2023年の振り返り / コピー用紙のノート的運用
はじめに
ポッドキャスト、配信されております。
◇第百四十三回:Tak.さんとTextboxのお披露目会2023 作成者:うちあわせCast
◇第百四十三回:Tak.さんとTextboxのお披露目会2023 | YouTube
◇ BC079「2023年の振り返り(後半)」 | by goryugo and 倉下忠憲@rashita2
うちあわせCastは、一年ぶりのTextboxお披露目会となりました。今回は動画が中心なので、SpotifyアプリかYouTubeでご覧ください。ぜんぜん違うツールに"進化"した姿が確認できるかと思います。
ちなみに、これまでテキストファイルに直接書き込むのがベースだったのですが、そこにJSONによるデータ管理も加わって、情報の取り回しの良さが格段に上昇しました。この辺の、「保存するデータの形態はどのように考えたらいいのか?」という話は、自作ツールの話を越えてデジタルツール一般に敷延できる大きな問題かと思います。
ブックカタリストは、今年の振り返りの後半でした。記事では自分なりのシントピカル・リーディング的なまとめも書いております。
よろしければ、お聞きください。
〜〜〜Evernote移行マニュアル〜〜〜
Knowledge Walkersで、Evernoteから別ツールへの移行を手助けするコンテンツを書きはじめました。
◇Evernote移行マニュアル | Knowledge Walkers
不定期ですが少しずつ追記する形で、内容を拡充させていく予定です。
この話題については──結構考えたのですが──、これまでさんざんEvernoteをお勧めしてきた人間のひとつのけじめ(そこまで大げさな決意ではありませんが)として、移行のための情報をまとめていこうと思います。
ちなみに、私は今でも普通にEvernoteをアーカイブ装置としては使っています(ただし他のツールへの移行も徐々に進めています)。
〜〜〜移行の問題〜〜〜
で、その移行なのですが、Evernoteの「Card」ノートブックに入っていたノート群は、Scrapboxに移すことに決めました。一日に1〜3枚くらいのペースで移行を進めていくイメージです。
その作業は、最初のうち好調でした。Cardノートブックから適当にカードをピックアップし、その内容をScrapboxにコピペする。あとはリンクを加えたり、文章を直したりして、全体を整える。簡単な作業です。
しかし、数を重ねるうちにしんどさが増えてきました。というのも、保存してあったノートには「そのままScrapboxのページにしやすいもの」とそうでないものが混ざり合っていたからです。で、怠惰な私は「しやすいもの」から率先的にピックアップして移行を進めた結果、残ったものの大半が一筋縄ではいかないものばかりになったという状態です。
こうなるとタスクは重くなります。
結局、土日の二日間をまるっと当て、一気にノートを移行することにしました。200個くらいあったノートのうち、残った160個くらいのノートを頑張って移しました。
実際は、タイトル一行しかないようなノートについてはScrapboxではなく、Textboxのメモに移しました。また、「これは明らかにエッセイのネタだよね」というものは一旦Bikeに保存し、そこをネタ帳として運用する計画も立てています。
移行する情報がアーカイブ的なものならばこんなにややこしいことを考える必要はありません。単にデータをAからBに移せばいいだけです。しかし、考えや着想という固定的な実体のないものは、それを表すための器とセットになっています。言い換えれば、頭に浮かんでいるものをどう表現するのか、という媒体と切り離せないのです。
でもって、ScrapboxにはScrapboxに適した器の在り方があり、他のツールには他のツールに適したそれがあります。その「変換」は、残念ながら機械的なコンバーターを使うことができません。なぜなら、その考えや着想の「本家」(そういうものがあるとしてですが)は、私の脳内にしかないからです。
というわけで、必死に頭を働かせながら移行を進めました。これでもうカード的なものの保存に、Evernoteが使われることはなさそうです。
〜〜〜能率と効率〜〜〜
最近、昭和時代の知的生産系書籍を読んでいるのですが、そこでは「能率」という言葉は使われても、「効率」という言葉がほとんど出てきません。興味深い違いです。
概ね似たような事象を指す言葉ですが──辞書的ではなく自分の感覚的に言えば──、効率というと「作業効率」というような連想から、フォーカスの対象が「作業/タスク」に向いている感覚があり、対する能率は「自分の能力」がどれくらい活用できているかにフォーカスが当たっている感覚があります。
端的に言えば、「効率」というときには機械中心の見方になっている(あるいは機械へのまなざしを自身へのまなざしに重ねている)と言えるのかもしれません。
もちろん、それが単体で悪いことはないのですが、そういう見方しかできないのならば、やっぱり弊害は起きてくるのでしょう。
〜〜〜反生産性〜〜〜
自作のデジタルツールについて考えていると、MacでのビューとiPhoneなどの端末でのビューや操作をどう統合すさせるか、みたいなことを結構考えます。で、その問題はうまい解決がありません。画面サイズも違えば、入力のための装置も違っているのです。それらを統合するには、相当アクロバティックな何かが必要でしょう。
そういうややこしい問題を抱えながら、ふと胸ポケットから小さなノートを出せば、このノートはどんな場所であっても「同じように使える」というごく当たり前のことを思い出します。電車の中でページをめくっても、机の上にノートを広げても、中身や操作はまったく同じです。自作ツールで考えていたようなややこしい話は一切ありません。
もちろん、「だからアナログツールに回帰すべきだ」という主張をしたいわけではありません。アナログノートには、バックアップや共有の問題が残り、データとしての不完全性が強く出ています。一方で、「ちょっとしたメモを書き留める」という用途ならば、そうした問題はほとんど気にならないでしょう。
こうした点も、一つのツールだけですべてを賄おうとすることの無理さを示しています。
たしかに一つのツールで、メモもノートもWebクリップも、その他いろいろも統合できたら便利です。でも、その便利さの裏側で実は微妙な「使いにくさ」がたくさん発生しているのかもしれません。で、その「使いにくさ」を解消するために、より便利なものを探究するという新しい「タスク」が生まれてしまっている。
こうした構造も、一種の反生産性と呼べるでしょう。やはり、「ほどほど」で留めておく勇気が必要なのだと思います。
皆さんはいかがでしょうか。
ツールは統合させる方向に向かっていますか。それとも分散しながらある程度の不便さは許容する方向に向かっているでしょうか。よろしければ倉下までお寄せください。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。今回は、倉下の2023年の振り返りと、コピー用紙的ノートの使い方についてです。
2023年の振り返り
今年一年の振り返ります。主に仕事面、環境面を対象に振り返ります。
■出版のお仕事
まず出版のお仕事から。今年は商業出版で二冊、セルフパブリッシングで二冊と合計四冊の本を出版できました。
・『ロギング仕事術』(2023/09/14)
・『思考を耕すノートのつくり方』(2023/11/17)
・『ブックカタリスト: 経済・倫理・政治哲学』(2023/10/22)
・『考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法』(2023/10/25)
それぞれの本については、このメルマガで触れてきたのでここでは割愛します。とりあえず、2022年から一年半ほど、ほとんど何も出版できていなかったので(いろいろ事情があったのです)、こうして本が出版できるようになったのはたいへん嬉しいことです。
本の書き方についても、今年は変化がありました。
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