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【感想】「無敵の人」になりかけた私を人の世に留めたラブコメ「あらくれお嬢様はもんもんしている」【ネタバレ含】


こんな鬱期にラブコメかよ

死ぬか家出するか、本気で考えた日

 私は昨日、会社を辞めた。最後までパワーハラスメントの加害者張本人は出てこなかったし、それについての謝罪も曖昧で、さらには結局自己都合退職にされた。
 私はネット上でははた迷惑な横暴なクソ野郎だろう。それでも現実では、出来るだけ卑屈になって、自分に出来る事ならなんでも、愛嬌を持って臨みます!と言わんばかりの貢献を自分はした、と思っている。無茶にも答えた。本来予定に入っていない早出残業もした。上司のヒステリーや嫌味、無視にも耐えた。それでもその最後
「最後に私の職場を見せてください。誰か、誰でもいいから私のことを覚えてくれている人と話をさせてください」
 と頼んでも、それはだめだの一点張りだった。私が頭がおかしくて、精神障害者で、インフルエンサー曰く「死んだ方が世のためだ」から。退職は結局受理されたので退職エントリは別に書くつもりだが。

 帰り道に本屋に寄った時、かつて自分を真っ向から「気に食わなかった」「嫌いだった」と言った「とある集団」の方の作品を目にした。その瞬間から私はばらばらに壊れてしまった。
 人が見ている前で涙が止まらなくなった。私は半年間何をしてきたのだろう。何も生み出さなかった。全て失ってしまった。悪名を負ってしまった。自分を毀損してしまった。人々を傷つけてしまった。私には何もない。もう何もないんだ。その日私は「52ヘルツのクジラたち」のアンさんみたいに、浴槽の中で死にたかった。案外あんな時だけ血は出ないもので、うんともすんとも言わず私は悔しくて悔しくて、ただ家に届いた推しのタオルにくるまって寝ることしかできなかった。推しの故郷の足摺岬から補陀落渡海するのも悪くはない、と狂ったことを考えた。

通称「あらもん」の私の中での変化

 翌朝、本日東京発売のコミックスの中に「あらくれお嬢様はもんもんしている」(通称「あらもん」)を発見する。正直コミックDAYSなどで追っていたのである程度の流れは知っていたのだが、今回の巻は何としてでも手元に置いておきたかった。何せ、槍野さんの人間分析(行動分析?)が参考になるのだ。
 (槍野さんについては未出だが、現在1巻がブラウザで無料で読めるようになっているので、ざっとした人間関係や話のノリを知りたければ是非)


 それがなくとも、連載当初から読んでいた身としてはリアルタイムで読んだときガチ泣きしてしまったのでどうしても永久保存版として手元に残しておきたかった。もう結婚式のメモリアルカードレベルだ。私の中で主人公の椿お嬢様とそのお相手の起立くんが結婚することは確定的に確定(?)で絶対に変えられない未来なのだが、その証明としてこの巻をかならず手に入れなくてはならぬ!と奮起したが悲しいかな、西日本の田舎は紙ものの入荷は未定である。しかも店による。私は午前4時に泣き腫らした目でkindleにて購入した。

 私の性分をご存じの方々なら

「また落ち込んでる時にラブコメセルフ追い打ちして大暴れしたんやろ。メンヘラ乙。かまちょ乙」
「もしかしてキチってます?死にますか?入院しますか?」

 と思っているところであると思う。しかし私は、しみじみ無傷で、しんしんと読めた。
 槍野さんの
「人の事利用しないで。本当にあいつ(起立)のこと好きな奴が出てきたときどうするの」
 と言った趣旨の発言に、人間を盾にしようとする自分の弱さを顧みる。そしてそこから素直に謝罪できる椿お嬢様に感服する。その謝罪もたどたどしいが、彼女なりの言葉の構成で、ちゃんと成り立っていて、「対話」になっていた。「あらもん」は最初確かに「ちょっとエッチなツンギレお嬢様のラブコメ」であった。

 だが今巻は紛れもなく「対話」と「相互理解」と「自己深化(理解)」の物語だったように思う。

個人差はあるがこの物語は「生」の熱量を持つ

切実な叫びと息を呑む瞬間と、そして先を知っても尚

 それは椿に限ったことではなく、起立の側も彼女の演劇の演目の様子を見て激情に駆られる描写が胸に迫った。そうだ君が彼女を一番知ってるんだ。その意味に早く気付くんだよ!

 情緒不安定もあるだろうが、私も何故か泣いていた。そして椿お嬢様の決断と、起立への告白。通常、個人的には頭を空っぽにしたラブコメなら告白シーンだとドラムロールだの在りし日の東京フレンドパークのパジェロコールが脳内に入るところであるが、今回ばかりはページ配置の妙技もあり息を呑んで聞き入って(読んで)しまった。そして

「ずっと…起立くんが 好きだったから……」

『あらくれお嬢様はもんもんしている』5巻139-140p

 このページを見た瞬間、
「紙媒体でも買わねば」
 と思った。理由はページを実際に読んでいただければわかると思う。紙媒体で読める方々は幸福である。まさに紙面全体を扱った妙技、最初の第一話から読んでいたファンとしては、どれほど待ちわびた瞬間だろう。私もリアルタイム配信の時
「この時が来たか……」
 と裁きの時を待つ気持ちであった。真面目な人間に対し「好悪」を問うたならばどちらか必ず返答されるに決まっている。椿が逃げ出したのもわかる。聞きたくない。言い逃げだと言われても。耐えられないだろう。いいんだよ、それが人間なんだよ。私は読み直して尚、鼻を鳴らして涙目になっていた。たとえその先を知っていても。

 そして、夕日を背負った起立匡史の仁王立ちの返答。今読んでも洋画のガヤのような「Oh~~~……!!」という変な声が出てしまう。どれほど言葉を尽くしても、単刀直入な言葉には勝てない。理屈だのなんだのではない。そう、愛欲だのは制御が効くかもしれないが、「人が好き」と言う気持ちに対して、理屈、否、屁理屈はあまりにも無力だ。

「君が大嫌いではなくて 大好きなんだッ」

『あらくれお嬢様はもんもんしている』5巻144p

 それでいい。それでいいんだ……!(推しのタオルで顔をぬぐいながら)

私教免持ってるけど不純じゃないと思う!最後まで責任もって監督します!

 もうこんなもん不純異性交遊でもなんでもないだろ!!不純だと言ってくる奴がいるなら私が不純の定義をありとあらゆる辞書で検索して喧嘩してやる!!私が体を張ってこのカップルを守る!!結婚するまで見守るぞ!夫婦になるまで見守るからな!!と一瞬で走馬灯のように今までの読者側としてのもんもんが炸裂して、一気に過保護ストーカーになってしまった。気が付いたら昨日までの鬱も「死にたい」と言う気持ちも薄まっていたし、今の気持ちを一言で言うなら

「これからも話は続くそうですけど木下先生!!どうか椿様と起立くんをラブラブに添い遂げさせてあげてください!!連載当初からずーっと祈っています!!よろしくお願いします!!(土下座)」

 全然一言じゃないですね。「あらもん」は私にとって「読む抗うつ剤」であり「命綱」のひとつなのでした。

 とにかく皆さん、今回の巻は単なるリア充爆発回ではなく葛藤に葛藤を重ねやっと言葉が結びついた高校生カップルの初々しい物語です!よろしくお願いします!



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