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今日も生きたね

 今日は私の大好きなノベンバを生で聴ける特別な日。そのはずだった。

 約2時間のバスの遅れにより、降車場であるバスタ新宿へ着いた時には、開演時間をとっくに過ぎていた。はやる気持ちと共に渋谷の街を走る走る!!

 と言いたいところだが人混みの中はうまく走れない。カサカサとゴ ブリのように、大勢の人々の合間を縫ってライブハウスへ向かう。

 会場である渋谷WWWXへ着いたのは18:40ごろ。ツーマンライブなので一組の持ち時間は1時間程度と想定すると、私のお目当てのノベンバのアクトはもう終盤に違いない。ガックリとした気持ちでライブハウスのクソ重い扉を開く。

 目に入ったのは『GHOST RIDER』のカバーを披露する彼ら。轟音と共に唸る小林祐介。

 来て良かった。

 人間とは単純なもので、4時間半バスに揺られても、好きなものを一目見られれば、それだけで満足できる。(望んで乗ったんだから当たり前だけどね笑笑)

 次に演奏されたのは『BAD DREAM』と『黒い虹』トップクラスにキャッチーな彼らの代表曲。いずれもライブのクライマックスで披露されることが多い。

 ああ、マジで終盤だなあ。

 パフォーマンスのカッコ良さにときめきつつも少し切なさを覚える。これを見るためだけにきたのになあ。少し気落ちしていた。

 そしてMC。今回のイベントが開催に至った経緯が語られる。コ口ナ禍という特殊な条件下においてロックバンドという存在に何ができるのかという迷い。小林祐介は率先して動き出せなかったこと、実は2020年にも一度誘われていたが良い返事ができなかったことを少し悔いていたが、時を経てこうしてNOT WONKと共にステージに立てる喜びについても話していた。

 これに関しては、前例のない事態であり、正解がなかったため私には何も言及できないが、従来通りのイベントとして開催はできないにしろ、こうして彼らがステージに立つ姿を見れたことはとても嬉しかった。

 そしてラストに演奏されたのが『今日も生きたね』。彼ら自身が“アンセム”と称するほどの屈指の名曲。

 シューゲイザーやインダストリアルを取り入れたハードな楽曲を得意とする彼らの作風としては異色の清らかなバラード。(ちょいちょいバラードもあるけどね)

今日も生きたね 望んでも 望まなくても
これが最後の言葉になってもいいように歌いたい
『今日も生きたね』歌詞:小林祐介

 この曲はシングルとして発売されたものだが、類を見ない販売形態で非常に面白い。なんと同じCDが2枚入っているのだ。

 自分用に一枚。そして大切な人にもう一枚を贈れるようにできている。この珠玉の作品を恋人や親友、家族と一緒に楽しむことができる。もちろん歌詞カードも2組あるし、カップリング曲である『ブルックリン最終出口』も両方に収録されている。(こちらもバラードだ)

 そして我が家には当然2枚ともある。

誰か貰ってくれーーー


 “なんて美しい日々だろう”

 優しくそう歌う彼ら。確かにいつか思い出した時にはこの悔しさだって美しい日々になってくれるはず。そう思っているのだが、ちょっぴり寂しかった。

 演奏が終わりステージからはけてゆく。

 充実感、幸福感は確かにあるものの、少ししか味わえなかったという歯痒さは捨てきれなかった。嬉しいけれど悔しい。

 もう1本前のバスに乗っていれば全編を堪能できたはずなのに。

 ほんの少しの後悔を抱えたまま、ぼんやりと次の演者を待った。

 少しの休憩を挟んで登場した“NOT WONK”。私はこの公演の告知を目にするまで名前しか聴いたことないバンドだった。完全に「はじめまして」だ。

 YouTubeで1、2曲チェックしただけで臨んだが、ノベンバをゲストに呼ぶぐらいだから素晴らしいアーティストであることは疑っていなかった。

 現れたのはイマドキの若者らしい、掴みどころのなく飄々とした青年たち。後で調べたら、メンバー全員が私より年下らしい。

 「どんなパフォーマンスをするのだろう?というか本当にスゴい奴らなのか?」と半分試すような視線(何様だよ笑)で眺めていたが、私のこの舐めた態度はあっさりと打ち砕かれる。

 ありがとう!NOT WONK!!

 彼らは収まりの悪かった私の心を見事に抹殺してくれたのだ。

 繰り出されたのはA⇨B⇨サビの流れを基調としたJ-pop的なセオリーとは無縁な、構成に凝った楽曲たちなので、どこからどこまでが一曲だったのか、何曲やったのかはわからなかったが圧倒的演奏を否応もなく”わからされ”た。

 特に本編ラスト2曲の凄みたるや。

 「それじゃあノーベンバーズに勝負を仕掛けて帰りますわ」と不敵なMC(もはやマイクパフォーマンス)の後に披露された2曲はヤバかった。周りに合わせて拳を突き上げていた。この飄々とした態度はノーベンバーズを倒せる自信の表れなのか、かっこいい。

 マジで強え。鬼強え。

 音楽的な知識の乏しさゆえにこんな表現しかできないが素晴らしかった。マスクの下でずっと口元がニヤケいた。人は圧倒的な存在を目にしたら笑うしかないのだ。

 とりあえずNOT WONKのTシャツ買って帰るぞ!!決めた!!以降も奴らを追う!!なんて思い、公演終了と共に物販に向かった。

 Sしかなかった。アタイの適正サイズはMか(オーバー気味にすると)Lだった。

 えーー。そんなーー。

 雑に終わる。

 追記:NOT_WONKのパフォーマンスが公式でアップロードされていた。これをチェックして熱い夜を体感しよう。

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