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ベンガル風シーフードカレー サルディーニャの島ワインの完熟の果実味と磯の香り

年末年始の多少の飲みすぎ、食べすぎがひと段落した1月7日。さて、七草がゆで胃腸をいたわるかなと思っていたところ、なんと子供の口から“インドカレーが食べたい”との意外なひと言が。
そこで近所のインドカレー屋さんでお子様カレーセット2つ、妻にはバターチキン、私はベンガル風シーフードカレーをテイクアウト。お子様カレーセットにも辛さ控えめながらバターチキンが入っていて、大人用のものと合わさって家の中にバターチキンの香りが充満する。私以外はナンで、私はサフランライスで。

エビ、カジキマグロにナスとピーマンも

ベンガル風シーフードカレーはココナッツミルク、バターが効いた中にトマトの軽快な酸味、そこにカジキマグロとエビの旨味が溶け込んでいる。エビがたっぷりと入っているのが嬉しく、またカレーソースからも魚介のコクを豊かに感じられる。小ぶりサイズでコロコロと入っているカジキマグロの身を噛むと磯の香りをまとった少々癖のある風味が広がるが、スパイスとの親和性はなかなか良い。
ベンガル地方はインド東部の西ベンガル州とバングラディシュを含む地域を指す。以前、レトルトのケララ風フィッシュカレーを食べたが、こちらは今回のベンガル風に比べてココナッツミルクがたっぷりと効いていた。

合わせたワインはイタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州とアブルッツォ州のスパークリングワイン、カンパーニャ州のフィアーノ品種、ヴェネト州のソアーヴェ(ガルガーネガ品種)、サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種、の5種。結論から言うと、サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種が最も素晴らしい相性を見せてくれた。
同じワインの収穫年が1年若いものは、以前に本場のフィッシュカレーとも素晴らしい相性だった。フィッシュカレーには鬼に金棒のワイン。

では、一つ一つワインに合わせていく。

ロータリ, ブリュット プラチナ, トレントDOC, 2016, , 12.5%, 1,746円
Rotari Brut Platinum

色調は7年熟成による深みを呈する。
香りにはリンゴのコンポートの厚みのある果実香、海藻のヨード香、微かな干しわらとヘーゼルナッツが複雑さを。
風味にはみずみずしくピュアな果実味、シャープな酸味はアルプス山脈が育むシャルドネの恩恵(シャルドネ 80%、ピノ・ノワール 20%)。ステンレスタンク発酵で果実味のフレッシュ感は強い。中盤からヨードのニュアンスに富みややビター、鼻腔にはブリオッシュが抜ける充実の質感。
ベンガル風シーフードカレーに合わせる。カレーのスパイスとココナッツミルクに、ワインの泡の刺激と酸味がリフレッシュする。魚介のエキスとの高め合いは期待できないか。相性: ★★★☆☆

ファルネーゼ, ファンティーニ・スプマンテ キュヴェ, イタリア, アブルッツオ, 12%, 2,112円
Farnese, Fantini Cuvee

ココッチオーラという可愛い名のブドウ、プーリア州原産でスパークリングワイン向けやブレンド補助品種に。
香りには青リンゴ、メロンにパッションフルーツ、パイナップルのニュアンスがあり力強い。白い花や、開放的な果実香を軽く引き締めるハーバルなタッチ。
風味には柔らかい甘みを伴うジューシーな果実味、酸味は中庸、ほろ苦さやミネラルのニュアンスに富む。カジュアルでチャーミングなスタイルながらバランスに優れる一本。
ベンガル風シーフードカレーに。トレントのロータリのスパークリングワインよりも果実味の質感が厚く、スパイスやバターとは良くバランス。こちらも魚介のエキスとのシナジーはあまりない。相性: ★★★☆☆

マストロベラルディーノ, ラディーチ, フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ DOCG, カンパーニャ, イタリア, 2021, 2,732円
Mastroberardino, Fiano di Avellino, Radici, Campagna, Italy

イタリア南部ティレニア海沿いのカンパーニャ州、標高520-620mの単一畑で栽培される地場のフィアーノ品種。ラディーチは根の意。
香りには青リンゴ、ライチの爽やかでほのかに甘やかさ。潮の香り、白胡椒のスパイス、ヨードのニュアンス、フラワリーな香りも強く、セルフィーユのハーバルな印象も。
風味はみずみずしく果実味は程よく抑制されている分、明瞭に感じる酸味と塩味。余韻にはほのかにフェノリックなタッチとほろ苦さを残す。
ベンガル風シーフードカレーに。ワインの塩味、ミネラルのニュアンスがカレーに溶け込んだシーフードのエキスにしっかり反応して繋がる。一方で果実味のボリュームがややおとなしめでスパイスに圧倒される。相性: ★★★☆☆

ピエロパン, ソアーヴェ クラッシコ ラ・ロッカ, ヴェネト, イタリア, 2020, 12%, 3,773円
Pieropan, Soave Classico DOC La Rocca

ラ・ロッカは海抜200~300m、石灰質と粘土が豊富な南西向きの畑の名。ガラスで内張りしたセメントタンク(2500L)で発酵。澱とともに約12ヶ月間熟成。
ゴールドがかったはっきりとした強い色調。
香りにはりんご飴、リンゴのリキュールの濃密なフレーバー。炙ったバニラビーンズを鼻の前に置いたよう。ヘーゼルナッツ、アカシア、フラワリーな蜂蜜、微かにヨード香や炙りわかめが重層的に。
風味は凝縮感の強いリッチでまったりとした果実味は陽のニュアンス、塩味やヨードのニュアンスは心地よく引き締める陰のニュアンス。両面がバランス良い。余韻にも豊かにバニラ香。
ベンガル風シーフードカレーに。ワインの完熟した果実味と樽由来のバニラ香はカレーのスパイスとコクのパワーに負けずにしっかり調和。さらにワインに含まれるミネラルのニュアンスがしっかりとシーフードの旨味に調和。相性: ★★★★☆

ピエロ・マンチーニ, プリモ, ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ 2021, 2,049円
Piero Mancini, Primo, Vermentino di Gallura, DOCG, Italy, 2021, 14%

サルディーニャ島で唯一のDOCG格付けのヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ。
香りにはリンゴのリキュール、林檎酒、ピンクグレープフルーツ、グァバにグレープフルーツの果皮、レモングラスなどのハーバルな香り、ほんのりと樽香、白胡椒のスパイスのタッチ、海岸を歩いているような潮の香り。
風味は豊満でジューシーな完熟した果実味、塩味がワインにメリハリを与える、清々しい酸味、余韻にはまったりとした乳酸飲料のようなタッチ、鼻腔を樽香が力強く抜ける、ほろ苦さを伴う充実したリッチな余韻。
ベンガル風シーフードカレーに。厚みのある果実味と樽由来のバニラ香は、ピエロパンのソアーヴェ(ラ・ロッカ)と同様にカレーのスパイスとコクにしっかりとバランス。さらにワインの潮の香りが魚介のエキスと力強く握手。本日の組み合わせで最も良い相性を見せた。相性: ★★★★☆

本格的なシーフードカレーには、ソースのスパイスとコクに負けない力強さと、シーフードのエキスに繋がる磯の香りやミネラルのニュアンスがワインに求められる。少し樽の効いたサルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種がまさにそれだった。

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