見出し画像

情報整理ツールの整理 / トランジション・ノート術の小さな思想 / 他人のノウハウとどう付き合うか

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/12/11 第687号


はじめに

ポッドキャスト、配信されております。

◇第百四十一回:Tak.さんとポストEvernoteについて 作成者:うちあわせCast

◇BC078「2023年の振り返り(前半)」 | by goryugo and 倉下忠憲@rashita2

うちあわせCastでは、大幅に変化してしまったEvernoteフリープランへの対応について。機能制限そのものよりも、そのアクションの出し方についての不信感があり、そこからいろいろな波紋が広がっていきそうです。

ブックカタリストでは、今年一年分の配信を振り返りました。さすがに長いのでまずは前半部分の振り返りです。次回は残り半分をやる予定。

よろしければ、お聞きください。

〜〜〜自然な使い分け〜〜〜

ふと気がついたのですが、ほとんど当たり前のようにWorkflowyとScrapboxを使い分けています。いちいち意識せずとも、「この情報はWorkflowyに、あの情報はScrapbox」と分別できているのです。その分別が自明すぎて、分別していることにすら気がついていません。

しかし昔は違いました。たとえば5年前ならもっと意識して(「どこにこの情報を入れようか?」)、情報を入力していたでしょう。つまりは、ギクシャクしていたわけです。

じゃあどうやってそんなに自然に分別できるようになったのかと言えば、それはもう「使い続けた」だけです。使い続けながら、「このタイプの情報はこちらのツールがフィットするな」といったことを確認し、そのフィードバックを受けて、次の情報入力を行う。その愚直な営みを続けていただけです。

そうした行為全体は、残念ながら「ハック」ができません。言い換えれば、「インストール」はできないのです。自分で組み上げるしかない。

だからまあ、あまり気負わずに、普段使っているいつものツールを使い続けていくことをお勧めします。もちろん、定期的に「考える」ことを挟みながら、というのが大切ですが。

〜〜〜星評価の偏り〜〜〜

ちょっと面白いな、と思う出来事がありました。最近連続で新刊を出したのですが、『ロギング仕事術』と『思考を耕すノートのつくり方』で星評価の反応が違うのです。

◇ロギング仕事術 課題に気づく、タスクが片づく、成果が上がる (大和出版) | 倉下 忠憲 | ビジネススキル | Kindleストア | Amazon

◇思考を耕すノートのつくり方 自分の知的道具を手に入れる | 倉下 忠憲 |本 | 通販 | Amazon

『ロギング仕事術』は、この原稿を書いている時点で27個の星評価を頂いております。でもって、『思考を耕すノートのつくり方』では星評価は1つです。

別に後者に不満があるという話ではありません。同じ著者の本が、それも似た時期に発売された本の星評価の総数がここまで違うのが面白いなと感じたのです。

そこで仮説を考えてみると、まっさきに候補に挙がるのがKindle版の有無です。『ロギング仕事術』はKindle版が発売されており、『思考を耕すノートのつくり方』はまだKindle版が発売されておりません。でもって、Kindle版は読了時にアプリから星評価を求められることがあるので、そのことが星評価数に影響を与えている、というのはわりと合理的な考え方でしょう(もちろん、販売数がだいたい同じであるという前提があるわけですが)。

この仮説が正しいのかは、『思考を耕すノートのつくり方』のKindle版がもうすぐ発売されるので、そこで(ある程度は)確かめられるでしょう。

個人的にはこういう仮説と検証がかなり好きです。日常のあちらこちらで行っている気がします。皆さんはいかがでしょうか。なにかしらの「個人的な実験」や「個人的な研究」は行われているでしょうか。よろしければ倉下までお寄せください。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今回は、情報整理ツールの整理、トランジション・ノート術の思想、ノウハウとのつき合い方についてお送りします。

情報整理ツールの整理

先週紹介したように、Evernoteのフリープランに大幅な機能制限が入りました。ノートブックの総数が1、ノートの総数が50に限定されたことで、フリープランでは試用しかできない状況になりました。

◇Update: Evernote Free accounts will have fifty notes and one notebook

もちろん、継続的に使用する情報整理ツールにお金を支払うことは必要でしょう。そうでなければ、ツールの継続的な提供も望めません。ようするに、「フリーミアム」という無料で使いたいユーザーにとっての楽園が存在していた時代が終わり、ごくごく当然な「使うツールにはお金を支払う」環境に戻った、というだけの話です。

とは言えです。

これまでなら「とりあえず、無料だから」という形で他の人にお勧めできていたEvernoteがその対象から外れてしまいました。おそらく私以外の人も同じでしょう。となると、今後Evernoteが口コミでその存在を広めていける可能性は低く、そうなるとユーザーの増加に関してはここら辺で頭打ちになることが考えられます。

現状のユーザー数だけで開発費もろもろがペイできているならば問題ないのですが、そうでないならば将来的な不安が出てきます。

それだけではありません。

昔から使っているユーザーを切り捨てるような施策を、こんなに急に、しかもあっさりと出してくる企業の姿勢そのものに、不信感を抱かないではいられません。「無料で使わせ続けろ」と言いたいのではなく、もうちょっと着地のさせ方がいろいろあったのではないか、と思ってしまうのです。

というわけで、ここ最近の私の情報ツール環境においてEvernoteの使用率がかなり高まっていたのですが、少し落ち着いて状況を検討するタイミングがやってきたように感じます。

かなり手間と時間をかけたので、このまま行きたい気持ちもあるのですが、そのサンクコストに惑わされずに、一旦「情報整理ツール」について整理してみましょう。

■わかったこと

Evernoteのノートブックを探求した結果として、以下の4つのノートブックに落ち着きました。

・Diary(日付・日時情報が入っているものすべてを扱う)
・Binder(書きかけのもの、書き足したいものを扱う)
・Card(自分の考えを著したブロックを扱う)
・Archive(上記以外のすべてを扱う)

加えて、それぞれのノートブックではソート順が違った方がいいのではないか、という仮説も出てきました。それぞれの情報の性質が違っているので、そのビューもまた性質に合わせた方が使いやすいのではないか、という話です。

しかし、だいたいのツールにおいてソート順はすべての情報保管単位で同一になっており、その意味では役割ごとに別のツールを使い分ける手もあるだろうと検討しました。

そうです。上記の分類は「Evernoteのノートブック分類」として出発したわけですが、実際は「個人が扱う情報の分類」へと敷延できるのです。

であれば、Evernoteを完全に止めるまではいなくても、そこへの依存度を一定程度に収めるならば、上記の役割の一部だけを残し、それ以外の役割については他のツールに割り振るというのが、脱Evernoteの第一歩となるでしょう。

ここから先は

10,323字 / 3画像 / 1ファイル

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?