見出し画像

人が 笑顔があふれた第3回難民・移民フェス

文・カバー写真=水野喜之

 晴天の第1回、雨の第2回に続いて今回の天候で言えば「くもりの第3回」となるところだがそれよりも、期待以上に多くの方が来場され、最後の綱引きが大いに盛り上がり会場全体が笑顔に包まれたことから、「人が 笑顔があふれた第3回」として記憶されるべき素晴らしいフェスとなった。
 わたしはフェスオリジナル「お茶Tシャツ」の販売を担当した。Tシャツは中央にREFUGEE & MIGRANT FESTIVALとあり、そのまわりに世界のお茶やコーヒーと仲間たちのイラストと様々な言語を描かれた素敵なもの。販売していると何人もの方から「なぜお茶のTシャツなの?」と訊かれる。入管法改悪反対で実施した「お茶アクション」のことをお話し、わたしたちはお茶を飲んで穏やかに心を通じて難民・移民の方々、仲間たちと連携していこうという考えから、このお茶Tシャツを作ったんですよとお伝えした。

©︎難民・移民フェス(以下同)

 当日は8時半に集合し、各ブースのテント設営、テーブル・椅子の配置を手伝ってから、お茶Tシャツ販売ブースの準備に取り掛かった。テーブルにお茶Tシャツ、3色(シルバーグレー・メトロブルー・アイビーグリーン)、4サイズを並べる。一緒に販売担当になったAさんが作られた各種プレートを机やテントの屋根に貼りつける等開店準備を進める。フェスは11時からのハズなのだが、横のクルド料理のテントが10時半くらいから早くも呼び込みを始めて驚く。確かに来場者も増え出していて浮き足立った私は「こちらもそろそろ販売開始しましょうか」とAさんに声をかけるが、「いやまだまだ」と準備の手を休めぬままに諌められた。
 それでも11時前には販売を開始すると次々にお客さんが来られ、お茶Tシャツを買い求めて行かれる。事前にWEBでこのお茶Tシャツは先行発売しており(ただし発送開始は6月中旬以降)、そこではシルバーグレーが一番人気と聞いていたが、やはり画面で見るのと、実物を見るのとは違うのかアイビーグリーンがどんどん売れていく。それに数としてはMが一番多く、S、L、XLと続くが、S・Mがもちろんよく売れるものの、L、XLもよく出て、まずはアイビーグリーンのXLサイズが品切れとなった。他色も大きいサイズから売り切れとなる。その頃にはお隣のクルド料理に並ぶ行列が練馬駅から公園へと降りる階段とお茶Tシャツブースの間を塞ぐ形となってしまい、これはいかんと東京ドームのビール売りのように「オリジナルお茶Tシャツいかがですかー」と大声で売り込みをすることとなった。その甲斐あってかお茶Tシャツはどんどん売れていく。左隣の、難民の方と語らいながらお茶を飲んでもらう「チャイハネ」にも無料のお茶(今回はタイのお茶)を求めて行列が出来て我がテントに迫りくる。これはいかんと更に大声をはり上げた。「お茶Tシャツいかがですかー」
 お客さんとは色んな会話があった。「WEBでもう買ったけれどこっち色の方がいいな」「じゃあ変えるように手配しましょうか」「いいよ、こちらも買います」とか、前出の「なぜお茶なの?」という質問、それに「このTシャツはお茶で出来てるの?」という問いかけが複数あったのもおかしかった。

 わたしは広報チームの役目も仰せつかっていて何度かお店をAさんとボランティアのHさんに任せて会場を回った。アフリカ系のお店ではアフリカ時間というのか開始時間ギリギリに到着されたため挨拶出来ていなかったアフリカ出身の仲間たちと再会を喜ぶ。もうみんな慣れたものだ。アフリカンヘアー担当の方が急病で来られず急遽別の方に編み込みのブースをやってもらうハプニングもあり少し心配していたがテント内はその手捌きを見つめる方々であふれており安心する。お昼頃にはチリとガーナのブースは早くも食べ物がなくなっていて、チリのブースは隣のスリランカ料理の調理場と化し、鉄板で料理が炒められていた。その匂いのなんと魅力的だったことか。
 ステージを当然ながら落ち着いて見ることは出来なかったが、今までは間隔を空けての椅子配置だったのがベンチに代わり、そこに座れるだけの方がぎっちりと座られている。更に立ち見も加わって本当にたくさんの方が音楽を楽しみ、難民の方のお話、対談を真剣に聞き入っておられた。その姿を見て少し感動してしまう。もっと沢山の方に共有してもらわなければならないが過去最多の来場者、このステージに聴き入り問題意識を持った人たちが広めてくれることに期待したい。ステージの後方は木々に覆われた空間だったがここには地元の方だろうかビニールシートを敷きくつろぐ姿や、木にもたれながら買ってきた料理を食べつつ、ステージを眺めている姿が見受けられた。そんな光景も素敵だった。

 使命を終えてお茶Tシャツブースに戻ると、お茶Tシャツが更に残りが少なくなってきている。その頃、チャイハネではトークが熱気を帯び、立ち上がって大声で演説する難民の方が現れた。ここでも皆さん熱心に聴かれている。一度「お茶Tシャツいかがですかー」と声を上げて演説者に睨まれてしまった。ごめんなさい。
 お茶Tシャツはいよいよなくなり、「売り切れました。ごめんなさい」と謝るばかりとなってきた。なんだか謝ってばかりいる。WEBショップのQRコードを印刷したボードも用意していて、そちらで購入をお願いする回数も増えてくる。そんな感じで14時過ぎには300枚を売り切った。驚くばかりである。売り切ったあとには「売って欲しい」といろいろなTシャツが持ち込まれた。まずは去年の川口で販売していたアフリカのJさんが描いた猫のイラストのTシャツ、これも売り切った。続いてはミャンマーの三本指を立てたTシャツ、なんとこれも売り切った。みなさん凄いと思いませんか。

 さて、今回のフェスは最後に綱引きをすることになっていた。最初にその話を聞いた時にはなんで綱引きなのと疑問を持ちながらも、一体どうなるのだろうと楽しみにしていた。15時も近くになって綱引きのアナウンスが流れだして、わたしも広場中央に移動する。あらかじめ配られた番号の紙切れを持った人が呼ばれて左右に分かれ人数が釣り合ってから、アフリカ中部で使われるリンガラ語での1・2・3の掛け声でスタートした。大歓声のなか、みんな力いっぱいに綱をひいている。真剣な顔だ。なんとか勝とうとみんな必死だ。あっという間に勝負がついたが、みんなが笑っている。勝った方も負けた方も難民の仲間たちもお客さんも笑っている。続いて2回戦はビルマ語の1・2・3でスタート、これも終わればみんな笑顔、笑顔だ。更に3回戦も笑顔にあふれて、なんとアンコールの声があがった。難民の方もアンコールを笑顔で叫ばれている。そして4回、5回と続いたんだからみんな好きだなあ。嬉しかったんだなあ。と少し感動しながらわたしも来ていた友達を誘って最後の方で綱を握った。後ろには今朝知り合ったアフリカの難民の男性、スタートするとその方が力いっぱいに引くものだから足の置場がもともと少なかったためにわたしの体は仰向けにのけ反ってしまい危ないこれでは倒れると慌てるうちに負けてしまった。まったく戦力外のおじゃま虫みたいなものだったけれども、そのアフリカの男性と顔を見合わせるとやはり笑顔であった。難民・移民の子供たちもお客さんとしてやって来た子供たちも笑いながら大いに楽しんだ綱引きの綱って魔法の綱じゃないかと思えた。そうか、綱引きとは笑顔をうむ競技だったのだ。SNSの投稿に感動させられたものがあったのでここに引用させていただきたい。

今までも各ブースでのやり取りやステージでの演奏・トークを聞いてもらったり、チャイハネで交流してもらったりもしたけれど、この綱引きの場はもっと直接的に人間同士のふれあいが持てた素晴らしい祝祭空間だったのだ。こんなに笑顔であふれるフィナーレはもっと沢山の方に体験して欲しかったと心の底から思った。
 公式には3,600人の来場だという。それならお茶Tシャツは12人に1人が買っていただいたことになるが、いやもっと来場者多かったに違いないと今は確信している。次回も綱引きやるのかな?そりゃやるだろう、みんなが楽しみにしているのだから。

***

難民・移民フェスを支援する窓口です。
運営は皆様のご寄付で成り立っています。サポートにご協力いただけましたら嬉しいです(noteからもサポート可能です)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?