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科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」を知っておこう!


 「筋トレをするとモテる」

 これは都市伝説ではなく、科学的検証にもとづく事実です。

 男性の筋肉量と女性がその男性をどれだけ魅力的と感じるかの関係は「逆U字型」とされています。これは、筋肉量がある程度まで増えると魅力度も高まることを示しています。

Frederick DA, 2007より筆者作成


 さらに、筋トレによって顔の特徴が「男らしさ」を増すことが指摘されています。SNSなどで筋トレ前と筋トレ後の写真を比較すると、特に体を絞った後の顔がより「男らしい」特徴を持つことがわかります。この「男らしい顔」と女性が男性を魅力的と感じる度合いも「逆U字型」の関係にあるとされています。つまり、ある程度「男らしい顔」であれば、その魅力度も高まるというわけです。

Iris J, 2017より筆者作成


 筋トレは身体の筋肉量を増やし、男らしい顔にすることで魅力を高めることが示唆されているのです。しかし、単に筋トレをするだけでモテるわけではありません。

 なぜなら、モテるボディには絶対的な条件があるからです。

 今回は、科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」について最新の研究報告をご紹介しましょう。




◆ もっともモテるのは「WCR=0.7」のボディだ!


 女性は男性の身体のどの部位に魅力を感じるのでしょうか?

 この疑問への答えは、多くの研究から明らかになっており、研究者の間での共通認識として確立しています。

 その部位は男性の「上半身」です。

 特に、魅力的とされる上半身の特徴は「WCR(ウエストと胸囲の比率:Waist-to-Chest Ratio)が0.7」とされています。このWCRは、ウエストを胸囲で除した値になります。


 例えば、ウエストと胸囲が同じサイズの場合、WCRは1.0となり、その体型は寸胴といえます。WCRが0.9、0.8、0.7となるほど、胸囲が大きく、ウエストが細くなることを意味し、V字型の体型を指します。

 オクラホマ州立大学の研究では、このWCRを基に女性が男性の魅力をどのように評価するかを検証しました。対象は大学生の女性92名(平均年齢20.7歳)で、彼女たちにはWCRが0.7、0.8、0.9の3つの異なる体型の男性の写真が提示され、それぞれの魅力度を評価してもらいました。

Garza R, 2021より引用


 その結果、WCRが0.7の体型がもっとも魅力的と評価され、次いで0.8、0.9の順となりました。

Garza R, 2019より筆者作成


 このデータは、胸囲が大きく、ウエストが細いV字型の体型が、女性からの魅力的とされやすいことを示しています(Garza R, 2019)。

 さらに、2021年の別研究でも、WCRが0.7の体型がもっとも魅力的に評価される結果が確認されました。短期的な交際を望む女性は、特にこの体型を魅力的に感じる傾向があると報告されました(Garza R, 2021)。

Garza R, 2021より筆者作成

 これらの結果は、先行研究(Crossley KL, 2012)の結果を補完し、女性が「WCRが0.7」の体型を好む可能性が示唆されているのです。

 そして、女性は男性の上半身の中でも特に「腹部」に注目して魅力を評価する傾向があることが、最近の研究から明らかになってきました。


◆ 女性は男性の顔と同じくらい「腹部」をよく見ている


 女性が男性の身体のどの部分に注目して魅力度を評価しているのかを明らかにする手法として「アイトラッキング法」があります。この方法では、女性が男性を見る際、最初にどの身体部位を見るのか、また、どの部位をどれだけの時間観察しているのかを、視覚的な追跡から判定します。

 2019年のオクラホマ州立大学の研究では、大学生の女性92名(平均年齢20.7歳)を対象に、男性の全身の写真を見せ、アイトラッキングを用いて各身体部位(顔、胸部、腹部、鼠径部、大腿部、下腿部)への注目の度合いを計測しました。

 その結果、女性が最初に目を向けたのは顔で、次に腹部、そして胸部という順序であったことが明らかになりました。

Garza R, 2019より筆者作成


 一方、長く注視された部位としては腹部が最も長く、次に顔、そして胸部という順でした。

Garza R, 2019より筆者作成


 これらの結果から、女性が男性を評価する際に、最初に顔を、続いて腹部を重点的にチェックしていることがわかりました。特に、顔よりも腹部を長く見る傾向があることから、女性は男性の腹部を特に注目していることが示唆されました。

 これらの結果は、男性の後ろ姿(顔を見ることができない状態)を基にした身体部位の評価とも一致しています。

 ニューサウスウェールズ大学の研究によれば、女性に男性の後ろ姿の写真を見せた際、アイトラッキングによる視覚的追跡から、最初に背中の下部(腹部)に目を向け、そしてこの部位を最も長く注視することが報告されています(Dixson BJ, 2014)。

 これらの結果を総合すると、女性は男性の身体を評価する際、顔以外では主に「腹部」に注目しいることがわかります。女性は、男性の腹部や胸部を他の部位よりも優先して評価することによって「WCRが0.7」に近い上半身なのかを判定しているのです。

 さらに、この結果は、女性が好む筋肉の部位を明らかにした研究報告からも支持されています。


◆ 腹直筋は女性が好む筋肉ランキングのトップ3に入る!


 「女性は男性のどの筋肉にもっとも魅力を感じるのか?」

 この疑問を検証したのがテキサス大学オースティン校の研究報告です。  

 研究には503名の女性(平均年齢25歳)を対象とし、14の筋肉部位の画像を順番に見せ、「筋肉の魅力度」および「男性としての魅力への影響度」を調査しました。筋肉部位としては、僧帽筋、広背筋、腹直筋、腹斜筋、肩の筋肉、三角筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕筋、大殿筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋が挙げられます。

 「筋肉の魅力度」に関する調査では、「この筋肉はどのくらい魅力的ですか?」という質問に、7段階のスケール(7:最も魅力的、1:まったく魅力的でない)で回答してもらいました。

 「男性としての魅力への影響度」に関する調査では、「この筋肉は男性の魅力に影響しますか?」という質問に「はい」または「いいえ」で回答してもらいました。

 その結果、腹部の代表的な筋肉である腹直筋の魅力度ランキングは、「筋肉の魅力度」でも「男性としての魅力への影響度」でも第3位にランクイン。これは、数ある筋肉の中でも、腹直筋が特に魅力として評価される部位であることを示しています。

 このように、女性は男性のしっかりとしたウエストを魅力的と感じるだけでなく、その中でも特に腹直筋の存在に強い魅力を感じることが示唆されているのです。

 男性がシックスパックを目指す理由は、女性が腹直筋を高く評価することを、無意識のうちに感じ取っているのかもしれませんね。


◆ WCR0.7の体型が魅力的である理由


 現代の進化論は、筋肉量が多く、脂肪量が少ない、WCRが0.7の男性がモテる理由をこう述べています。

 「病気に強く、健康的だから」

 女性は子どもを生むとしばらくの間は子育てに追われるため、一生に産める子どもの数が限られます。そのため、女性は数少ない子どもになるべく良質な遺伝子を受け継がせ、子どもが成長するまで十分な食料や安全な住処を与えたいと考えます。

 そこで、必要となるのが「健康的なパートナー」です。

 女性がパートナーとなる男性の健康度を評価するポイントは、その顔や体型といった外観です。

 魅力的な顔(イケメン)とは、左右の対称性、目や鼻などの位置や大きさの平均性、肌の質感がポイントとされており、このような特徴から女性は男性の「健康度」を感じ取ると考えられています。左右対称で平均的な顔は健康的であることを示し(Foo YZ, 2017)、美しい肌は感染症の少なさを反映します(Buss DM, 1994)。

 美しい顔立ちと綺麗な肌は、感染症に強く、健康的であることのシグナルです。これが女性が男性を見たときに最初に顔を評価する理由です。

 そして、身体の筋肉量や脂肪量も健康度のシグナルとして考えられています。

 筋肉はエネルギー源となるグリコーゲンやアミノ酸を貯蔵します。病気になるとエネルギーが必要になり、筋肉量が多いとエネルギー不足を補うことができるため、病気の治癒を促進するとされています。

 実際に、筋肉量が多いことは、腎臓病や心臓病、がんや集中治療室に入院するほどの重症者の死亡率を減少させるとの報告があります。

 また、腹部に内臓脂肪が多いことは「脂肪肝」のリスクを上げます。脂肪肝は脂質異常症を引き起こし、狭心症や心筋梗塞などのリスクも高まります。さらに、内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインは糖尿病や高血圧、動脈硬化を引き起こすリスクもあります。ウエストが大きいことは、これらの生活習慣病のリスクを示す指標とされています。


 筋肉量が少なく、脂肪量(内臓脂肪)が多いと、不健康であることのシグナルとなります。対照的に、筋肉量が多く、脂肪量が少ないことは、健康であるシグナルとなります。

 その根拠として、筋肉量が多く、脂肪量が少ないほど、すべての病気による死亡率がもっとも減少することが報告されています(Sedlmeier AM, 2021)。

Sedlmeier AM, 2021より筆者作成


 筋肉量が多く、脂肪量が少ないWCRが0.7の男性は、病気に強く健康的であり、長期にわたって経済的資源を与えてくれる可能性が高いことを女性は無意識に感じ取り、「魅力的」と判断するのです。

 数百万年前の旧石器時代において、子供に十分な食料を与え、子供が成長するまで健康に家族を守ってくれる筋肉量の多い、脂肪量の少ない男性を選んでいた女性たちは、進化の過程で生き残る可能性が高まりました。その結果、その女性たちの子孫である現代の女性にも、筋肉量が多く、脂肪量が少ない男性を好むという傾向が生得的にインストールされているのです。

 これが、女性がWCRが0.7の体型を好む理由です。

 筋肉量が多い肩や胸部、そして引き締まった腹部に浮き出ている腹直筋、これらのフォルムが示すWCRが0.7の体型がモテるボディの絶対条件なのです。



◆ 筋トレの科学シリーズ


シリーズ1:筋肉を増やすための「タンパク質摂取のメカニズム」を理解しよう!
シリーズ2:筋トレ後に摂るべき「タンパク質の摂取量」のエビデンスまとめ
シリーズ3:筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由
シリーズ4:筋トレの効果を最大にする「タンパク質の摂取タイミング」のエビデンスまとめ
シリーズ5:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう!【2023】
シリーズ6:睡眠前のタンパク質の摂取が筋トレの効果を最大化させる最新エビデンス
シリーズ7:筋トレするなら「タンパク質の摂取と腎臓結石のリスク」について知っておこう!
シリーズ8:筋トレ前の静的ストレッチは筋力増強の効果を低下させる最新エビデンス
シリーズ9:筋トレの効果を最大化するトレーニング要素の最新エビデンス
シリーズ10:筋トレの効果を最大化する「トレーニングの順番」を知っておこう!
シリーズ11:コーヒーブレイクが筋トレのパフォーマンスを高める最新エビデン
シリーズ12:筋トレするなら「フルレンジ」が効果的という最新エビデンス
シリーズ13:筋トレ後にタンパク質と炭水化物(糖質)を摂取しても筋肥大の効果はアップしない
シリーズ14:筋トレには「ぽっこりお腹を引き締める」効果がある!?
シリーズ15:科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」を知っておこう!


◆ 参考文献


Frederick DA, et al. Why is muscularity sexy? Tests of the fitness indicator hypothesis. 2007a Personality and Social Psychology Bulletin, 33, 1167-1183.

Iris J, et al. Women’s Preferences for Men’s Facial Masculinity: Trade-Off Accounts Revisited. Adaptive Human Behavior and Physiology 12 August 2017.

Garza R, et al. Fertility Status in Visual Processing of Men’s Attractiveness. Evolutionary Psychological Science. 2019 Feb;5:328–342

Garza R, et al. Effects of Women's Short-Term Mating Orientation and Self-Perceived Attractiveness in Rating and Viewing Men's Waist to Chest Ratios. Arch Sex Behav. 2021 Feb;50(2):543-551.

Crossley KL, et al. What is an attractive body? Using an interactive 3D program to create the ideal body for you and your partner. PLoS One. 2012;7(11):e50601.

Jaime C, et al. More than just a pretty face: men's priority shifts toward bodily attractiveness in short-term versus long-term mating contexts. Evolution and Human Behavior. 31 (2010) 348–353

Dixson BJ, et al. Eye-tracking women’s preferences for men’s somatotypes. Evolution and Human Behavior. 2014(35): 73-79

Sedlmeier AM, et al. Relation of body fat mass and fat-free mass to total mortality: results from 7 prospective cohort studies. Am J Clin Nutr. 2021 Mar 11;113(3):639-646.


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