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私であり続けること

 久々の更新である。

 前回の投稿からまるまる1週間空いてしまった。ここまですっぽかすのは初めてだ。

 その理由は至極単純。

 忙しかったから、たったそれだけ。なかったんだよ!スキマ時間なんて!!空いた時間の有効活用なんてライフハックは嘘だね嘘、インチキ。そりゃあ、各行動の間には時間はあるさ、ただそれは息を整える時間だろ?次に向けて休憩する時間だろ?何もしないことこそが有効活用なんだよ!!!

 てなわけで更新をサボっていたのでした。

 とはいえ、さすがに仕事しかしていなかったわけではなく、1冊本を読んだよ!先述した内容とダブるが、休憩時間程度があるからね。その本を簡単に紹介してみよう。

「空気」を読んでも従わない
 著:鴻上尚史

 はいこちらです。全国津々浦々に潜む岩波ジュニア新書ファンの皆様にとっては知名度抜群でしょう。

 ご存知ですか?岩波ジュニア新書! #読書感想文 みたいなタグを漁ってここに迷い込んだ、読書が好きな紳士淑女の皆様ならアンテナがぴんと立っていると思うけど。

 それ以外の方々に説明すると、字がやたら細かくて、上部がギザギザしたことで知られるあの岩波書店が刊行している、子供向けの新書シリーズです。対象年齢は中高生あたりでしょうか?しかし、子供向けと侮ることなかれ、大人が読んでもはっとするような良書の宝庫なんですよ。言葉が易しくて読みやすいし、図書館にそこそこ置いてるのも魅力です。

 そんな岩波サイドから激推しされていたのがこの本だったので手に取ってみたわけです。

 この本では、悩めるティーンネイジャーたちに対して、この国に生きる私たちが、なぜ息苦しいのかを教えてくれます。普段なんとなく感じているモヤモヤを言語化する手助けですね。本書の受け売りですが、敵が恐ろしいのは"正体がわからないから
"であって、何時の方向から何人どんな敵が襲ってくるかみたいな、情報がわかるのならば対策の取りようがあるわけです。

 メインとなるのは、海外(特に欧米)と日本の文化の違いです。この本ではこの比較を通して、なぜ我々の国は息苦しいのかを読み解いていきます。

 ここで重要なのが、ただの出羽守とは一線を画しているところです。日本と比べて欧米の文化は素晴らしい!進んでいる!と褒めるだけの内容では決してなく、日本に蔓延する息苦しさが外国ではなぜ薄いのかに関して、あくまで冷静で公平な視点から解説しています。

 とはいえ本記事はあくまで感想文であって要約ではないので、内容の全てを詳しく説明しませんが、あっさりめにご紹介を!キーワードとなってくるのが「世間」と「社会」、そして「一神教の神様」です。

 我々日本人の大多数は、「世間」と「社会」の2つの世界を生きています。そのうちで特に強力なのは「世間」という共同体。これとは対照的に、海外には「世間」という世界観は存在しません。「社会」があるのみです。我々を縛り付ける「世間」とは一体何なのか、ここで重要なのは海外のみの概念「一神教の神様」です。気になった皆様は本書を手に取ってみましょう。

 勿体ぶっただけでは味気ないので、私が読んでいて印象に残った箇所を引用してみましょう。

 まずは歴史的に異民族からの侵略を受けてきた中国と、(原則)単一民族、独立を保ってきた日本を比較しての言葉です。

 でも、日本は一度も異民族の侵略はなかったと書きました。
代わりに、日本を襲ったのは、天災でした。地震、大雨、津波、日照り。

 こういう時、人はなんと言うか分かりますか?
「しょうがない」と言うのです。
地震に怒っても、日照りに文句を言っても「しょうがない」のです。だから、日本人は苦労や苦難に対して「しょうがない」と受け入れるようになったのです。

 もし、元王朝が勝利して、日本中を支配したとしたら、日本人は決して「しょうがない」とは言わなかったでしょう。

 「みてろよ。絶対にもう一回戦って、勝って、お前たちを日本から追い出してやる」と思ったはずです。

 実際、中国の漢民族の人達は、何回もそう思いました。そして戦ったのです。 そういう民族は「しょうがない」という言葉は連発しません。「しょうがない」と思っている場合ではないからです。

 実際、英語でも、「しょうがない」という言葉はあまり使われません。 一番、ニュアンスが近いのは、「It cannot be helped」 ですが、僕はアメリカ人やイギリス人がこう言っているのを聞いたことがありません。
これは、とても「負け犬(loser)」の匂いがするのです。

 ぎりぎり、 「We have no choice」 です。これは、彼らも口にしますが、「私達はやれる ことはぎりぎりやった。でも、他に方法が」というかなりポジティブな意味で、「しょうがない」のあきらめとは違います。
私達日本人はとても「しょうがない」という言葉を連発する民族なのです。

 あなたはどうですか?

 何かあると、「しょうがない」と言っていませんか? それは、あなたの性格というより、あなたの身体の中に流れる日本人の記憶です。
とりあえず「しょうがない」という言葉で現実をスルーするか受け入れるのです。そういう考え方が身についているのです。
『「空気」を読んでも従わない』
著:鴻上尚史 P111より

 日本人は理不尽になぜ立ち上がらないか、流れに身を任せてしまうのかに関してもこんな記載が!

 ニュースを見れば、世界ではいろんな所でデモが起こっています。

 世界の人々はいろんなことに身をまかせないで、反対しています。 「格差社会」という 金持ちと貧乏人の収入の差の広がりに対する抗議だったり、自動車燃料増税に反対したり、 海外からの移民を受け入れることに反対したり、そもそも大統領の政策に反対したりして、 いろんなデモをします。

 「社会」を自分達の理想に近づけようと戦うのです。

 日本では、デモはほとんど起きません。

 「世間」はすでにあって、これからもずっと続くものと思われているからです。「世間」 は、変えるものでなく、そこにあるものと思ってしまうのです。

 「世間」や、そして「社会」が思い通りにならない時は、日本人は「世間」や「社会」を変えようとするのではなく、「しょうがない」という言葉でやりすごします。 天災と同じだと思うのです。

 「しょうがないよ」「しょうがないさ」「しょうがないもん」と、やりすごしたり、ガマンしたりするのです。

 とても残念なことだと僕は思っています。自分達の生きている「世間」や「社会」をよりいいものにするのは、私達の権利であり義務でもあると思っているのです。暴力的な手段は絶対にダメですが、 世界の国々のように、「世間」 や 「社会」に身をまかさないで戦う必要があると僕は思っているのです。
『「空気」を読んでも従わない』
著:鴻上尚史 P117より

 そしてこの本では解説だけではなく、この"息苦しさ"に立ち向かう方法に関してもアドバイスを贈ってくれます。10代のうちに読んでおくと勇気が湧いてくるよ。

 だから、僕は「友達のふりをする苦痛」と「一人のみじめさ」を天秤にかけて、どっち がイヤかを考えたらいいと、彼女にアドバイスしたのです。

 あなたはどうですか?どっちがイヤですか?

 もちろん、どっちもイヤです。でも、どっちがよりイヤかを考えるのです。 焦る必要はありません。じっくり考えて下さい。


 あなたがあなた自身に問いかけるのです。 「どんな場合でも一人はイヤだ。そんなミジメでかっこ悪いことは耐えられない」と思ったら、「友達のふりをする苦痛」を選ぶといいと思います。

 それは、「世間」を受け入れる道です。好きではない「世間」のメンバーになることで 「友達でもない人と、友達のふりをしてつきあう方がもっとイヤだ。そんなの耐えられない」と思ったら、一人を選ぶのです。

 僕は中学時代、どっちがイヤかを考えて、「一人のみじめさ」を選びました。「友達じゃないのに、友達のふりをする」ことが本当にイヤだったからです。

 そして、しばらくすると、同じように「友達のふりをするのがイヤだ」と思って「一人」を選んだ人がいることに気付きました。

 そして、その人と話し始めました。そして、本当に友達になりました。

 「友達のふりをするのはイヤだ」と思ったから、その人の存在に気付けたのです。もし、 そう思わなければ、彼の存在にはずっと気付かなかったと思います。彼もまた、僕の存在 に気付かなかったでしょう。

 「一人のみじめさを選ぶ」ということは、「世間」から外れるということです。 でも、大丈夫。江戸時代ではないのです。「世間」から外れたからと言って、あなたは 死刑になるわけではありません。

 でも、もちろん、さびしいです。このさびしさがイヤで、「世間」を選ぶ人もいるでしょう。

 では、そのさびしさをまぎらわす方法を考えましょう。 さびしさが、少しでも減れば、「世間」から抜け出しやすくなるはずです。
『「空気」を読んでも従わない』
著:鴻上尚史 P161より

 クラス内の仲良しグループに属しているもののうまく馴染めないという女の子へ向けたアドバイスですが、我々に刺さるものも多いんじゃないでしょうか?

 気になった紳士淑女の皆様はぜひとも書店へレッツゴーです。

 おしまい

誰のものでもない「私」があるから
笑われても 嫌われても 守り抜くよ
偽って笑うぐらいなら 苦虫潰したかおで睨むよ 睨むよ
嘘偽りない「私」で

I'm sorry 涙流せないよ
あなたの哀しみはあなたの物
I know you're alone
代わりに弾くよ このアルペジオ
『アルペジオ』作詞:川上洋平

 読んでいて聴きたくなったのがこの曲でした。「私」であること、それを貫くために孤立を恐れないこと。世界へNOを突きつける勇気をくれます。あなたの哀しみはあなたじゃないからわからない。だから贈るのは和音じゃなくて、それぞれの音が独立したアルペジオなのですね。

 最近紹介するのがこのバンドばっかりですが、あまりにピッタリだったのでたまには良いよね?

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