エッセイと読書の人。伊藤

noteを弄ぶ諸君、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げる。ご清祥でなければこのア…

エッセイと読書の人。伊藤

noteを弄ぶ諸君、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げる。ご清祥でなければこのアカウントに辿り着くことなどできないだろう。ここで多くは語らない。エッセイと読書感想文を中心に己の拙文と醜態を晒していく。よろしく頼む。

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最近の記事

【読書感想文】三千円の使い方 著:原田ひ香

あらすじ 「三千円の使い方で人生が決まるのよ」 祖母から教わった言葉の意味を、 美帆は生きる中で身をもって知る。 幸せに生きていくためには、 三千円程度の金額ですら、 どのように使うのか、 自らの目的を軸に判断することが必要だと。 美帆、姉の真帆、母の智子、祖母の琴子。 御厨家の女性たちは、 人生の節目やピンチに際して、 お金の使い方と向き合っていく。 三千円をどう使おうか 例えば、ティーポット一つ買うにしても、 持ち合わせで手軽に買うか。 お金を貯めて、良いものを

    • 【読書感想文】タイムスリップ森鷗外

      あらすじ 森鷗外が、何者かに殺されかけた拍子に、 大正11年から、現代の渋谷にタイムスリップする。 現代の渋谷で彷徨い、 出くわした不良に袋叩きにされかけた所を、 女子高生・うららに助けられる。 うららとの出会いを機に、 森鷗外は現代に適応していくが、 彼の残した著作が、徐々にこの世から消える事態が発生。 大正から平成を跨いだ巨大なミステリに、 森鷗外と高校生四人が挑む。 印象に残った言葉 作中の森鷗外が呈した疑問である。 現代人も往々にして浮かぶ時がある疑問だが

      • 【読書感想文】アルジャーノンに花束を  著:ダニエル・キイス 訳:小尾芙佐

        あらすじ チャーリイはかしこくなりたかった。 頭が良くなれば、 みんなが自分を好きになってくれる。 そう思ったから。 現状のチャーリイは、 利口なネズミのアルジャーノンに負けるほど、 知能が低かった。 ある時、手術をした。頭の良くなる手術。 リスクは未知だったけど、 チャーリイはみんなと仲良くなりたかった。 術後から、 チャーリイはどんどん賢くなっていった。 勤めていたパン屋では、周りの仕事を凌駕し、 評価が変わっていく。 ねずみのアルジャーノンにも勝てるようになった…

        • 【エッセイ】そして均衡は保たれる(2/3)

          1/3はこちら↓ 雨天へ奏でるセレナーデ怒りの日  ある秋の日である。メガネ君は、社内の食堂で静かに座る。ぼんやりと窓の外を眺めていた。夕方から雨が降り、時刻は既に午後八時過ぎ。暗い窓では、新たに水滴が生まれては下に流れていく。長らく窓を見過ぎた彼は、その水滴から、生命の誕生と死滅にまで思いを馳せていた。座して壮大である。そこへ私が到着した。 「すまん。遅くなった」 「座しすぎて尻痛し。雨を眺め二時間が経つ」 「午後から雨予報ってのは知ってたけど」 「相変わらず傘

        【読書感想文】三千円の使い方 著:原田ひ香

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        • 【読書感想文】
          28本
        • 【エッセイ】
          27本
        • 【学習しながら愚痴りたい】
          3本
        • 【散歩】
          2本

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          【読書感想文】デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 著:丸山 正樹

          あらすじ  恋愛も仕事も定まらない、中途半端な人生を送る中年男性、荒井尚人。  職を探していた彼は、特技である手話を活かして、手話通訳士として働き始める。  耳の聞こえないろう者のコミュニティは狭く、手話が堪能であった荒井の存在は、多くのろう者に知れ渡った。  遂には、通訳士としてNPOの専属で仕事をするようになり、彼の技能は大いに生かされる。  しかしそこから、彼の過去と、現在に起こった殺人事件が交錯し始める。  荒井の曖昧な人生の理由、ろう者の定義づけ、そして彼ら

          【読書感想文】デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 著:丸山 正樹

          【エッセイ】僕たちのマッスル

          挨拶 読者諸賢、ご機嫌はいかがだろう。日本列島は陽気が栄えてきたな。恐らく諸君は、冬との別れを惜しみ、こたつやベッドの中で未だぬくぬくとくるまっているのだろう。悲しいかな。そんな猫のような愚者は犬も食わない。  私はというと、諸君らとは違い、筋肉の鍛錬により溢れ出るエネルギーで、毎日毎晩と己を温めている。漏れ出したエネルギーが、汗となって、私の額で輝く。望むのであれば、余剰分の熱で諸君を温めてやることもできる。寒い日が続いた分、私が温まる日々を創生してやろう。我流の三寒四温

          【エッセイ】僕たちのマッスル

          【エッセイ】そして均衡は保たれる(1/3)

           久方ぶりの文筆活動になる。諸君はご清祥極まりなく過ごしていることだろう。  私か? 私はというと、相も変わらず詭弁と駄弁をこねくり回し、のべつ幕なしに売り言葉を買い続け、断腸の思いで罵声を被り続けている。それら全てを脳内で黄色い声援へと変換し、架空の大歓声を浴びる私は、今日も身勝手な荒唐無稽を、立て板に水の如く嘯く。女三人寄れば姦しいが、私一人いれば近所迷惑。わが人生に一片の有益無し。それでもここから、あふれ出る文才で狂瀾を既倒に廻らそうではないか。何だ? 詩を作るより田を

          【エッセイ】そして均衡は保たれる(1/3)

          【読書感想文】ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔

          あらすじ長女は大概上手く行きません。 ソフィーは3姉妹の一番上でした。 彼女は素直で良い子でしたが、 意思のはっきりしている次女のレティー、 美人で才能のある三女マーサと違い、 人生に消極的です。 変化に対しては言い訳で拒み、 行動に対しても、 口実を使い果たしてから出ないと、 初めの一歩は出ませんでした。 ソフィーが学校を出る年に父親が急死し、 残された3姉妹は、 それぞれ離れて暮らすことになりました。 レティーはパン屋〈チェザーリ〉で奉公。 マーサは魔女の元で見習

          【読書感想文】ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔

          【読書感想文】LEARN LIKE A PRO 学び方の学び方 著:バーバラ・オークレー、オラフ・シーヴェ 訳:宮本 喜一

          始めに 読者諸君、ご機嫌よう。諸君らは日々学習しているだろうか。勉強は学生まで、と取るに足らない人間が嘯いた言葉を信用してはならない。勉強とは一生を掛けて付き合うものである。人は学び、考えを巡らせ、日進月歩の気概を常に持たねばならぬ。  斯く言う私は、暑さに負けて家で寝ているだけの日々である。非難は受け付けない。頭で分かっていても体は動かないのが人間の真理であろう。  恐らく、愚かにも楽な方へ逃げようとする私のような人間は多いはずだ。しからば、勉強をするための仕組み作りが必

          【読書感想文】LEARN LIKE A PRO 学び方の学び方 著:バーバラ・オークレー、オラフ・シーヴェ 訳:宮本 喜一

          【読書感想文】赤と青とエスキース 著:青山 美智子

          始めに 絵には文脈がある。画家の人生や、完成までの意匠惨憺。また、当時の時代背景。そして、今ある場所に辿り着くまでの歴史。それらを全て含みつつ、色と個性で表現されるものが絵画である。恐らく……。今回紹介する小説から感じ取ったままを述べてみた。あまり気にしないでくれ。   描くことは容易では無い。自分の色で自分の想いを表現することがいかに難しいか。世に惑わされず、心の底から欲しいと思える豊かさを創り出すことに、どれほど忍耐と精進が必要か。読者諸君も想像に難くないだろう。  

          【読書感想文】赤と青とエスキース 著:青山 美智子

          【読書感想文】ドミノ 著:恩田陸

          始めに  人間が多いのは嫌いである。密集する満員電車も、人口過多の夏フェスも、出来るならば避けて生きたい。  第一に考えてみたまえ。人が多い状態にはデメリットが多すぎるのだ。関係性の無い他人ならまだマシである。邪魔なだけだ。  一方で、関係性のある人間が集まれば、この薄汚い顔で八方美人をしなければならない。気を遣った挙げ句、煮え湯を飲まされる危険と戦いながら。誰かが成功すれば、唇を噛みしめて拍手を送り、自分が上手くいけば、後ろ指を指される。そんな妬み嫉みと向き合いながら。と

          【読書感想文】ドミノ 著:恩田陸

          【エッセイ】語るには値しない

           読者諸君、ご機嫌よう。猛暑の候、咲き乱れる日傘と一向に途絶えぬ蝉の声に暑さはますます増幅するが、それでもご健勝である事を願う。  私に関しては、暑さに負けぬ強靱な体を持つため、問題はない。熱中症の心配などおくびにも出さず日に当たる。四畳半の自室も、窓を開け、扇風機を浴び続ければ、冷房は要らない。ところで最近、どうしてか寝苦しかったために一度冷房を使ってみたが、ぐっすり睡眠が出来るだけであった。やはり文明の利器は要らぬ。人類はもっと原始へ戻るべきだろう。日進月歩の人間世界に

          【エッセイ】語るには値しない

          【エッセイ】高嶺の花が、心の側でそっと笑う

           我が平生に絶世の美女がいる。凜とした佇まいで淑やかに咲き、至福の言葉と可憐な笑顔で、衆生をぱっと明るくする。誰もが思い描く理想の美人像。そこに最も近い女性が、今、私の目前で笑う。  読者諸君、ご機嫌いかがだろうか。らしくもない始め方をしてしまった。美人は三日で飽きるという欺瞞を一笑に付し、365日の美人凝視を続けた私である。感傷に浸ったキザな文章を書くのも詮方ない。  我が職場には、圧倒的才色兼備を誇る一人の女性がいる。彼女があまり美しいばかりに、この世の森羅万象は彼女以

          【エッセイ】高嶺の花が、心の側でそっと笑う

          【エッセイ】快晴の下、浜でカメラ投げたい

          前編は以下である。 中編は以下である。 ───それでは始めよう。    海水浴場とは縁が遠い。上から照りつける日の光、砂浜に反射して下から焼き付ける日の光。無慈悲に包み込んでくる自然の眩しさに、体は焦げて仕方ない。それだけでも重傷に近い。だがさらに、海水浴場で遊ぶ人間の眩しさがあまりに体へ馴染まない。一生を喜色満面で過ごし続けているかのような神々しいまでのあの雰囲気は、一体全体どんな人生を送れば醸し出せるようになるのだろうか。  禍福は糾える縄の如し。しかし、一向に禍

          【エッセイ】快晴の下、浜でカメラ投げたい

          【エッセイ】身を挺して歴史学習

          前編はこちら  可愛い子には旅をさせよ。危険を伴う冒険と引き換えに、大いなる成長を手に入れるべきだ。薄汚い大人にも旅をさせよ。煤けて黒くなった心を浄化するのだ。しかし、薄汚い我々の旅は、苦行を含む自己研鑽の道ではない。平易どころか利便性に充ちた快適な旅である。豊かな自然と観光地に恵まれた四国を、レンタカーで放蕩不羈に巡るのだ。可愛い子の方がよっぽど殊勝だろう。私は恥じるべき自己を背負って四国を旅する。  四国にて幾つもの神社を訪れたことは、非常に思い出深い。そこでは、精神

          【エッセイ】身を挺して歴史学習

          【エッセイ】想定外とシニカルフレンド

           読者諸君、ご機嫌よう。世はゴールデンウィークに突入し、愉快な諸君はさぞ浮き足立っていることだろう。昨今は旅の需要も戻っていると聞く。浮いた足で全国各地へ飛ぶといい。津々浦々で舞い上がる諸君を下から眺めるのも、また一興と言えよう。  斯く言う私は、四国をふわふわと歩き回ってきた。地中海がもたらす海の幸、霊験灼かな神社、涼しげな落ち着きを与える自然、甘味引き立つ抹茶大福、路地裏で食べるカルボナーラ等、素晴らしき3日間であった。  やはりご飯の思い出が多い。成人男性の6割ぐらい

          【エッセイ】想定外とシニカルフレンド