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ビジネス書・実用書の展望 / incからsncへ、そして…… / 開き直るしかないこと

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2024/02/05 第695号


はじめに

「星海社 冬電書フェア2024」が始まっております。星海社のさまざま電子書籍がセールになっており、その中に拙著『すべてはノートからはじまる』も含まれております。

・Kindleストア

・BOOK☆WALKERストア

・dブック:

期間限定で40%オフとなっておりますので、ご興味あればチェックしてみてください。

〜〜〜ポッドキャスト〜〜〜

ポッドキャスト、配信されております。

◇BC082『思考を耕すノートのつくり方』から考えるノウハウのつくり方

◇第百四十六回:Tak.さんと「自分なりの名づけ」について 作成者:うちあわせCast

ブックカタリストでは、新刊『思考を耕すノートのつくり方』の紹介をしつつ、どんな思いでこの本を書いたのかという背景を語りました。私としては「個々人が、自分のノウハウをつくっていく」ことが当たり前になるのを夢見ています。

うちあわせCastでも、呼応するお話をしました。自分の手法に名前をつけること、自分の情報整理ツールの各項目に自分で名前を与えること、自分なりの言葉で表現すること。そこに通底するのは「自分でつくる」という感覚です。与えられたものが正解であり、そこからの逸脱は不正義であるというような感覚から、自分なりのものをつくっていくという感覚へのシフト。

そうしたプラグマズティックなノウハウ論が、今後の自分の姿勢になっていくのではないかと考えています。

〜〜〜自作ツールづくりwiki〜〜〜

Textboxという自作ツールはたいへん楽しいのですが、他の人とまったく話題を共有できないという物寂しさがあります。その点は少しObsidianクラスタがうらやましいところ。

しかし、です。

Textboxというツールそのものの話題は共有できなくても、「自分で使うツールを自分で作る」というセルフメイドな営みについては他の人と共通項を持つことができるでしょう。

というわけで、そのための場所を作りました。

◇自作ツールづくりwiki

少し前までは、Knowledge Walkersに自作ツールづくりの知見をまとめていこうと思っていたのですが、こういうのはやっぱりScrapboxでやった方がはるかに便利ですね。でもって楽しいです。

参加リンクは、pinしてあるページに置いてあるので、興味ある方はそちらからどうぞ。

〜〜〜頑張りと自然さ〜〜〜

たとえば、第一章の原稿をラフな形で書きあげたとします。でも、いまひとつという感じになったら、もう一度書き直す(リライトする)ことになるわけですが、そのときその章を再検討・再構成することになるでしょう。別様のアウトラインを検討するということです。

このとき、その新しいアウトラインを「頑張って」作ってしまうと、文章を書き下ろす段に困ったことになってしまいます。「自然に」書けなくなるのです。でもって、頑張れば頑張るほど、その「自然さ」の喪失は大きくなります。

考えてみれば、当たり前ですね。

文章を書く前に頭だけで作ったアウトライン(机上のアウトライン)は、だいたいその通りには書けません。自分の頭の中にある素材やその流れと合致していないことが起こるからです。

同じことは、一度書いた文章を再構成するときにも起こります。「頑張って」よくしようとすればするほど、自分が最初に書いた文章からは離れていき、机上のアウトラインと同じようなものができ上がってしまうのです。

もちろん、再構成自体が悪いわけではありません。「頑張って」という気負いが問題なのです。一つのドラフトがいまいちな感じならば、少しだけ考えて、もう一度流れに身を任せて書いてみるのがよいのでしょう。それを続ける中で、「これはいける」という流れを──遡及的に──見つけるのが良い進め方なのだと思います。

と、こんなことを書いているのは、自分がまさにその「頑張って」再構成する中で泥沼に嵌まっている感覚があるからです。それを抜け出すためにも、まずざっと書いてしまい、他の人に相談して、「新しい風」を脳内に入れていくことをやってみます。

皆さんはいかがでしょうか。考えることが行き詰まったときに、どんな手を打たれるでしょうか。うまく機能しているものがあれば、ぜひ倉下に教えてください。

では、メルマガ本編をスタートします。今週は、ビジネス書の展望、incシステムの続報、文章を書く姿勢についてお送りします。

「ビジネス書・実用書の展望」

以下の記事を読みました。

◇出版物の推定販売額 電子は好調も紙大きく落ち込み 前年下回る | NHK | 文芸

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書籍では村上春樹さんの6年ぶりの長編小説や、42年ぶりに続編が出た黒柳徹子さんの本などの話題作で「文芸」や「学参」のジャンルが健闘しましたが「ビジネス」や「実用書」は振るいませんでした。
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まず、全体として紙の出版物は苦戦しています。前年を6%下回る1兆612億円とのことで、芳しいとは言えません。ちなみに、データを見る限りでは2018年から連続で下がり続けていて、2022年も前年比6.5%と大きな下落幅となっています。

景気の悪化、物価の向上、人口の減少、他のメディアの勢力拡大……、挙げていけばいくらでも理由は考えられますが、ともかく紙の本が売れにくくなっている状況はたしかにあるでしょう。

とは言え、話題作が出たことで比較的健闘した「文芸」や、毎年根強い需要を見せる──そして受験競争が激化することによってその需要が高まる──「学参」といったジャンルに比べると、「ビジネス」や「実用書」のジャンルはあまり振るわなかったとのこと。

実際、私の感覚としてもこれらのジャンルに盛り上がりは感じられない一年でした。頻繁に書店に行き、そうしたジャンルの本に興味を持つだけでなく、実際に自分でも書いている人間の感覚からしてそうなのです。これはなかなか深刻な事態なのかもしれません。

今回は、そうしたビジネス・実用書を巡る現代的なあれこれについて考えてみましょう。

参考ページ:

◇出版科学研究所オンライン

■話題作の不足

まず、真っ先に目につくのが「話題作」の不足です。文芸では村上春樹さんの新作があり、それが売り上げを底上げしたようですが、同様の動きはビジネス・実用書には見られませんでした。

というか、振り返ってみるとここ数年単位でそうした話題作を見かけていません。ある程度のヒット作はありますが、「多くのビジネスパーソンがこれを読んでいる」と言えるほどの規模では売れていないと想像します。

時計の針を戻すなら、たとえば『7つの習慣』は相当な規模で認知されていたでしょうし、『ストレスフリーの整理術』も同様です。妙な言い方になりますが、このジャンルに興味を持つ人ならば大半の人が読んでいた印象があります。

そうした巨大ヒット作と対比してみると、昨今のヒット作はそこまで大きな規模にはなっていません。あるいは、売れてはいても「話題」になっていない、という状況があるのかもしれません。売れているから話題になり、話題になるからさらに売れるというスパイラルが回っていかないのです。

では、なぜそうした巨大ヒット作が生まれていないのでしょうか。

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