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ナレッジベースの整備 / 管理すること、されること / 最近のエディタ状況 / タスク管理を再定義する

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/05/08 第656号

はじめに

ポッドキャスト、配信されております。

◇第百二十六回:Tak.さんとアウトライナーの用途について 作成者:うちあわせCast

一見単純そうなタイトルではありますが、中ではかなりディープなお話をしております。ぜひ皆さんのご感想もおきかせください。

〜〜〜試験問題への採用〜〜〜

『すべてはノートからはじまる』が試験問題に使われた、という連絡を頂きました。
2023年度の早稲田大学高等学院中等部の国語の入試問題です。

◇2023年度 早稲田大学高等学院中学部 入試問題 | 早稲田大学 入学センター

現在はまだ、WebページにPDFは掲載されておりませんが、去年の問題が掲載されていることを考えると、もう少し経ってから、ということなのでしょう。というか今回「Webに掲載しても構いませんか?」という確認のメールを頂いたことで問題文に使われたことを知ったので、きっと同様の権利確認の調整が終わってからなのだと思います。

で、私は(なにせ著作者なので)文章が使われた問題文をPDFで頂いたのですが、これがなかなか難しかったです。超難問というほどではないにせよ(なにせ大人なので)、文章をしっかり読んでその意味を汲み取ろうとしない限りはなかなか正解には至れない問題になっていました。こういう問題作りそれ自体も難しそうです。

それにしても註が加えられているとは言え、中学生前後の年齢でも読める(読み解ける)文章だと判断されたというのは嬉しいことです。数が売れたのとはまた違った嬉しさがありました。

〜〜〜ニューソート〜〜〜

自己啓発に関する話を読んでいると「ニューソート」という言葉をよく見かけます。自己啓発の源流という位置づけがよくなされています。で、なぜだかその綴りをずっと「New Sort」だと思い込んでいました。

そもそもが「新しい思想の潮流」であって、「New Thought」以外の選択はなさそうですが、そんな可能性すら検討することなく「New Sort」という印象がこびりついていたのです。

一つの予想ですが、おそらく「New Order」という言葉があって、これは新体制や新秩序を意味するのですが、その語感に引っ張られていたのでしょう。私の中で Order と Sort は近しい言葉としてマッピングされているので、「New Order」が新秩序なのだから「New Sort」も新思想なのだ、的な理解を勝手にこしらえていたわけです。

で、実際 Sort は選別や種類という意味もあり、Order と同じように解釈すれば「New Sort」を新思想とすることも不可能ではありません。とは言え、その言い方だと新しい階級制度の導入みたいな感じで本義とちょっとずれてくるかもしれないな、とどうでもいいことを考えてしまう今日この頃です。

〜〜〜今そこリベラルアーツ〜〜〜

書店で本を見ていたら、「今そこリベラルアーツ!」という謳い文句が帯に書かれている本を見かけました。こういうのは自分でも本当にしょーもないツッコミだと自覚はあるのですが、でもツッコまずにはいられません。

その本は「正解のない」うんぬんをテーマにした本だったのですが、「今そこリベラルアーツ」という提示、つまり「今の時代こそ、リベラルアーツが必要である」というのはまさに"正解"の提示でしょう。本の内容を帯でひっくり返してしまっているのです。

もし本の内容に沿わそうとするならば「今こそリベラルアーツ!って本当かな?」という文言がぴったりなはずです。まさにそんな風に問いを立て、日常に存在している言葉や概念について自分なりに考えていくことがリベラルアーツなのではないでしょうか。

というのがしょーもないツッコミです。

そもそもそんな風に自分で問いを立てられる人はこの本の対象読者ではないわけですから、帯の書き方はまったく正しいのだと言えます。だから入り口で「そうか、今こそリベラルアーツなのか」と思って本を手に取った人が、「今こそリベラルアーツ!って本当かな?」という問いを持って出口から出ていければそれで何も問題ありません。

その本がそんな風に書かれているのかは、中身を読んでいないのでちょっとわからないのですが。

〜〜〜一つの記事を一ヶ月書けて〜〜〜

Knowledge Walkersの「表玄関」に掲載している「Knowledge Walkersにようこそ」というページを書き終えました。

◇Knowledge Walkersにようこそ | Knowledge Walkers

この記事は一気に書きあげるのではなく、一ヶ月かけて少しずつ書き足していく形をとりました。おそらく一つの記事をそんなに時間をかけて書いたのははじめてです。

ブログの場合は、その日に書くことを決めたらその日のうちに(というか1時間くらいで)一気に書きあげますし、書籍の場合はそれこそ数ヶ月を書けて一冊の本を書きます。この二つが倉下の執筆スタイルの大半を占めているのですが、その中間あたりの書き方は完全に空白でした。

唯一「かーそる」に掲載する原稿は一週間から二週間くらいかけて書いていますが、「書いている」というより「そうなってしまう」が正確でしょう。さすがに1万から2万字ほどの原稿を(それも込み入った内容の原稿を)一気に書きあげることはできません。

だから、結果としてそれくらいの時間がかかってしまうのですが、今回ははじめから意図して時間をかけて一つの記事を書きました。そういう「腰の据わった書き方」を日常の執筆スタイルに入れ込んでいきたいからです。

これまでもブログなどで連載記事を書く場合は、一ヶ月くらいかかっていましたが、それは一つの大きな話題を複数回の原稿に分割していただけで、一つひとつの記事ははじまりとおわりがありました。分節されていたわけです。一方で今回の「Knowledge Walkersにようこそ」は、一つの大きな記事を流れを切ることなく書き綴っています。

で、そういう書き方が(もう少し言えばそういう書き方の訓練が)今の倉下には足りていないなと感じています。でもってそれは単に執筆法の話だけではなく、「ある対象を長く考え続けるための技法」なのだとも思います。その技法を確立したい。それが今の倉下のやや切実な課題です。

というわけで、皆様に質問です。今自分の仕事において何か抱えている切実な課題はお持ちでしょうか。それをクリアするためにどのような方策をとられていますか。ぜひ倉下にお聞かせください。

ではメルマガ本編を始めましょう。今回はPKMについてと2つのエッセイ、そして一つの連載開始宣言をお送りします。

ナレッジベースの整備

引き続きPKMについて検討していきましょう。

前回確認したように、PKMにおいて知識を増やすことは主要な目的ではありません。むしろ主要な目的を達成するための一つの手段です。

もし知識を得ることが目的であれば、「たくさん本を読んだ人が勝ち」のようなよくわからないゲームが発生してしまうでしょう。それはPKMとは何も関係ないことです。

知を営むことは、数少ない本をじっくり読むことでも可能ですし、本ではなく人の話を聞いたり現場で観察したりすることでも可能です。さまざまな手段があります。

逆に言えば、何も情報を仕入れない、外部から知識を取り込まないPKMもありません。自分の思索だけに頼っているものは「ナレッジ」という営みには参加していない、という点は前回も確認しました。

主要な目的ではないにせよ、PKMにおいて知識を仕入れることは大切な手段となります。むしろ、「どんな情報」を「どのような形」で仕入れるかが鍵を握ることになるでしょう。

■ナレッジベース

PKM界隈においては、そうした知識の収集場所として「ナレッジベース」が措置されています。無理やり日本語にすれば「知識基地」になるでしょうか。少し中二病っぽくて格好良いかもしれませんね。

英語でもさまざまな格好良いネーミングが考えられていて、「セカンドブレイン」もその一つです。その他検索すれば、たくさんの名前が見つけられますが、ここでは個別に追いかけることはしません。概略を確認するに留めます。

まずナレッジベースと呼ばれるものは、大きく以下の四つのスタイルに分かれます。

・概念ツリー
・wiki
・データベース
・ドキュメント

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