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香るしあわせ

わたしは、紅茶味のスイーツが大好きだ。

紅茶の茶葉が生地に混ぜこまれたクッキーやパウンドケーキ、紅茶味のクリームの乗ったケーキ、紅茶味のアイスクリーム……。

もちろん、飲み物としての紅茶も好きだけれど、それがスイーツだともっとテンションが上がる。

思い返せば、わたしの紅茶愛は、託児所に預けられていた幼少期にまで遡る。

当時、託児所で毎日設けられていた「お昼寝の時間」。年少の子ども達は必ず寝なければいけなかったけれど、比較的年長の子ども達は、寝ずに先生たちの手伝いをしたり、静かにお話しをしたりして起きていることが許されていた。

わたしは託児所の子ども達の中では年長の方だった。小さな子たちが眠っている間、大人と一緒に起きていられるのがなんだか特別なことに思えて、嬉しかったのを覚えている。

そんな「お昼寝タイム」に、年長の子ども達だけにこっそり先生が飲み物を出してくれることがあった。

そのとき初めて飲んだ、ほんのり甘いアップルティーの美味しさに、わたしは感動したのだ。
先生たちと一緒に飲める特別感も相まって、わたしにとっては忘れられない味になった。

家では、父も母も紅茶を嗜むような人ではなかったから、突然「アップルティー」やら「レモンティー」やらに興味を示しはじめたわたしを、両親は不思議に思ったに違いない。あの頃はまだ、砂糖のたっぷり入ったジュースのような紅茶しか飲めなかったけれど、それからわたしは家族の中で唯一の「紅茶党」になったのだ。

どうして突然こんなことを思い出したのかというと、先日、友人と行ったカフェで食べた「紅茶のシフォンケーキ」がとても美味しかったからだ。

ふわふわで、しっとりしていて、紅茶の香りがふんわり広がって、一口食べただけでわたしを幸せな気持ちにしてくれた。

紅茶って、たくさん種類があるけれど、どんな種類であってもわたしにとっては「幸せの味」だ。

社会人になってから、色んな種類の紅茶をかわりばんこに買って飲み比べ、自分がいちばん好きな紅茶はどれなんだろうと探してみたのだけれど、どうやらわたしはアールグレイがいちばん好きだ。

どこがどういうふうに好き、と説明するのは難しい。よく分からないけれど、アールグレイの香りを嗅ぐと自然と顔が綻ぶのだ。たぶん、高校時代によく食べていた紅茶クッキーと同じ味がするとか、ミルクとよく合うからミルクティーにするとものすごく美味しいとか、そういう個人的で単純な理由だろう。

だから、紅茶の種類をネットで調べたときに出てくるような、専門的な解説なんかできない。ただ、とにかく「わたしの好みに合う」のだ。

なんとなくだけれど、スイーツに使われる紅茶はアールグレイが多いような気がする。それだけスイーツによく合う紅茶なのだろう。

これからも、カフェ、レストラン、スーパーのお菓子コーナー……あらゆる場所で、「紅茶」や「アールグレイ」の文字を見つけたら、わたしはきっと手に取ってしまう。

上品でいてどこか素朴な優しさのある、不思議と懐かしさをも感じさせるアールグレイのスイーツが、わたしは大好きだ。



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