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あゝ愛しのクーロン

 「九龍城砦」にロマンを感じる人は多いと聞く、私もその中の1人だ。

 1900年代の初めから終盤まで存在したスラム街(というかビル)で、わずか200m×120-150mの土地に5万人もの人々がぎゅうぎゅう詰めに暮らしていた混沌の異世界だ。狭い敷地だが縦へ横へと違法増築を繰り返して巨大化した魔城。その中には住民独自の暮らしがあったという。ロマンを感じずにはいられない。

九龍城砦が取り壊される直前の1990年代初頭には、0.026km2(約200m×120〜150m)の僅かな土地に5万人もの人々がひしめき合って人口密度は約190万人/km2と世界で最も高い地区であった。これは畳1枚に対して3人分の計算である。比較参考値として東京ドームの面積は0.0467km2、観客席の収容人数は4万5000人である。
みんな大好きWikipediaより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E9%BE%8D%E5%9F%8E%E7%A0%A6

 わたしが「九龍城砦」に惹かれたきっかけの一つが1997年に発売された名作テレビゲームである『サガ フロンティア』だ。

 知ってる?

 『ファイナルファンタジー』で有名なブランド『スクウェア』が手がけていたRPG(ロールプレイングゲーム)のシリーズである『サガ』のうちの一作で、何より特徴的なのはその自由度だった。

 RPGというと、

 スタート地点の町があって⇨次の町へ行って⇨ダンジョンを攻略して⇨ドラゴンを倒して⇨云々⇨次の町に行って

 みたいな原則一本道のシナリオだが、『サガ フロンティア』は、スタートとゴールだけ決まっていて道中は完全自由となっている。物語が始まったら順当に周辺の街を冒険してもいいし、いきなりラスボスに挑んでもいいし、シナリオそっちのけで仲間やアイテムを集めてもいい。遊ぶ人ごとに物語は異なる。また、主人公も7人存在しそれぞれ旅の目的もバラバラだ。プレイヤーはそのうち1人を選んでゲームを始める。

 このゲームの最も面白いところは冒険の舞台である『リージョン界』という世界だ。この世界は宇宙の中に「リージョン」と呼ばれる地域が幾つも存在しており、いかにもファンタジーっぽい西洋風のお城があれば、スターウォーズのようなスペースオペラ風の基地や、現代日本の住宅地みたいな街もある。

占いの町『ドゥヴァン』
海沿いのリゾート地『オウミ』
近未来風の『マンハッタン』

 そのリージョンの中でわたしが最も惹かれたのが九龍城砦をモデルにした怪しい都市『クーロン』だったのだ。

 どうよ? 素晴らしいアングラ感。薄暗い街に怪しく光る漢字表記のネオンはまるでブレードランナーのようだ。そしてまたBGMが素晴らしい。このゲーム画面でみたまんまのイメージの音楽だ。曲名も直球に『九龍』。


 前置きが長くなっちゃったな。(サガフロはまたいつか語る)

 九龍城砦の生活に想いを馳せることもあるのだが、幸運なことに解体は1993年〜なので、動画が残っている。

 うん、思いっきり3K(キツい・汚い・危険だっけ?)の世界だ。実際に足を踏み入れたら3分で帰りたくなるだろう。しかし、九龍内部は迷宮のような構造になっているため素人は迷子になったら出られないらしい。

 でもこんなに汚いのに、危ないのに、なんだか惹きつけられるこの気持ちはなんだろう。完全な異郷・異界だけれども人々の営みが力強いからだろうか。実際のところは違法行為や反社会的組織の温床になっていたようだが、なんだかノスタルジーを感じてしまう。くううぅぅぅううー。

 なぜ急に九龍城砦を思い出したのかというと、先日「中野ブロードウェイ」に初めて足を踏み入れたからだ。すんげえなあそこ!!

 全然ブロードじゃないじゃん!ナローだわ!

 ダンジョンじゃん!!同行者がいたからなんとか生きて帰って来れたが一人だったらまだわたしはブロードウェイ内に取り残されているだろう。どこからどこまでが店舗なのか、敷地なのか、何回建てなのか、今どこに向かっているのかさっぱり掴めない恐ろしいラビリンスであった。

 サガフロンティアのように昭和のようなリージョンもある!!

 なかでも最も目立つのはサブカルの聖地とも称される「まんだらけ」だ。でかい。でかすぎる。どこからどこまでが「まんだらけ」かの把握すら許されない。

 各店舗に陳列されているものはサブカル要塞だけあって主にコミックやフィギュア、トレーディングカードにプラモデルなどのホビーだが、個人的に目を奪われたのは“セル画”だった。

 知ってる? 若い子は知らないだろうから少し触れてみると、セル画とは絵の描かれた薄い透明のシートだ。これは昔(90年代ごろまで)のアニメ制作において用いられたもので、少しずつ違う絵の描かれたこれを大量に用意し、パラパラマンガの要領で連続表示させることでアニメーションは動き出す。

 そんな実際のアニメ制作現場で作られたセル画がグッズとして陳列されていた。しかも表に陳列されてた作品がとても濃い。聖戦士ダンバインなんだもん、コナンとかドラゴンボールじゃなくて。

 知ってる? 若い子は知らないだろうから少し触れてみると、ダンバインとはガンダムシリーズを手がけた”富野由悠季”が手がけたロボットアニメで、バイクレーサーの兄ちゃんである主人公がひょんなきっかけで妖精の住むファンタジー世界である「バイストンウェル」に飛ばされてしまい、そこで巨大ロボ“オーラバトラー”を用いた戦争に巻き込まれる物語だ。

 ここで特にすごいのはその先見性だ。放送が1984年なのだ。この時代に異世界ファンタジーをやっちゃうのが頭がおかしい(褒め言葉)のよ。初代ドラクエの発売が1986年であることを意識すればその先見性はよくわかるだろう。なお、センスが早すぎたのかそこまではヒットしなかったようだ。2023年の今、異世界モノのアニメが流行りまくってるのが皮肉なものだ。

 わたしもこのアニメのファンだが当時の子どもの反応はさっぱりわからない(生まれる10年前だし)が今見ても斬新で面白いアニメだ。(過去に記事で触れたこともあるから見てみてね)

 ゼェゼェ。

 かなり脱線してしまったが、クーロンの混沌と比べたらアセロラウォーターみたいなものだろう。とにかく日本のクーロンにお目に掛かれて良かったのだ。恐るべし中野。

 まさかな、、こんな形で九龍城砦を疑似体験できるとは思いもしなかった。(違法建築ではないと思うが笑)

 つくづく世の中は発見に溢れてるなあと思う。日本にも世界にも未知の世界はたくさんあるのだ。俺もゲームのようにたくさんのリージョンを冒険したいぜ。


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