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ライフハックがもたらしたもの

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/07/03 第664号

はじめに

前々からまとめようと思っていたことを記事に書きました。

これからネットに文章をアップしていく人のための5つの方法

なんというのでしょうか。ライフハックに興味を持っている人なら今さらすぎて話題に上げるまでもない内容でしょう。最新情報をフォローアップしているわけでもありません。でも、「これから」の人にとっては大切な内容だとも思います。

以前から思っていたのです。「ブログなどで自分の文章を書く人が増えたらいいな」などと願いながら、そのための方法をまったく紹介していなかったな、と。さすがにそれは怠惰でしょう。

先に先に行くことばかりに注力し、後から来る人の手助けができていないとしたら、"界隈"が育つはずもありません。

今後も少しずつ「当たり前」のことを書いていこうと考えています。

〜〜〜記事一覧〜〜〜

noteで発行しているWRMの記事リストをページにまとめてみました。

◇wrm_note | R-style

我ながら、なかなか壮観なページとなりました。

noteのUIでは、全体が一気に表示されずに、部分的に追加で読み込まれていく形になっています。それだと、どうしても始めの方の記事が目に入りにくくなります。それがちょっともったいないと感じていました。

最近このメルマガを知ってくれた方に「こういう記事もありますよ」とお知らせしたい気持ちもありますし、そもそも自分が何を書いてきたのかを自分でも忘れているのでそれを思い出す助けにしたい気持ちもあります。このページはその問題を一挙に解決してくれます。

それにしても、少し前までは「ダッシュボード」的な総合的なビューを好んで求めていましたが、最近はこういう「全体像」ビューが好きです。人間の好みも、こんな風に時間と共に変わっていくものですね。

ちなみに、最初の方の記事のタイトルが「Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/12/17 第427号 」みたいになっていて、これだけではぜんぜん中身がわかりません。全体像ビューにおけるタイトルの重要性がよくわかります。

〜〜〜リスト+ノート〜〜〜

新しいタスク管理ツールを見かけました。

◇Superlist

現在はまだ private beta 版ですが、少し面白い機能を持っているようです。簡単に言うと、単純なタスクリストだけでなく、「ノート」が書ける機能です。

大きなプロジェクトにおいてはアクションのリストだけでは足りないので、いろいろな情報をノートとして追加できたら便利だよね、というコンセプト。

ですよね〜。

この問題は、以前から何度も指摘してきました。リストだけではやっぱり限界があるのです。

メモやノートを書く場所があった方がよく、だからテキストエディタやアウトライナーのような汎用ツールが便利ですよ、という話になるのですが、こうやってリスト型のタスク管理ツールにノート機能が付与されると、ほとんどデジタルノートツールとかわりなくなってきます。境界線があやふやになる感じです。

もちろん、タスク管理ツールにノート機能がついているのと、デジタルノートツールにタスク機能がついているのはまったく同じではありません。少なくとも使い勝手は大幅に違うでしょう。

が、それはそれとして「結局のところ、似たところに落ち着くよな」というのは面白い現象だと思います。

〜〜〜自分でやる〜〜〜

すごく単純な話なのですが、自分で効率化するのは好まれても、誰かに効率化させられるのは嫌われます。

前回書いたように、効率化は創造的な営みでありエージェンシーが刺激されます。一方で「このやり方に従ってください。それで効率になります」という形で促される効率化はぜんぜん創造的ではありませんし、エージェンシーはむしろ抑制されてしまいます。反発心を抱く人が出てくるのはごくナチュラルな帰結です。

「人に何かを押しつけて、やる気を期待するのは賢明とは言えない」

ただそれだけの話です。しかし「効率を得ることは善である」みたいな価値観で視野が狭まっていると、そうした単純な話すら忘れられてしまいます。

目の前にいるのは人間である、ということを忘れないようにすること。ロボットでもないし神様でもない。生物として心と意志を持っている人間なのだと忘れないようにすること。

それを前提にできれば──問題がなくなることはないにせよ──、ある程度の円滑さは得られるようになるでしょう。

〜〜〜平行のプロジェクトと垂直のプロジェクト〜〜〜

同時期にたくさんのプロジェクトにコミットしていると、並行して実行することになります。横に並べるイメージなので平行的な進行と言えるでしょう。

もしうまく平行に並べられるなら、それは順調に進むはずです。Aをやって、次にBをやって、最後にCをやる。でもって、Aに戻ってくる。その繰り替えしで、全体が前に進んでいきます。

しかし、頭ではそのように考えていても実際にはうまくいかない場合があります。Aに取り掛かって時間がきたからBに移ったけどもまだ頭の中ではAのことを考えていて、そのおかげでBもうまく進まず、Cに移ったらAだけでなくBのことも頭の中に居座っている。そういう状態になるのです。

これは平行ではなく、垂直にプロジェクトを積み上げていると言えるでしょう。

でもって、そんなことをしていたらどこかで破綻がやってきます。これはもう間違いなくやってきます。バランスよく積み上げられる個数には限界があるのです。

よって理想的には、一つの作業を終えるたびにその作業についてはいったん完全に忘れてしまうことです。それができるなら平行にプロジェクトを並べていけます。

もしそれが難しいなら、頭を使うことを要求するプロジェクトへのコミットは最小限にすることです。生物的限界を突破しようとするよりは、はるかに現実的な対策でしょう。

そうはいっても、なかなか思い通りに行かないのが現実です。そういう局面では「いかに忘れるか」が重要になってくるのでしょう。

さて、皆さんはいかがでしょうか。並行してプロジェクトを進めるのは得意ですか。その際に何か気をつけている点はありますでしょうか。よろしければ倉下までお寄せください。

ではメルマガ本編をスタートしましょう。今回は「ライフハック」についての大きなエッセイを一つお送りします。

ライフハックがもたらしたもの

かつてのライフハックは、私たちに何をもたらしたのか。

今回はこの問題を検討したい。

難しいテーマかもしれない。少なくともすぐに答えが出るものではないだろう。しかし、ライフハックという言葉自体が人生を対象としているがゆえに含意が広く、さらに一時期のブームも相まってその意味はひどく拡散してしまっている。今さらこの言葉を精緻に定義してもさして意味はないだろう。

しかし、私たちがライフハックから一体何を受け取ってきたのかという話ならば、そこには一つのストーリーが紡げるはずだ。そのストーリーは、拡散したライフハックという言葉に内包されながらも、"正しい定義"とは別の領域で存在できるものになるだろう。

合わせて思うのだが、この分野では「新しいテクノロジーやツールはどんな未来をもたらすのか」という未来予測の話に比重が置かれすぎて、そのテクノロジーやツールが一体何をもたらしたのかという総括が不足している気がする。考古学までいく必要はないが、それでもひとりの人生に何をもたらしたのかに目を向けるのはきっと有効だろう。

ちなみにウィキペディアを引けば、ライフハックは"情報処理業界を中心とした「仕事術」のことで、いかに作業を簡便かつ効率良く行うかを主眼としたテクニック群"とある。包括的なまとめとしては正しいと言えるが、私の実感にはそぐわない。

だから実感からはじめよう。

私たちにとって、ライフハックとは何だったのか。

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