ナレッジベースを変化させる / タスク管理と行動法 / CSを設ける
はじめに
以前紹介したLISTENというサービスの開発がものすごいスピードで進んでいます。
◇LISTEN
https://listen.style/
一番すごいのは「検索」の実装です。登録されているポッドキャストの全エピソードを対象に検索できます。たとえば以下は「Evernote」で検索した結果です。
◇Evernote | LISTEN
https://listen.style/search?q=Evernote
さまざまなエピソードがポッドキャストを横断して列挙されていますね。これはすごいです。
これまでのポッドキャストは、あるポッドキャストを見つけたらそこで配信されているエピソードをすべて聴く、というアプローチは可能でした。縦型の掘り方です。
しかし、ある話題で横断的にエピソードを探すという横型の広げ方ができませんでした。結果、新しいポッドキャストを見つけるのが難しい状況になっていたのです。
LISTENを使えば、そうした環境が変わってくるでしょう。ポッドキャストのこれまでの課題だった「配信しても、見つけてもらいにくい」が今後変化していくことが考えられます。非常に期待です。
面白いのは、「RSSでポッドキャストを配信」という言ってみれば"古い技術"が、AIによって新しい価値を生み出せるようになっている、という変化です。おそらく今後もそうしたことはどんどんと起きていくでしょう。
〜〜〜ビリーフ〜〜〜
ABC理論という理論があります。認知行動療法で使われている理論です。
◇認知行動療法 | 脳と心の科学について学ぼう
・出来事【Activating events】
・思考・信念・考え方【Belief】
・感情・行動【Consequences】
この三つの頭文字をとった理論で、何かの出来事が起きたときに、それがそのまま感情や行動につながるのではなく、そのような出来事をどう受け取るのかという考え方が感情や行動に関与している、という捉え方で、その信念を変えることで心理的な安定差を取り戻そう、という話になっています。
で、この理論はしごくもっともなのですが、不思議とこの話を自己啓発書(あるいは自己啓発セミナー)でよく耳にします。で、その話がすごくうさん臭いのです。
それってなぜなんだろうなと考えてみると、まず信念を変えることはそんなに簡単なことではない、という点があるでしょう。それこそ適切なサポートが必要で、それを自己流でやってしまうのはかなり危うい気がします。
次に、あたかも「信念」が良くないものである、という見方が気になります。「信念さえ捨てれば、すべてうまいいく」的な言説なのです。しかしながら、信念を無くすことはできません。それは脳の情報処理であり、それをなくすためにはおそらく宗教的解脱を経る必要があるでしょう。
日常を生きる私たちに必要なのは、自分の心に悪影響を与えている信念を修正することであって、「信念」というコンセプトを全体的に拒否することではありません。そもそも「認知が感情や行動に影響を与えている」ということすら一つの信念であり、それがあるからこそ人はそれを頼りにして行動改善に望むわけです。その点を考えれば「信念」の完全否定は自己矛盾以外の何者でもありません。
こんな風に部分的には心理学の適切な概念を使いながら、全体を見たときにかなり危うい主張されているところが「うさん臭い」のでしょう。
でもだからといって、何ができるというわけでもないのはもどかしいところではあります。
さて、皆さんが感じる「うさん臭いもの」は何かあるでしょうか。よろしければ倉下に教えてください。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。今週は3つの原稿をお送りします。
ナレッジベースを変化させる
PKMの中心的存在であるナレッジベースについて引き続き考えていきます。
前回は、ナレッジベースを変化させることがPKMの基本行為だと述べた上で、そこで「考える」ことが必要になると説きました。今回はその話を掘り下げます。
■ライブラリ
たとえば、一冊の本を買ったとしましょう。そのときナレッジベースにはどのような変化が生まれるでしょうか。おそらく「買った本リスト/蔵書リスト」が更新されるでしょう。
まずこのことから、ナレッジベースにはそのような情報を管理するためのツールや場所が必要になることがわかります。「そのような情報」とは、買った本や読んだ論文、チェックしたWebサイトといったもの、言い換えれば情報摂取のヒストリーを指します。
ひとまずは、そうした情報摂取のヒストリーを"ライブラリ"と呼ぶことにしましょう。"ログ"という呼び方もできるのですが、少しだけイメージを喚起する"ライブラリ"をここでは選択しておきます。
■統合的管理
少し気の利く人ならば、自分がこれから買おうと思っている本のリストを作っているかもしれません。そうなると、上記の情報管理は「状態管理」へと変化します。つまり、まずオブジェクトとして「本」の情報があり、その状態の一つとして「買うつもり」があって、それが「買った」に変化することで蔵書リストとしても機能するよになる、といった構図です。
同じようにWebクリップなども「後で読む」→「実際に読んだ」という状態管理として捉えられます。
こうした管理手法はきわめて合理的です。扱う集合が一つだけで済み、その中のオブジェクトの状態を変化させるだけで済むからです。「買いたい本リスト」と「買った本リスト」は情報がかなりの程度重複するので、こうして一つに統合すれば管理の手間は大きく減少します。特にデジタルツールで管理しているならば、こうした統合をぜひともやってみたくなるでしょう。
ただしこれは個人的な意見ですが、その二つは統合しない方がよいかと思います。二つのリストは役割が異なるからです。リストのモットーは「混ぜるな危険」です。二つのリストを一つにまとめてしまうと、中途半端なリストができあがり、どちらの用途にもあまり効果を上げなくなります。
とは言え、その話はまだ今は些細なことです。リストを二つ作るにせよ、一つ作りにせよ、本を買ったり、読んだりしたらそうしたリストに「変化」が生まれることは間違いありません。ただしその変化は「新しい項目が増えた」か「オブジェクトの状態が変化した」という部分的なものに留まります。
大きさの程度で言えば、やや小さな変化になるでしょう。
■大きな変化
では大きめの変化が生まれるとしたらどんなときでしょうか。
ツリー型で考えてみましょう。自分のツリーにカテゴリごとに分類された項目があり、その項目の中に「経済学」というカテゴリがあったとして、そこに読み終えた経済学の本の項目を作ったとしたら、それは小さな変化です。
しかし、新しく読んだ本が、既存のカテゴリに当てはまらないとしたらどうでしょうか。そのとき新しいカテゴリ(たとえば音楽)という項目を作り、その下に本の項目を作成したとしたら、それは中規模の変化になっています。概念の高低のレベルで言えば、一番下ではなく、それよりも一つ上のレベルで新規項目が追加されているからです。
では、こんな変化はどうでしょうか。
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