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これはひどい



彼女はつぶやいた


りーもさん…


ひどい


これはひどい…


本当にひどい…


その後も無意識に何度も彼女の口からこぼれる


何度も何度も繰り返されるのは


「ひどい」


その言葉


一度や二度じゃなくて


何十回、もしかしたらもっと…


一時間と少しの時間のあいだに


ただただ、繰り返された


人生で最も「酷い」と言われた一日



 



「りーもさーん、ご無沙汰してますぅ、お久しぶりぃ♡」


ほんの10分ちょっと前、久しぶりの再会をした二人。


彼女は笑顔で迎え入れてくれた。


前に会ったのは1年半位前。
久しぶりである。
こんなに間が空いたのは初めて。
一番会っていた時は月3回のペースだったし。


アポイントメントを取ったのはこちらから。


そろそろ、と言うかもう我慢が出来ない、限界が来るのは予想していたのでLINEで連絡をしていたのは半月以上前。


予想通り、正確には予想以上に限界を越えて溜まっていたので早目に連絡して“予約”しておいたのは本当に良かった。
(本音を言うと、とうに限界は越えていた)


「こちらにお掛けください」


椅子に座るように促され、それに従って着座する。


それから
少しの時間、お互いの近況を話してから場所を変えて、それは始まった。


それが始まってすぐに彼女は言った。



「りーもさん…、ひどい。
これはひどい。本当にひどい…」


「……だよね」




ガチガチの身体を指でほぐしながら彼女は何度も「ひどい」とつぶやく。
正確に言うと連発する。


ひどい


ひどい


ひどい


ひどい


「いやー、これ今年イチ、いや、去年のお客さんも一緒にしても一番悪いですよ、ホント固いです、笑」


全身を軽く触って確認した後、左足の裏から始まってすぐに冒頭の一言。



左ふくらはぎに施術箇所が変わっても「ひどい」を連発する。


本当にひどい

最高にひどい

いやー、これは…


結構な言われ方なのでこちらも笑うしかない。
だってうつ伏せで身動きできない状況だし。


とにかく「ひどい」のオンパレード。
(今思えば何故「固い」と言わないのか謎なんだけど)


思わず聞いた。


「それって褒めてる?」





久々のマッサージ。



最初に椅子に座ってフットバスで足を温めてからの施術になる。
足を温めている間に身体の状態の確認とお互いの近況を話す。
久しぶりなので最初はお互いに軽く緊張、微妙な距離感、笑。


数分後、フットバスから温めていた左右の足を出してタオルで拭いてもらう。


その流れで左右の足の状態(むくみ、張り、血流など)を確認していく。


彼女の見立てと自分が普段感じている足の状態を話していく。
(数年前に骨折したことがあるので、その後の状態も説明している)


それから身体全体の状態(どこが痛い、辛いとか)を聞かれたので一通り説明して聴いてもらった。
それを踏まえて施術する割合、バランスを考えてもらう。


じゃあ、始めましょう!


施術台に移動。
うつ伏せで施術台に身体を預けて目を閉じる。
もう、完全におまかせ状態。
自分の身体の状態は分かってもらっているし、施術についても安心して任せられので。
長いお付き合いなのである。


施術中、色々と話していく。
身体もほぐれつつ、緊張もほぐれたのかあれやこれや話していく。
ネタは尽きない。


お互いの下の子の学年が同じ(通っている学校は違う)と言う事もあって子の進学とか部活はどうする?とか。


上の子はどう?高校は?部活は?とか。


世間での学校の先生によるパワハラ、いじめ、とか。


昔は先生が生徒を親の眼の前でもぶっさらうとか、フツーだったよねー。
理不尽だらけだったよねー、なんて。
今だに木刀持った先生がいるとかいないとか。


ちなみに彼女は平成生まれなので昭和の超絶に理不尽なスパルタはリアタイで体験はしていないのだけれど、ぎりぎりでそういったことの流れ、風潮は残っていたとのこと。なので部活動とかでそれなりのスパルタ的なこと、理不尽なことは体験しているらしい。


ただ、スパルタ的指導が全て否定されるかどうかになるとそれも違うよね、と。
意味があって生徒も半分?納得したうえでの制裁も時にはあったから、それはそれで信頼関係にも繋がるし、なんて。


なので令和の状況は「ホントゆるゆるじゃないですかー」と熱語りしていて面白かった。


ある意味昭和って良かったね、笑



そんな流れから昔の話にもなって初めて会ったのは何時だったか、なんて話になって確認したら12年以上前と分かって。


あの時って何歳だっけ?とか。


いやー若かったねぇ。
(今も彼女はまだまだ十分若いけど)


お互いに長い付き合いだねえみたいになって。


自分自身最近興味があって始めたこと、始めたいとかあります?


などなど


まあ、本当にたくさん話した。
notnに描けそうで描けない微妙な内容もあったし。


マッサージに行ったのか喋りに行ったのか。
その位話した、笑。


施術をしてもらう前は始まったら身体がほぐれて施術中に爆睡しちゃうかも、なんて思っていたけど結局ほぼ会話をしていた。
盛り上がってしまった。
まあ、いつものことと言えばそうなんだけど。


施術してもらって分かったのは、カラダを放ったらかしにし過ぎと言う事。
自覚はあったけど施術してもらったら軽く想像を上回っていた。


どこを指で押してもらっても固すぎて最初は指が入っていかない。


でも、数回ほぐしてもらうとその部位周辺からすぐに血行が良くなって身体が温まっていくのが分かる。
ぽかぽかしていく感じ。


最初は全身がほぐれていないから押してもらってもその感覚は鈍い(指が入っていかない感覚はしっかり判る)けど、何度目か同じ箇所を指で押してもらうと身体の芯の部分がほぐれていって痛みを感じるようになる。


更にそのままほぐしていくとその痛みはほぐしてもらっている箇所だけでなく、頭の中に伝わっていく。
脳みそに電気が走る感覚。


ある意味「あったまキーン」になる。

※この言葉が気になってしまう程ヒマな方は該当のnoteをお探しください。


施術箇所変えるともっと指が入っていかないけど何度か繰り返すと指が身体の中に入って行って、だんだん我慢できなくて


「いぃーーーーってぇ〜」て品が無い言葉を発してしまったことが何度かありました。


たまにテレビで放送される芸能人の足ツボ体験ってあるじゃないですか。
あれで足の裏のツボを押されてのたうち回って「痛ぁーーぃ💢、✳◯□△×〜💢💢」みたいなの。


あそこまでではないけど軽目の発狂に近いことになったことが数回ありました。


「痛たたたたあぁーー」
「これは頭に電気が…」


あ、今の所は腰と繋がってますねー
うーん、それは肩から首の辺りが、とか。


彼女からの冷静なコメント


流石にここまでのメンテナンスは自分一人では出来ない。


自分でフォームローラー使って身体をほぐしたりストレッチをしたりするけどプロのそれには遠く及ばない。


施術をしてもらって自身のダメさ加減を実感、再確認することになった。


あー、本当に疲れていたのね


もう少しトレーニングした方がいいね


使わない筋肉が固くなってそれに引っ張られて関節(特に股関節!)が固くなっていく。
それをカバーしようとして違う場所(腰、背中とか)がどんどん悪くなって、次第に他にも…。


わかってはいるんです。
でもタイミングもあって。


予約を入れようと思ってお店のサイト見ると行きたい日は既に予約がいっぱいで。
(現在彼女は独立して自分の店舗を経営している。多分独立してから5年位は経っているはず。しかも途中で店舗移転、拡大している。なかなか出来ることではない。)

ほぼ常連さんで新規の受付が出来ないことが続いていたとのこと。


技術が高いから一度施術してもらったら他を探すのは止めるだろう。
リピート率が高いのは当然だと思う。


あっと言う間に予定の時間は過ぎて、たっぷり、ガッツリ、しっかり身体をほぐしてもらいました!
心地よい脱力感とスッキリ感が身体中に広がっていく。


お話もたくさんできたので気持ちもスッキリできたし。


施術してもらって良かった。


また行きたい。
なるべく間を空けずに、身体が悲鳴を上げる前に。


また「ひどい」って言われないように。




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