『ユーカラ・心の窓を映して』

自由な語り部・詩人そして表現を愛するユーカラのぺーです。 こちらでは詩を始め、創作作品…

『ユーカラ・心の窓を映して』

自由な語り部・詩人そして表現を愛するユーカラのぺーです。 こちらでは詩を始め、創作作品をアップ。 どうぞお付き合いください。✍️💐

最近の記事

『 見えない嵐 』

一体どこまで見えていたのだろう わたしの 父の 家族の そして人間の 5歳だという知能で。 「お母さん、ぼく、心が痛いよ」 ダウン症 という帽子を被って生まれてきた兄 ずっと深いところを見ていた人だった だから傷ついた 自分の言葉を持って生まれてきた人だった だから壊した みんな知らなかったけど。 生産性の無い人間は 生きている意味がない、とどこかで皆が信じている近代社会暗黙の常識 あれは嘘だ そこに居るだけで みんなの心を揺さぶることで その人は 全て

    • 『 I'm home!/真相 』第7話・最終章・還るべき場所

       恋子を主人公に見立てて書いた俺の小説が、某・大手出版社の小説大賞を受賞したのは、それから一年後の春だった。    タイトルは『ティーカップス/恋人よ 永遠に回れ』。  小説家の卵で恋多き女、主人公の紅子は、新しい恋人が出来たために付き合っていた恋人を毒殺しようとする、という筋書きで、殺し損ねた元彼・風夜に、 「なんで別れるんじゃなくて殺そうとしたんだ?」 と質問される場面で紅子が、 「だって、ただ別れるなんて、アリキタリでつまらないじゃない?」 と笑って答えるところが、この

      • 『I'm home!/真相』第6話・生きている町

         飲まされた幻覚剤入りのハーブティーと真相を知ったショックは、思いの外深く、昨夜新花巻駅に着いた頃には、一泊するしかない程、俺の心と身体は草臥れきっていた。  その日の内に帰ると決めていた三陸駅に着いたのは、翌日の朝だった。  トンネルを抜けて、海岸線を走る三陸鉄道リアス線から臨む春の海は、明るく、そしてその波音は、生きて戻った俺を祝福する、鳴り止まない拍手のように聞こえて、俺の目を潤ませた。  駅からの道、港の活気が近づけば近づくほど、昨日垣間見た〝死の恐怖〟は薄れ、

        • 『 I'm home ! / 真相 』第5話・鳥の巣とあいだ

           余程疲れていたのだろう、北に向かう新幹線の中で、俺はいつの間にか意識を失ったように眠りに落ちていた。  気がつくと俺は、いつもの溜まり場〝鳥の巣〟で、恋子と二人長机の上にノートを開いて、互いの作品の批評をし合っていた。  〝鳥の巣〟は、通っていた東立大学の作家を目指す学生、所謂作家の卵たちの集う文芸サークルの部室のような物だったが、『小説の書き方』のような入門書から、『小説家への道』、『誰にも真似の出来ないストーリーを描くには?』といったノウハウ本まで、集まる学生たちが持

          『 I'm home ! / 真相 』第4話・開いた記憶の扉

          「あいだ」  俺は、自分でそう呟いて、驚いた。  そうだ! アイツ、今すれ違ったあの男は、恋子の浮気相手、相田、じゃないか?!  三階から一階に下りるまでの短い時間に、エレベーターの箱の中で俺は、突然生々しい色合いで戻ってきたあの日の記憶と、頭痛、耳鳴りと目眩の嵐に襲われ、右に左にとよろめきながら壁にぶつかり、床に尻餅をつくように崩れ落ちた。  一階に着いたエレベーターから何とか這い出た俺は、壁にすがりながら立ち上がり、通路をふらふらと壁伝いに歩いたが、我慢出来ずに、敷地の

          『 I'm home ! / 真相 』第4話・開いた記憶の扉

          『 I'm home ! /真相 』第3話・足がある幽霊

          「だって綴くん……もう死んでるから」  やっと帰って来た俺に、恋子はそう言った。 「えっ?! ……し、し……死んでる??」  俺は両手でカップを握りしめ、目を見開いて恋子を見た。  恋子は俺の言葉に合わせて、拍子を取るように〝うん、うん〟と小さく頷いていたが、『死んでる??』という、最後の言葉には、〝その通り!〟というように調子を合わせて大きく頷いた。 「お、おれが……死んでる?! ば、ばかな……そんな……」  目眩と痛みに耐えられなくなって、俺はソファの背に倒れ込むと

          『 I'm home ! /真相 』第3話・足がある幽霊

          『 I'm home!/真相 』第2話・ハーブティー

          「事故のショックで記憶を失くしてしまったみたいで、何も覚えてないんだよ。その時のこと」  俺がそう話すと、恋子は、今度はさっきとは逆の方に首を傾げて言った。 「よく出来た話だね。綴くん……」  たった今まで、俺の目を覗き込むように思い切り顔を近づけて、頷きながら話を聴いていた恋子が、ふっと顔を離し、『はァッ!』と一つ大きな溜息をつくと、 「流石、綴くん! って褒めてあげたいけど……」 そう言って、遣る瀬なさそうに首を横に振った。 「えっ?! 何? 嘘だと? 作り話だと思っ

          『 I'm home!/真相 』第2話・ハーブティー

          『I'm home!/真相』 第1話・突然の帰還

          【本編】 「ただいま!」  ドアを開けたまま凍り付いたようになっている恋子に、俺は言った。 「何もそんな幽霊見るような顔で見なくてもいいじゃないか。そりゃ、身体一つで部屋を出てから二年も経つけどさ」 「お…かえ・り」  恋子が返して来た言葉は、まるで言葉を覚えたてのA Iのように強張った、ぎこちないものだった。 「うん。まさかこんなに時が経つまで、自分がこの部屋に帰れなくなるなんて、夢にも思わなかったよ」  驚いて固まったままの恋子の脇をすり抜けると、俺は靴を脱いで、部屋の

          『I'm home!/真相』 第1話・突然の帰還

          『note』

          わたしには小さな部屋がある。 思いがいっぱいになって溢れ出したら いつもそっと鍵を開けて 心の部屋に入ってくの。 思いは、 言葉  と言う形になって、 踊りながら並んでく。 前へ行ったり、後へ行ったりスキップしたり、つまずいたり、 起き上がって走り出したり 好きなように好きな場所へ。 最後の言葉が出てきたら 私は笑って手を振って、 またね と、言って部屋を出て行く。 もしよければ、時々私の部屋を見に行ってやって欲しい。 日差しの中で言葉たちが、 ゆっくりとあくびを

          『野に渡る 風のように』

          愛を語ろう   愛を語ろう 野に渡る風のように 特別じゃなくていいからさ あなたの中に眠ってる 何気ない 愛を語ろう 例えば 「おかえり」 は 「待ってたよ」 って、ことだし 「ただいま」 は 「会いたかったよ」 って、こと 「またね」 は 「また会いたいよ」 だし 「もう帰るの?」 は 「淋しいよ」 ってことだから 愛を語ろう   愛を語ろう あたしたちは愛を語ろう 特別じゃなくていいからさ あなたの中に眠ってる 愛を語ろう 例えば 雨降り ぎゅうぎ

          『野に渡る 風のように』

          『 春ですね …そんな貴方が好きでした 』

          お元気ですか? あなたの言葉たちは 今でも前を向いていますか? あの場所で あなたは いつも笑いながら朗々と夢を語り わたしは あなたに食べてもらいたくて いつも大きなおにぎりを 握っていきました 川面を桜色に染めながら 沢山の花びらたちが 小舟のようにうっとりと 流れていきましたね もうあの頃のように あなたと並んで あの川辺に 座ることは出来ないけれど 今でも 春が来るたびに わたしの中に あの優しい川の調べが 流れ出すのです 2024' 3 / 18

          『 春ですね …そんな貴方が好きでした 』

          『 stories 』

          或る日旅人は 山間の知らない景色を 歩いていました ふと目をやると 畦道の向こうで 腰を屈めたお婆さんが 野菜を掘り返していました 「ここは何処ですか?」 旅人が聞くと お婆さんは答えました 「ここは天国ですよ」 その手は節くれだって 生きてきた長い年月を 物語っていました 或る日旅人は 初めての街を 歩いていました 鞄を脇に抱えたサラリーマンが 目の前を足早に通っていくのを呼び止めて 旅人は聞きました 「ここは何処ですか?」 すると彼は生き生きとした笑顔で

          『 going 』

          恋人よ 僕は君のために 生きることは出来ない でも 僕が僕のために生きることで 君に幸せの形を伝えることが 出来ると信じている 君は歩き出すだろう 君が君のために生きる 幸せの道を そこで僕らは もう一度出逢おう 幸せな 一人と一人 として。

          『 春が来る 』

          春になれば 亡き父の 十三回忌がやって来る ふと立ち止まると、 それは遠い者にとって ありがたい機会なのだ と知る 今帰らなければ 今度会うのは 誰かのお葬式の時 かもしれない わたしや 彼らの 短いようで 長い  血   という繋がり 長いようで あっ、 という間の 短い人生なのである さびさぬ。

          『 Today 』

          時々 布団を被って悲しんでいる時に 聴こえてくる声があります 何を泣くことがあるの? あなたは愛されていて こんなによく生きているのに? そう云って 見えない手で そっと涙を拭いてくれるのです そんな時 わたしはまた 思い出すのです 宇宙(そら)には ほら、 楽しんでいらっしゃい と云って この地球(ほし)に 命( わたし )を そっと送り出してくれた 素晴らしい 愛が 在ることを そして今も 窓の外には 泣いたり 笑ったり 転んだり 立ち上

          『バレンタイン』

          いつも ありのままの  わたしを 愛してくれてありがとう わたしに 本当の愛を 教えてくれたあなたへ 愛を込めて 2024’ 2/14 12 : 45