースでは大差ない。
それどころか、対外的には安値かも知れないが、日本国民からすれば、製造原価の高騰分だけ商品価格が釣り上がる。それができないから、食品や日用品は今まで量を減らすステルス値上げを繰り返していたわけだ。尤も、最近は量を減らすのが限界に達しており、直接値上げし始めている。嬉しくはないが、一般にもスタグフレーションが認識できるようになってきているのである。
しかし、対外的に売上を得て損益計算書を盛ったところで、利益は据え置きに近いのだから、企業が賃上げに積極的になるはずがない。結局、株価の上昇によって資本家をはじめとする富裕層だけが更に潤い、貧困層はより生活が苦しくなっただけで、トリクルダウンは失敗したと評すのが一般的だろう。
そもそも論、日本の企業で国際競争力のある製品や商品を生み出している企業がどれだけあるのか疑問である。一般の人にこの質問を投げかけてパッと思い浮かぶのは自動車と半導体くらいである。
エレキメーカーは家電エコポイント制度と言う愚策によって、偽りの業績回復を遂げ、あぐらをかいているうちに世界から見向きもされなくなり東芝は粉飾決算、シャープは経営危機により鴻海傘下になるなど没落。
生き残っているソニーに関してはiPodとiTunes Storeに相当する経営資源をAppleよりも先に有していたにも関わらず、事業部制組織で統合が出来ず先を越され、今ではエンタメ企業と化している。
今の子供がIBMのコンピュータを知らないように、ソニーがエレキメーカーだったことを知らない世代があと何十年かしたら現実となるかも知れない。
卵はひとつのカゴに盛るな。
投資家ならこの言葉を知らない者はいないくらい有名な格言である。私たち日本人は円建てで生活しているため、ポートフォリオに円建て資産を持つのが定石ではあるが、日本円を銀行に預金しているだけでは、今回の急速な円安と物価上昇が発生した際に、資産が目減りして生活が苦しくなる一方である。
そんな時に、ドル建ての資産を有していれば、為替の下落分をカバーすることができる。むしろ資本の成長と為替差益で二度美味しい。
日本が再び経済大国に成長すると信じて疑わない方であれば、このタイミングで外貨を売却して、相対的に通貨安となっている日本円に変えておけば、日本が大逆転した時に為替で大きな利益を得られるかも知れないが、私は長期で円安傾向が拡大すると踏んでいるので、必要に応じて外貨を取り崩すことはあっても、ポジションを円建てに集中しようとは思わない。
リスク分散として金融資産は、円建てと外貨建てを半々で持つように意識しているから、仮に日本の財政が破綻してハイパーインフレに突入しようが、円が紙切れになろうが、即座に経済的に困窮する自体は避けられる。
昨今の不安定な情勢や市場からは、投資におけるリスクの取り方を学べる良い機会なのかも知れない。
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