マガジンのカバー画像

恋愛短編集「ダメな恋ほど愛おしい」

6
ハウコレに連載していた恋愛短編集に、未公開分を追加したものです。 小説、またどこかで書きたいな・・
運営しているクリエイター

記事一覧

永すぎた春

永すぎた春

彼は、もはや恋人と言う存在を超えていた。

何も言わずに気持ちが伝わって、別に何か特別なことをしなくても、一緒にいれば安らげた。これが、結婚というものなのかな、と真由は思っていた。だから、あえてその一歩を踏み出すことに、必要性も感じなかったのだ。ずっと。

奏多と一緒に暮らしだして、もう5年経っていた。

付き合いはじめてすぐに、奏多のアパートの更新時期が来たので、「お金がもったいない」という理由

もっとみる
身の程知らずの恋

身の程知らずの恋

自分の人生に爽やかなイケメンが絡んだことがない。それは、ハッキリ断言できる。別に、面食いではないし、アイドルおたくとかでもないので、男性の顔立ちに何か執着があるわけではないのだが、思い返すと、小学生のころから中高大、そして就職した今に至るまで、イケメンの彼氏はおろか、イケメンの友人すらいたことがない。

何をそんなに避けられているのかわからないけど、自分の周りにいた男性たちは、すべからく、中の下か

もっとみる
誰かと誰かと私のあなた

誰かと誰かと私のあなた

記念日は、嫌い。あなたの誕生日はとくに、嫌い。
あなたと一緒にいられないから、じゃない。
あなたが、誰かひとりといっしょにいるから。

******

今日も、彼は、来なかった。

来週は必ず行くから、と約束したのに。彼の職場の近くに借りたこの小さなアパートの一室に、彼は顔を見せることもなかった。

もしも、電話をくれたら、すぐにでも車で迎えに行って、彼の家でも、どこへでも、送って行くことだってで

もっとみる
片羽の恋人

片羽の恋人

若い頃の美しさとは、何も知らないがゆえの傲慢さの所産だ。
自分が他人から、中途半端にしか愛されないかもしれない、なんて、
絶対に思いつくはずもない。
自分は人生の主役であり、他人の人生でも同じように主役のように光り輝いているものだと、あの頃は、思っていた。何のてらいもなく、無邪気に。

**********

真矢は、朝からため息をついていた。早朝から、担当役員が出かけるのに付き合わされて、出社す

もっとみる
地雷な彼

地雷な彼

元彼に何とかして復讐してやりたいなら、
「今すごく幸せだ」って、見せつけてやることだって、どこかで読んだ。
ホントにそうだと思う。この3年間それだけを心のよりどころにして生きてきたくらい。

そうよ、私、変わったわ。
すごくキレイになったって言われるし、
いまは3人の男からアプローチされてるの。
どう? 私を振ったこと、きっと後悔するはずよ。

だから、これが、私のあなたへの復讐なの。

****

もっとみる
忘れられない男

忘れられない男

初めての男は忘れないって言うけど、それはちょっと不正確かもしれない。
正しくは、初めて好きになって、振り向いてもらえて、寝た男、だと思う。

大山香織は、ため息をついた。
街中は、ハロウィンが終わった途端、手のひらを返したように、クリスマスイルミネーションに衣替えしている。一晩明けただけで、まるで違う街に来たように、キラキラまばゆい光が目に突き刺さる。

あれから1年もたっているのに、1ミリも忘れ

もっとみる