見出し画像

EvernoteのWebクリップ / 『考えの育て方』について / ただ頭を使うこと

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/11/06 第682号


はじめに

ポッドキャスト、配信されております。

◇第百三十八回:Tak.さんと『考えの育て方』について 作成者:うちあわせCast

今回は倉下の新刊のお話をしました。関連する話題は本号でも記事がありますので、よければご覧ください。

〜〜〜ノートで考える〜〜〜

ちょっとまとまった考え事をしたいなと思い、カフェに向かう途中のコンビニでKOKUYOのキャンパスノートと新しいペン(フリクション)を買い、カフェに入ってパソコンを開くことなくノートに考え事を書きつけはじめました。

ふと気がついたら、13枚ほどノートが埋まっていました。けっこうな分量です。

その間いっさいタイムラインを見ることもなく、何かのニュースに触れることもありませんでした。実に集中した時間です。

というか、そうしてノートを書きながら新しく"開発"した記法をScrapboxにでも書き留めておこうとパソコンを開いた瞬間に、明らかに自分の注意が乱れはじめていることを感じ、そこから遡及的に「さっきは集中できていたな」と理解した次第です。

注意をかき乱すものが無いときは、「注意をかき乱すものがない」ということにすら注意が向きません。対象と自分がシームレスに向き合っているような感覚です。対象以外のことに気がつかない状態なのです。

逆に、注意が散り散りになっているときも、「自分の注意が散り散りになっている」ことに注意が向きません。それ以外に注意を惹きつけるものがたくさんあるからです。

つまり、注意の状態を発見するには、ある状態から別の状態へと移行するタイミングが必要なのでしょう。移動するそのタイミングにだけ発見できることがある。そんな風にも言えそうです。

なんにせよ、ノートで考え事をするのはオススメです。普段パソコンしか使っていない方も、A5かB5くらいのノートを買って、一心不乱に書きつけてみると、それだけですっきりしてくるかもしれません。

〜〜〜長い旅路〜〜〜

2008年頃からEvernoteを使いはじめて、15年ほどの年月が経ったことになります。そして、今ようやくEvernoteと仲良く付き合えている気がします。ここまでの旅路は長いものでした。

Evernoteを知的生産ツールとして使うことを始め、その後Workflowyが仲間に加わりました。この二つは今でも続いている古巣のライフハックツールです。そこにScrapboxが編成されて、性質の異なるツールセットが揃いはじめました。

そのScrapbboxは明確な哲学に基づいて作られています。単に便利そうな機能を追加していくのではなく、ユーザーにとって何が必要で、どうあれば便利なのかが真剣に検討されているのです。

そのツール哲学に触れたことで、「デジタルで情報を扱うとはどういうことか」を根本的なレベルで考え直すことができました。それまでの「アナログツールのデジタル版」のような雑な理解ではなく、「デジタルならでは」の考え方に手を伸ばすことができたのです。

そうした理解が固まることで、まずScrapboxと仲良くなれました。今でも日常的に使い続けており、ページの総数は5600を超えています。欠かせないツールの筆頭です。

それだけではありません。「デジタルツール」の理解が進んだことで、Workflowyもそれまでと違った使い方ができるようになりました。少し前のDoMAにせよ、最近のincシステムにせよ、既存の「整理」の考えに囚われていたのではまず実現できなかったやり方だと思います。

同様に、最近紹介しているようにEvernoteの使い方も変化しています。昔の私の使い方は、今現在Notionが目指しているようながっちりとした体系を作って情報を整理するやり方だったのですが、今の私はもっとざっくりと、もっとラフに情報を取り扱うようになっています。

もちろん、単に乱雑に使うようになったわけではありません。整理の整合性に向ける注意を減らし、書き留めた情報そのものに向ける注意を増やすようになったのです。つまり、本当の意味で「知的生産」的なことに注力できるようになったと言えます。

この長い旅路の話もどこかでまとめてみたいものですが、とりあえずはWorkflowyとEvernoteの新しいシステムについて"断片"的に書いてみたいと思います。

〜〜〜本屋遠征〜〜〜

先日、イベント絡みで恵文社一乗寺店に行きました。

◇恵文社一乗寺店 オンラインショップ

雑なカテゴライズで言えば「セレクトショップ」であり、本だけでなく雑貨や文房具も並んでいて、ギャラリーやイベントスペースも併設されている"ザ・カルチャー"という感じのお店です。今回はじめて訪問したのですが、非常に居心地がよいお店でした。

こういう「棚で魅せる」タイプの書店は、一度入ったらそれこそ1時間でも2時間でも本棚を眺めてみたくなる魅力があります。本のラインナップだけでなく、どこにどんな本が並んでいるのかも楽しめるので、店内の隅々を探索したくなってくるのです。

一方で、そうして隅々まで探索したら、次の日にもう一度行こうとはなかなかならないでしょう。その意味で、一ヶ月とか二ヶ月ごとに訪れて楽しめるタイプの書店だと思います。今回のように「遠征」していくお店、というイメージ。

おそらくですが、同じ「書店」といっても既存の新刊書店とはまったく違う力学が働いているのでしょう。単に規模が小さいという話ではなく、「ビジネス」そのものの在り方が違っている。そんな印象を受けました。

書店の存続が危惧されて久しいですが、これまでとは違うオルタナティブな書店の在り方がもしありえるなら、それはそれで素晴らしいことだと思います。もちろん、それはお店に訪れて本を買うお客さんがいてこそ、という点はどうしても変わらないわけですが。

皆さんはどうでしょうか。「ひいき」にしている書店はあるでしょうか。そのお店は、他とは違うどんな魅力を持っているのでしょうか。よろしければ倉下に教えてください。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今回は、Evernote話と新刊についてのお話、そしてミステリ小説を読んだのお話をお送りします。

EvernoteのWebクリップ

時代がタイムスリップしているかのような話題ですが、今回はEvernoteのWebクリップについて書いてみます。

■Webクリップの復活

前々回で紹介したように、現状の私のEvernoteはDBCAスタイルで運用しています。で、ある程度Evernoteを触るようになると、やはりWebクリップ欲が出てきます。読んだ記事を保存しておきたい。そういう欲です。

しかし、一時期の私は読み終えたWebページだけでなく、これから読もうと思っているWebページもやたらめったらクリップしたことで、Evernoteをゴミ箱化させてしまいました。それと同じ過ちは繰り返さないように、Evernoteの新アカウントを作ってからは、Webクリップは慎重になっていました。

とは言え、現状はブログ記事を読む絶対量そのものが減っています。ごく普通に、注意して使っていけば、そこまでゴミ箱化の心配はないのではないか。そんなことを思いはじめてもいました。

いわゆる「ほとぼりが冷めた」というやつですが、何となく気分的にイケル感が出てきていたのは確かです。

そこで、超久々に読んだ記事をWebブラウザの拡張機能を使ってクリップしてみることにしました。対象は、以下の記事です。

◇軽出版者宣言 « マガジン航[kɔː]

Webブラウザで上記の記事を表示させた状態でWebクリッパーのボタンを押すと、取り込むスタイルの選択画面が表示されます。

さて、ここからが問題です。

■ノートブックの選択

まず保存されるノートブックを選択する必要があります。

私のノートブックスタイル(DBCA)において、現状Webクリップ的なものは「Card」に置かれます。だったら、最初からCardに保存した方がラクチンでしょう。でも、そのやり方はあまり筋が良くない印象がありました。

そこで、デフォルトノートブックである「Diary」にとりあず保存することにしました。最終的にそれはCardに移されるでしょうが、その前に一旦Diaryに置いておくのです。

置いておくとどうなるか?

まず間違いなく、それ以降の「自分」の目に触れることになります。なにせ普段はずっと「Diary」ノートブックを開いているのですから。でもって、そのノートブックには日付絡みのノートしか存在していません。そこにWebクリップのノートが混ざっていれば、強烈な違和感を生むでしょう。その違和感を、一つの駆動力として活かそうと考えたのです。

違和感があれば、その感覚を消したくなります。この場合は、そこに並んでいるノートを適切に「処理」することが行われるでしょう。

逆に、直接「Card」ノートブックに入れてしまえばどうなるでしょうか。そのままスムーズにノートブックに入り込み、何の違和感もなく並んでしまうでしょう。こうなると「処理」は行われません。

ここで、数々の悪戦苦闘をくぐり抜けて得た教訓を示しておきます。

「処理を手抜きして楽をすると、知的生産的には何も生まれない」

この教訓を念頭に置き、以降の処理が起きやすいように、一旦違和感のある「Diary」ノートブックに置いておく方針を選んだわけです。

ここから先は

8,624字 / 3画像 / 1ファイル

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?