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筋力を増強させる最低限のトレーニング量を知っておこう!


 筋トレを行うことによって、徐々にもち上げられるバーベルの重量を増やすことができます。これは筋力が増強している結果であり、トレーニーにとっては重量の増加がトレーニングの励みになります。

 筋力増強の効果は筋肥大とともに神経系の適応(運動の学習)にもとづいているので、トレーニング量を増やすほど、その効果の向上も期待できます。

 逆に言えば、仕事などで忙しさに追われて、トレーニング量が減ってしまうと筋力の低下を招くことになります。

 そこで知りたいのが、確実に筋力をアップさせる「最小のトレーニング量」の科学的根拠(エビデンス)です。

 最小のトレーニング量がわかれば、最低限やるべきトレーニング量の目安がつき、体調や時間に応じてその日のトレーニングを計画することができます。

 そして2020年、ソレント大学のPatroklosらは最新のメタアナリシスによって、筋力をアップさせるための最小のトレーニング量が明らかになったのです。

 今回は、筋力を増強させる最小限のトレーニング量について考察していきましょう。


◆ 筋力増加の最低のトレーニング量はこれだ!

 
 ソレント大学のPatroklos氏らは、2,629件の研究から選んだ6件の研究を分析し、筋力を向上させるために必要な最小のトレーニング量について調べました。この分析において、対象者は少なくとも1年間のトレーニング経験を持ち、トレーニング期間は4週間以上で、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトが含まれていました。

 研究の結果は以下の通りです。

  1. トレーニング強度:最大筋力(1RM)の90%でトレーニングすると筋力が確実に向上しますが、70〜85%の強度でも効果があることが分かりました。高い強度の方が短期間での筋力増強には効果的です。

  2. 回数とセット数:週2〜3回のトレーニング頻度で、6〜12回、1セットを行うことが推奨されます。この方法を8〜12週間続けると筋力が増強されます。

 このトレーニング方法により、スクワットでは平均で17.48 kg、ベンチプレスでは8.25 kgの筋力増加が見られました。一方で、デッドリフトに関しては有効なデータが得られていません。

Patroklos AK, 2020より筆者作成


 したがって、スクワットとベンチプレスにおいて筋力を効率的に増強したい場合は、以下のようなトレーニング設定になります。

 「週に2〜3回、最大筋力の70%以上の重量を用いて、6〜12回を1セット」

 12回で疲労困憊に近づく重量が最大筋力の約70%であり、6回で疲労困憊に近づく重量が最大筋力の約85%に相当します。このような重量で最低週2回、各種目を1セットずつ行うことで筋力を維持・増強することができるのです。

 このような最小限のトレーニング量であれば、仕事の合間で短時間でトレーニングを終えることができるでしょう。

 ただし、この研究はトレーニング経験者に限定されており、女性が含まれていないなどの制限があります。デッドリフトのデータが不足している点も、今後の研究で補完されることが期待されます。

 トレーニング時間が限られている方にとって、この最小のトレーニング量は参考になりますね。



◆ 筋トレの科学シリーズ


シリーズ1:筋肉を増やすための「タンパク質摂取のメカニズム」を理解しよう!

シリーズ2:筋トレ後に摂るべき「タンパク質の摂取量」のエビデンスまとめ

シリーズ3:筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由

シリーズ4:筋トレの効果を最大にする「タンパク質の摂取タイミング」のエビデンスまとめ

シリーズ5:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう!

シリーズ6:睡眠前のタンパク質の摂取が筋トレの効果を最大化させる最新エビデンス

シリーズ7:筋トレするなら「タンパク質の摂取と腎臓結石のリスク」について知っておこう!

シリーズ8:筋トレ前の静的ストレッチは筋力増強の効果を低下させる最新エビデンス

シリーズ9:筋トレの効果を最大化するトレーニング要素の最新エビデンス

シリーズ10:筋トレの効果を最大化する「トレーニングの順番」を知っておこう!

シリーズ11:コーヒーブレイクが筋トレのパフォーマンスを高める最新エビデン

シリーズ12:筋トレするなら「フルレンジ」が効果的という最新エビデンス

シリーズ13:筋トレ後にタンパク質と炭水化物(糖質)を摂取しても筋肥大の効果はアップしない

シリーズ14:筋トレには「ぽっこりお腹を引き締める」効果がある!?

シリーズ15:科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」を知っておこう!

シリーズ16:筋トレによる筋肥大と脂肪の減少効果を最大にする「プロテインの摂取タイミング」を知っておこう!

シリーズ17:ダイエットでやるべき「筋トレの方法論」を知っておこう!

シリーズ18:筋トレで筋肥大の効果を最大化するには疲労困憊まで追い込むべきか?

シリーズ19:筋トレ前の炭水化物(糖質)の摂取は必要ない?

シリーズ20:タンパク質の摂取は「筋トレの前と後」のどちらが効果的?

シリーズ21:筋トレのトレーニング強度と筋肥大の関係について知っておこう!

シリーズ22:筋トレによる筋肥大の効果は「週のトレーニング量」で決まる!

シリーズ23:筋トレに役立つ「オメガ3」の効果と摂取タイミングを知っておこう!

シリーズ24:筋力を増強させる最低限のトレーニング量を知っておこう!


◆ 参考文献


Patroklos Androulakis-Korakakis, et al. The Minimum Effective Training Dose Required to Increase 1RM Strength in Resistance-Trained Men: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med . 2020 Apr;50(4):751-765.

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