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【読書感想文】アルジャーノンに花束を  著:ダニエル・キイス 訳:小尾芙佐

あらすじ

チャーリイはかしこくなりたかった。
頭が良くなれば、
みんなが自分を好きになってくれる。
そう思ったから。
現状のチャーリイは、
利口なネズミのアルジャーノンに負けるほど、
知能が低かった。

ある時、手術をした。頭の良くなる手術。
リスクは未知だったけど、
チャーリイはみんなと仲良くなりたかった。

術後から、
チャーリイはどんどん賢くなっていった。
勤めていたパン屋では、周りの仕事を凌駕し、
評価が変わっていく。
ねずみのアルジャーノンにも勝てるようになった……!

一方で、理想とは違っていた。
多くの事を聡明に理解していくにつれ、
周りから人がいなくなる。

賢くなり、記憶の精査が進むと、
自分が友達や親から、
ひどい仕打ちを受けていたことも知った。
過去の恥辱と予想外の孤独で、
心に穴が空いていく。

恋も上手くできなかった。
知的成長に、情緒や寛容の発達が追いつかない。
求めてきた知性が、
だいすきなアリスとの関係に楔を打つ。

チャーリイの進歩には誰も付いていけなかった。
また、そんな周りの反応に、
チャーリイの心も追いつかない。

やがて、彼は自分の中に、
悲劇がいることを発見した。

──人為的に誘発された知能は、その増大量に比例する速度で低下する。

アルジャーノンは先立って息を引き取った。
将来への焦燥がチャーリイを襲う。
死が近づいていた。

残された人生で、
彼は人の心の真実を少しずつ明らかにしていく。
かつて、自分をいじめていた家族は、
すっかり変わってしまった。
妹に関しては、情深い女性にさえなっていた。

妹には妹なりの事情があり、
自分が彼女を許さなければ、
この事実から得られるものは、何もないだろうと、チャーリイは思った。

アリスもまた、こんなことを言った。

「高いIQをもつより、もっと大事なことがあるのよ」

アルジャーノンの墓には花を供えた。
そして、チャーリイは、
知識や教育が偉大な偶像となり、
多くの人が見逃していることに気が付いた。

「人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんてなんの値打ちもない」

広い世界を見渡す過程を経て、
チャーリイの知性は戻っていく……。

感想

恥ずかしがらず、弱みを打ち明ける。
助けを求めたり、素直に夢や希望を口に出す。
表に出しにくい感情を、
知能や教養で覆い隠してしまったら、
人に自分を理解してもらえず、
世界はきっと狭いまま。

親交を結びたいのなら、心を開示して、
愛を与え合わなければいけない。
それは簡単ではないものの、
全ての人が必要とする成長の過程。

短い期間だったが、
知識が愛に触れて輝きだす瞬間と、
その価値を、
チャーリイは人生を賭して実感した。

君が花を供えれば、君の元にも花は送られる。


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