ネタ選択問題とその対策 / Evernoteの何がよかったのか / 第二回環読プロジェクトのお誘い
はじめに
ポッドキャスト、配信されております。
◇BC081 | by goryugo | ブックカタリスト
◇第百四十五回:Tak.さんとScrivenerについて 作成者:うちあわせCast
ブックカタリストでは、ごりゅごさんが『ピダハン』と『ムラブリ』という二つの本から、日本や西洋とは大きく異なる文化が持つ視点を紹介してくださりました。少し誇張して言えば、「意識のかたち」がこうした文化によって違っているのでしょう。だからこそ、私たちは互いの文化を尊重する必要があるのだとも思います。
うちあわせCastでは、Scrivenerという執筆ツールのお話をしました。一時期の私は「本の原稿」をだいたいこのScrivenerで作っていたのですが、VS Codeを使うようになり、またPythonなどのプログラミング言語でテキストデータからPDFやEPUBファイルを自分で作れるようになってから、とんと使わなくなっていました。
しかし、──今年のテーマは「行きつ戻りつしてみる」でもあるので──ひさかたぶりに立ち上げて使ってみると、独特の使い心地があることを再確認した次第です。
これからは、もう少しだけScrivenerの「関与」を増やしていこうかと考えています。
〜〜〜ノートの罠〜〜〜
脱Evernote計画の一環として、UpNoteをお試し的に運用しています。
◇Best Notes App - Write and Organize with UpNote
基本的には「ライト版のEvernote」という感じで小気味よく使っていけます。Webクリッパー用のブラウザ拡張も準備されているので、ばんばんWebページも取り込んでいけるのですが、それをやりすぎると"かつてのEvernote"と同じ失敗を繰り返すことになるので、今は慎重にクリップをしています。
で、EvernoteにはなかったけどもUpNoteにはある機能の一つに「クオート」があります。Quote、つまり引用ですね。
Evernoteは、H2やらcode blockやらの記法は存在しているのに、なぜか引用記法がありませんでした。Evernoteの開発者さんは文献を引用するようなノートを作らないのでしょうか。実に不思議です。
しかし、UpNoteにはちゃんと引用記法があります。それを指定すると、引用っぽいスタイルに変更してくれます。
ということで、Evernoteで作っていた引用を集めたノートにちょこちょ引用記法を当てていき、ページ全体に適応が終わったら、実に「いい感じ」のノートができあがったのですが、よくよく考えてみると、これって何も「生産」していません。ただフォーマットを書き換えただけ。しかも、手動で。
同じ手動でも、ノートの中身を読み返してタイトルを書き換える、みたいな作業ならば知的生産的前進はあるでしょうが、今回私がやった作業は純然たるフォーマットの移し替えであり、端的に言えば事務作業よりも生産性は低いです。
でも、そうやってノートのフォーマットを整え終えると「ふ〜、やれやれ。一仕事したぞ!」という満足感に浸れてしまうのです。
この点を考慮すると、自分の満足感を(あるいはそれだけを)自分の仕事の指標にするのはマズイ、ということがわかりますね。皆さんも、ノートツールの移行時にはお気をつけください。
〜〜〜ロギング仕事術の「効能」が知りたい〜〜〜
著者自身が言うのもなんですが、「『ロギング仕事術』を読んで実際に試してみたら、こういう風にうまくいくようになりました」という話を聞くことが多々あります。
これまでの私の著作ではそこまで直接的な「効能」を聞くことがなかったので(ゼロではありませんが)、意外な感じもありますが、環境を問わずまず試せる敷き居の低さがこの「仕事術」にはある、ということなのでしょう。
で、今までは「そうか。何かしら役に立っているのか。それは良かった」と自分の心にしまって終わりにしていたのですが、ふと思いました。そういう「うまくいく方向にちょっと変わった」という話も、多くの人に知ってもらった方がいいのではないか、と。
なぜそういう発想が今まで浮かんでこなかったのかはわかりませんが、「こういうことをやるようになって、こういう変化があってよかった」という話は『ロギング仕事術』の良さを知ってもらうというプロモーション的効果とは別に(もちろんそれもありますが)、それぞれの人のミニマムな「仕事術」の紹介でもあるような気がするのです。
つまり「とっても良かったです。」という感想ではなく、具体的に何をして、どう変わったかという感想はちょっとした「現場レポート」であり、それ自身に情報的価値(≒他の人が読んで嬉しさ・楽しさ・面白さが得られる)が含まれているのではないか、と考えているわけです。
これまでそういう報告は、それぞれの人がブログやらnoteやらに「書評/読書感想文」の形で書いてもらえばいい、と消極的な態度でいたわけですが、その態度を少し変えた方がいいのかもしれない、という感触を(現時点では)持っています。
美容サプリの広告のように「これですごく痩せました」的なアピールをしたいのではなく、それぞれの人が仕事においてどんな問題を抱え、それをどう変えているのかという実践的報告の触媒として一冊の本が機能することもあるのではないか。そういうイメージが膨らんでいます。
皆さんはいかがでしょうか。『ロギング仕事術』をお読みになられた方で、実際に仕事の現場で「記録しながら仕事をする」をやってみて何か(良い方向に)変わった経験はお持ちでしょうか。もしあれば、倉下までお知らせいただければ幸いです。メール(tadanorik@gmail.com)でも、コメントでも、ハッシュタグつきツイートでも、以下のフォームからでも構いません。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdsZ1Ap_bIvNkMlRw2o7Tz7aGIMDSA1LSH6jHU8uP_eEQdz5Q/viewform
というわけで、メルマガ本編をスタートしましょう。今回はたくさんのネタをどう扱うのか、Evernoteの総括、そして第二回の環読プロジェクトのお誘いをお送りします。
ネタ選択問題とその対策
前回紹介したように、書くことの種(ネタ)は日常的にたくさん集まります。こうして毎週メルマガを配信していても、書くことがない状態にはなりません。
それはそれでハッピーなのですが、逆向きの問題が起きます。すなわち「こんなにいっぱい書くことがあるうち、一体どれを書こうか」と悩んでしまうのです。
そうした問題を、ここでは「ネタ選択問題」と呼んで、その対策について考えてみましょう。
■多すぎるのも問題
最初に告白しておくと、私はこの「ネタ選択問題」に明瞭な回答を持ち合わせていません。現在進行形で、この問題に取り組んでいるところです。それくらい切実な問題だとも言えるでしょう。
で、まず確認したいのが選択肢が多いことの問題です。この手の話でたびたび言及されるシーナ・アイエンガーの『選択の科学』で示されている通り、選択肢が多い方が好ましく思えるが、選択肢が増えすぎると人は逆に選択しなくなる(できなくなる)、という傾向があります。
◇選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫) | シーナ アイエンガー, 櫻井 祐子 |本 | 通販 | Amazon
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私がもし、「今週のメルマガで書きたいことが多すぎて、どれも選べない」となってしまったら、まさにそうした状況に陥っていると言えるでしょう。つまり「悩む」を通り越して、手が止まってしまうのです。
つまり、ネタがまったくないとそもそも書きようがありませんが、かといってネタが多すぎても書けないことが起こりうる。それを踏まえた上で、じゃあどうすればいいかを考えます。
■絞る
指針は明瞭です。
「選択肢が多すぎることで選べなくなるなら、選択肢を絞ればいい」
簡単ですね。
で、どのくらい絞ればいいかと言えば「選べるくらいまで」です。定量的・定性的というよりも、単に「その人が、それを実践できるかどうか」というプラグマズティックな視点を取ることが肝要です。
いくつか並んでいる項目があるとして、そこで何かを選べる状態になっているならばそれが好ましい状態であり、選べない状態ならば多すぎると判断して絞り込みをする。そういう方策で進めていきます。
その際に、暫定的に「項目を六個までにしておく」という水準を設けるのは構いませんが、その「六個」が適切かどうかは実践してみるまではわかりません。六個でも多すぎる場合もありますし、八個までいける場合もあります。そのあたりは、実践しながら確かめて、調整する必要があるでしょう。
■いかにして?
次に、「どうやって絞るのか?」です。ここではいくつかの方策が考えられます。
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