積極財政を推進する地方議員連盟の総会取材記~貨幣供給による地方経済の底上げこそが経済成長戦略~

 去る5月16日(木)は、積極財政を推進する地方議員連盟の第3回総会が東京・永田町の衆議院議員会館にて開催されました。私自身は地方議員ではありませんが、当議員連盟に注目している政治経済評論家として、昨年に引き続き懇親会まで参加させて頂きました。温かく迎え入れて下さっている地方議員の方々には深く御礼を申し上げます。普段、東京に住んでいる私は、なかなか地方にお住いの議員の方々の声や、地方自治体の実態を知る機会というのはほとんど無いので、この総会の場というのは政治経済評論家として地方議員の貴重な声を聞く場であり、私自身も本当に勉強させて頂いております。

 さて、総会の方は、まず地方議員連盟の発起人である新潟県佐渡市の広瀬大海共同代表のご挨拶から始まりました。広瀬共同代表は、昨年は体調を崩されて東京には出て来られなかったので、お会いするのは実は今回が初めてになります。
 この広瀬共同代表のご挨拶が東京に住む人間としては衝撃的で、広瀬共同代表が生まれた頃には佐渡島の人口は9万人だったのに対し、今や4万6千人まで半減しており、子供の数も大幅に減少して、かつては100人以上いた小学校の児童の数も今や20数人にまで減少し、小学校の統廃合も進んでいるとのことでした。そして、島を離れる人も相次いでいるとのことで、離島の過疎化、離島で生活する難しさを感じさせる挨拶の内容でした。先ほども述べたように、こうした地方議員の生の声を聞けることが、この積極財政を推進する地方議員連盟の総会を取材させて頂く意義、醍醐味だと感じた次第です。
 その後は、昨年の講演をされた自民党の西田昌司参議院議員や、自民党きっての積極財政派である中村裕之衆議院議員もご挨拶をされていました。他にも、新潟県選出の自民党の国会議員や秘書の方もお見えになって、広瀬共同代表の地元新潟での人望の厚さも感じました。

 そして、今年の基調講演は現役経産官僚にして経済評論家の中野剛志さんが務めました。中野剛志さんの講演内容については、ここでは割愛させて頂きますが、基本的には昨年発売された著書「どうする財源」に基づいた講演内容となっていました。

 「どうする財源」の内容に関しては、以下の動画の前編・後編も参照されると良いかと思います。

【年末特番】中野剛志先生が新刊を解説!世界的インフレの混乱は経済学者の手に負えない!?(前編)

【中野剛志先生 年末特番】なぜ日本の政治家は財政出動をしないのか?資本主義の仕組みを完全解説!(後編)

 また、ここでの内容に加えて、昨今の積極財政派界隈で話題となっている財務省の「詐欺グラフ」についても、講演では解説されていました。いわゆる「政府債務を拡大しても実質経済成長率には繋がらない!」という誤った主張を行っている相関図になります。それに関しては、コチラの東洋経済オンラインの記事をご参照下さい。

 質疑応答に関しては、地方議員連盟の総会の場で恐縮ながら、私の方からもさせて頂きました。質問内容としては、今回の講演内容では触れていなかった、昨今の「円安問題」に関して、中野剛志さんであれば、どのように返答されるのかを伺いました。私自身ツイッターで緊縮財政論者と議論をしていると、「国債発行して政府支出をすると、円が希薄化されて、更に円安が進んで物価高にもなる!」という批判の声が絶えません。通貨発行すると、円がカルピスかのように原液が薄まってしまうと多くの人々は思ってしまうのです。
 それに対する中野剛志さんの回答は私とほぼ全く一緒で、やはり昨今の円安ドル高の根本原因にはアメリカのバイデン政権による大型の財政出動があり、景気が過熱したために、FRBが金利を引き上げて日米の金利差が拡大したから、円安ドル高が進んだというオーソドックスな見解でした。だから、円安ドル高の解決策は日本もアメリカと同様に、積極財政で景気を回復させてから金利を引き上げるべきだという回答でした。そういう意味においても、積極財政とは万能薬だとも言えます。
 参加された地方議員の皆様も、地元の有権者に「財政出動をしたら円安ドル高が進む!」と言われたら、このように返答して頂ければと思います。そうした意味で、地方議員の方々にとっても意義のある質問になったのであれば、質問者として幸いです。

 最後に閉会のご挨拶をされた地方議員さんは、かのタイタニック号のように沈没で有名な矢野康治元財務事務次官が、その議員の地元に来たというエピソードを披露されていました。その講演の冒頭で矢野康治元財務事務次官は聴衆に向かって、

「こんなに国の借金を増やして、すみませんでした!」

 と謝ったそうです。このエピソードを聞くに、本当に財務官僚は貨幣の仕組みをまるで分かっておらず、とにかく国の借金を増やしたくない、減らしていきたいという原理主義、まさしく「ザイム真理教」なんだなと、まざまざと感じさせられました。彼らは日本の国の借金は増え続けており、積極財政をして来たのに経済効果は無かったと、本気で信じているのだと思います。そんなことは他国と比較するだけで間違っていることは分かるだけの話なので、他の国も政府の負債は増え続けているということを広めるのが効果的ではないかと私は考える次第です。

21世紀のG7諸国の政府総負債の増加率推移

 その後は、地方議員の方々との懇親会に今年も参加させて頂きました。どの地方議員さんも共通で仰っていたこととしては、参加されている地方議員の方々は、40代~50代のいわゆる中堅どころの方が多いのですが、こうした財政に関する説明を地元で行うと、まず自分よりも若手の議員であれば良く理解してくれているとのことでした。対して、自分より年配の先輩議員に説明すると、「国債は借金なんだから返さなければいけないに決まっているだろ!」という間違った倫理観を説かれてしまって、年配の議員の方々はいわゆる「国の借金論」に凝り固まってしまっているようで、理解させることは困難であるとの見識を示されていました。

 これは地方議員に限らず、与野党問わず国会議員にも言える話で、自民党でも2012年のアベノミクス以前に当選した議員は緊縮財政派であり、対する野党の立憲民主党も民主党政権を担ったベテラン議員は緊縮財政派が多いわけです。この財源論こそが、真の世代間対立ではないかとすら思ってしまった次第です。
 今後は世代交代により、積極財政を推進する地方議員連盟の方々が地元で中核を担う60代~70代になれば、認識は変わって来るのかもしれませんが、それまでの今後20年間で、更に地方は衰退し続け、ひいては日本全体も衰退を続けてしまうわけです。この点で、今後は「時間との勝負」が1つのカギでもあるかとつくづく感じます。

 最後に今回の中野剛志さんの講演も踏まえて総括をしますと、中野剛志さんの講演において「水道の蛇口のイラスト」でもあったように、民間企業は銀行からお金を借りない、政府は財政出動でお金を出さないとなると、浴槽に溜まっているお金はドンドン減って来ることになるのです。ましてや、企業が借入金を返済し、政府が税金を徴収すると、ますますお金の量は減っていきます。これがこの20~30年間日本で起きていた現象であり、貨幣流通が減り続けているからこそ、日本国民はドンドン貧しくなって来たわけです。
 また貨幣というものは貧乏人からお金持ちへ、地方から都会へと集まって行く性質があるものだと言えます。最終的にはお金持ちや大企業の貯蓄として貯まっていきます。
 だからこそ、政府はお金を貧乏人や地方に対して、新たにお金を供給してやらなければ、彼らは脱水症状を引き起こしているようなものになるのです。いわば、脱水症状ならぬ「脱金症状」が今の日本の病魔であると言えるでしょう。私が政治経済評論家として、政府が給付金政策によって貧乏人にお金を配ることや、公共事業によって地方にお金を流すことを強く主張するのも、そうしたお金の流れの特性を掴んでいるからなのです。経済成長とは貧乏人と地方の「底上げ」によって発生するものなのです。
 今後もこうした底上げの経済政策が行われなければ、広瀬大海共同代表の地元の佐渡島で引き起こっている現象が、日本列島全土にまで波及してしまうでしょう。要は貧困化した日本ではお金を稼げないから、日本の若者がお金を稼ぐために海外へと出稼ぎに行く、その兆候は既にありますが、今後はより一層進展行くのではないかと危惧しています(一方で若者にとっては賢い生存戦略ではあるのですが)。
 このまま日本国民の貧困化が進むと、日本列島全体が佐渡島のように、更なる人口減少と過疎化に見舞われることになってしまうのです。

 そうならないためにも、私は東京の人間ではありますが、今後も貧乏人と地方の側に立った政治経済評論家として、正しい経済財政の情報発信に務めて参りたいと改めて感じた次第です。
#積極財政を推進する地方議員連盟 の皆様には、今回もこうした取材の機会を頂きまして、誠にありがとうございました。今度は皆様の地元でお会い出来たならば幸いです(最後に宣伝みたいになってしまって恐縮ですが)。https://note.com/researcherm/n/n631c6317890d

 また来年の総会も楽しみにしております。今後とも、何卒、宜しくお願い致します。

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