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炭酸ジュース

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結婚小説です💐💍 1万6,000字ありますが、スラスラ読めると思います。
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炭酸ジュース 《最終編——後編》

炭酸ジュース 《最終編——後編》

 有美子さんは理想的な結婚をしているとはいえ、その旦那さんと出会うまではずっと独身主義者だったみたいだし、旦那さんを亡くされてからも再婚する気配は一度もなかった。

 最愛の旦那さんを亡くされて深く沈んでいたのに、今更こういう話を聞いていいのか、とても迷っていた。

 しかし、小さい頃に聞いた駆け落ちみたいな国際結婚の話を聞いて、ずっと私の有美子さんに憧れていたのだ。

 だから、有美子さんの結婚

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炭酸ジュース 《最終編——前半》

炭酸ジュース 《最終編——前半》

「あの、ちなみに話というのは」

 私が聞くと、有美子さんは「あなたの結婚の話ね」と言った。

「私が夢で見た内容は話せません。しかし、あなたが2年後に結婚する相手との関係性で、大きな精神的ダメージを受けるということだけは伝えておきたいの」
「結婚相手ですか?」

 私はどんな人なのか、見た目や出会い方、趣味や性格、彼との生活についてなど聞きたいと思ったが、結婚に失敗したという話だと気が付き、聞く

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炭酸ジュース《後編》

炭酸ジュース《後編》

 仙台駅の改札口を抜けると、正面に大きなガラス細工の壁画がある。

 付近にはたくさんのお土産屋が並んでいて、私はそこで抹茶の饅頭を買って有美子さんを待っていた。

 すると、程なくして有美子さんを改札口から流れてくる群衆の中に見つけた。あっちも私に気が付いたみたいで、手を上げて合図を送ってきてくれた。

「あら、お待たせして悪いわね」
「いいえ、私もつい先程着いたばかりなので」

 私達は久しぶ

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炭酸ジュース《中編》

炭酸ジュース《中編》

 風呂から上がってくると、麻美は先程のパソコン作業を終え、文庫本を読みながら炭酸水で梅酒を割ってグラスで飲んでいた。

「あ、いいなぁ。私も梅酒飲みたい」
「さっきの電話、何だったの?」

 麻美は不思議そうな顔をしながら聞いてきた。

「私の結婚についてだって」
「えー、親戚のおばさんでしょう。どうしてまたそんなことを」
「分かんない」
「で、その有美子おばさんは何て?」
「まだ特に何も話してな

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炭酸ジュース《前編》

炭酸ジュース《前編》

 私は仕事を終えて夜遅くに帰ってくると、玄関で靴を脱ぐなりリビングのドアを勢い良く開けて冷蔵庫へと直行した。コートも脱がす、カバンも置かず、大股で歩いていき、乱暴に冷蔵庫を開けた。

 勢いよく開けた反動で中に入っていた飲み物の缶同士がぶつかり、がしゃん、という大きな音が鳴る。

 私は麒麟ラベルがついた銀色のビールを取り出し、立ったままプルタブを開けた。ぷしゅ、という歯切れのいい音が鳴る。一気に

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