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筋トレによる筋肥大と脂肪の減少効果を最大にする「プロテインの摂取タイミング」を知っておこう!


 筋肉量を増やしながら、脂肪量を減らすことは、理想的な身体づくりにおいてもっとも重要な目的になります。

 筋肉量が多く、脂肪量が少ない身体は、身体的な魅力度が高まるとともに、健康的にも死亡率が低下することが報告されています。
科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」を知っておこう!

 そこで今回は、筋トレ後によく摂取されるプロテインに関して、「食事とプロテインをどのようなタイミングで摂取することが筋肥大と脂肪の減少効果を最大にするのか?」という疑問の答えとなる研究報告をご紹介しましょう。




◆ 筋肥大と脂肪減少の効果を高める摂取タイミングとは?


 筋トレによる筋肥大の効果は、少なくとも筋トレ後の24時間にわたって継続すると報告されています。この24時間内でタンパク質を適量かつ適切なタイミングで摂取することが、筋肥大の効果を最大にするために重要となります。
筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由
筋トレ後に摂るべき「タンパク質の摂取量」のエビデンスまとめ

 特に推奨されている摂取パターンは、筋トレ後の3回の食事でタンパク質をしっかり摂ることです。例えば、夕方に筋トレをした場合、その後の夕食、翌朝の朝食、そして昼食で適量のタンパク質を摂取すると、筋肥大の効果が最大化されるとされています。
筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう!

 さらに、近年の研究では、筋肥大の効果だけでなく、脂肪の減少効果も高めるタンパク質の摂取タイミングが明らかになってきました。

 パデュー大学のHudsonらは、筋トレ後の食事とプロテインの摂取タイミングについて検証した34の研究結果をもとに、「食事と一緒にプロテインを摂取」と「食事と食事の間にプロテインを摂取」の2つの摂取タイミングによる筋肉量、脂肪量への影響について解析したシステマティックレビューを報告しています。

 筋トレ経験者(23〜81歳)を対象に、筋トレ後の食事とプロテインの摂取タイミングが異なる2つのグループに分けました。プロテインは主にホエイ、カゼイン、ソイが摂取され、6週間以上の介入期間における筋肉量、脂肪量の変化が解析されました。

 その結果、まず筋肉量では、2つの摂取タイミングの間に有意な差は認められず、同等の筋肥大の効果が認められました。これに対して、脂肪量では、2つのタイミングでいずれも減少傾向を認めましたが、特に食事とプロテインを一緒に摂取すると、脂肪量がより減少しやすく、高い脂肪の減少効果が認められたのです。

 さらに、筋肉と脂肪のバランス、すなわち体組成も改善しました。食事のタイミングに関わらず、筋肉量は増加し、脂肪量は減少する傾向が見られました。しかし、食事とプロテインを一緒に摂取するとより高い改善が示されました。

Hudson JL, 2018より筆者作成

 

 これらの結果から、2つの重要な示唆が得られました。

 ひとつは「筋肥大の効果は、食事とプロテインの摂取タイミングにかかわらず同等に得られる」こと。

 もうひとつは「脂肪の減少効果は食事とプロテインを一緒に摂取することでより高まる」ということです。

 その結果として、食事とプロテインを一緒に摂取することは体組成をより改善させることが示唆されたのです(Hudson JL, 2018)。

 では、なぜ脂肪の減少効果は、食事とプロテインを一緒に摂取すると高まりやすいのでしょうか? 


◆ 脂肪の減少効果が高まる理由


 この理由について、Hudsonらは「エネルギー摂取量のコントロールが影響している」と説明しています。

 食事とプロテインを一緒に摂取すると、プロテインのカロリーを考慮して食事のカロリー摂取量を調整しやすくなります。しかし、食事の間にプロテインを摂取すると、カロリー摂取量の管理が難しく、カロリーオーバーになりやすいです。そのため、Hudsonらは食事とプロテインを一緒に摂取する方が脂肪の減少効果が高いと推察しています。

 さらに、「タンパク質の摂取量の増加」も理由として挙げられています。

 食事とプロテインを一緒に摂ると、一度の食事で取るタンパク質の量が増え、満腹感が高まり過食を防ぐことができます。また、タンパク質の摂取は食事後の代謝も高め、エネルギーの消費が促されます。これらの要因で、エネルギーバランスがマイナスになりやすく、脂肪の減少効果が高まると考えられています。

 Tahavorgarらによる別の研究では、食事の30分前にホエイプロテインを摂取すると、筋肉量を増加させる効果とともに食欲が抑制されたことも報告されています(Tahavorgar A, 2014)。


 このように現時点でのエビデンスでは、食事とプロテインを一緒に摂取する方が、食事と食事の間にプロテインを摂取するよりも、同等の筋肥大の効果とともに高い脂肪の減少効果が得られることが示唆されているのです。

 筋トレにより筋肉量を増やして、脂肪量を減らすためには、プロテインを食事と一緒(または食事の直前)に摂取すると効果的かもしれませんね。



◆ 筋トレの科学シリーズ


シリーズ1:筋肉を増やすための「タンパク質摂取のメカニズム」を理解しよう!
シリーズ2:筋トレ後に摂るべき「タンパク質の摂取量」のエビデンスまとめ
シリーズ3:筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由
シリーズ4:筋トレの効果を最大にする「タンパク質の摂取タイミング」のエビデンスまとめ
シリーズ5:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう!
シリーズ6:睡眠前のタンパク質の摂取が筋トレの効果を最大化させる最新エビデンス
シリーズ7:筋トレするなら「タンパク質の摂取と腎臓結石のリスク」について知っておこう!
シリーズ8:筋トレ前の静的ストレッチは筋力増強の効果を低下させる最新エビデンス
シリーズ9:筋トレの効果を最大化するトレーニング要素の最新エビデンス
シリーズ10:筋トレの効果を最大化する「トレーニングの順番」を知っておこう!
シリーズ11:コーヒーブレイクが筋トレのパフォーマンスを高める最新エビデン
シリーズ12:筋トレするなら「フルレンジ」が効果的という最新エビデンス
シリーズ13:筋トレ後にタンパク質と炭水化物(糖質)を摂取しても筋肥大の効果はアップしない
シリーズ14:筋トレには「ぽっこりお腹を引き締める」効果がある!?
シリーズ15:科学が明らかにした「モテるボディの絶対条件」を知っておこう!
シリーズ16:筋トレによる筋肥大と脂肪の減少効果を最大にする「プロテインの摂取タイミング」を知っておこう!


◆ 参考文献


Hudson JL, et al. Effects of protein supplements consumed with meals, versus between meals, on resistance training-induced body composition changes in adults: a systematic review. Nutr Rev. 2018 Jun 1;76(6):461-468.

Tahavorgar A, et al. Whey protein preloads are more beneficial than soy protein preloads in regulating appetite, calorie intake, anthropometry, and body composition of overweight and obese men. Nutr Res. 2014 Oct;34(10):856-61.

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