『思考のエンジン』第六章「コンピュータ上のソクラテス」のまとめ
『思考のエンジン』第六章のまとめです。
この章には何が書かれているのか?
『ペイパー・チェイス』という映画での授業風景を引き合いにし、ソクラテス・メソッドが紹介される。教師と生徒が問答を繰り返すことで、そこに論理的な形式を見出していくという姿勢。そこで獲得される論理は、あらかじめ想定される論理を押し嵌めたもの(静的なもの)ではなく、議論を通して見出された論理(動的なもの)であり、ダイナミズムがある。
そのような獲得のスタイルを支援してくれるツールとして、「ソウトライン」(Thoughtline)が紹介される。このツールは"人工知能"的な働きをし、こちらがなにか考えたいこと・まとめたいことがあると、それに関しての「議論」を開始してくれる。
とは言え、現在の生成AIのような流暢な会話ができるわけではない。むしろこちらが使うための「姿勢」を保持していないとろくに議論が成り立たない。利用者のマインドセットに、「論理」があることが必要なのだろう。
それでも、ソウトラインと議論を行っていると、背景で「論理構造」が整理され、最終的に以下のようなポイントで会話内容をまとめてくれる。人間はそれを参考にしつつ、「よしやるか」と仕事を開始できる。
Overview
何を話すのかを提示する
Audiences
聞き手にどのように話を聞くのかのコンセンサスを作ってもらう
Goals
議論の目的を提示する
Background
そのために必要な知識を与える
Personal-interest
議論の始める火口を切る
Thesis
議論で展開される(証明される)仮説を述べる
Keypoints
証拠を示していく
Audience-interest
もう一度聴きてのコンセンサスを作るために仮説の成立する背景を証明する
keypoint n(1,2,3,……)
証拠を挙げていく
support n(1,2,3,……)
Bottomline
結論を述べる
Brainstorms
Research
Other-uses
重要な点は、利用者がソウトラインを使うときに、あらかじめこうした項目に沿って話をする必要がない、という点だ。むしろ、思いつくままに(あるいは連想に引っ張られながら)自分の考えをテキストにして入力していけばいい。
そうした散発的な入力をした後に、こうしてまとまった論理として提出される。この順番が保持されることがソウトラインの魅力だろうし、生成AIもこうした使い方を意識すれば、「議論相手」として十分に役立つようには思う。
なんにせよ、ポイントは思っていることを一気に書き出せば生成AIがなんとかしてくれる、というようなワンストップ・シンキングではない、ということだ。
むしろ応答を通す中で、時間をかけて自分の考えを「他の誰かに」に説明しようとすること。『ロギング仕事術』ではイマジナリー・パートナーという言い方をしたが、そうした語りかけの中で、ある種のディスコースが育まれていくという過程そのものが重要なのだろう。
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