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第五回:リストが変えるもの、変えないもの

デイリータスクリストは、たいへん便利で有用なものですが、銀の弾丸でも聖杯でもありません。解決できる問題と、そうでない問題があります。

デイリータスクリストを使えば、仕事のやり忘れを防いだり、以前よりもうまく段取りして仕事を進められるようになります。一方で、デイリータスクリストに「飛行魔法で空を飛ぶ」と書いてもそれが実現できるわけではありませんし(あなたが秘密結社の魔法使いなら話は別ですが)、「15:00には一切電話がかかってこない」と書いたところで携帯が震えるのを阻止できるわけではありません。

リストを作っても、そこにある「現実」は、依然として現実のまま残っています。言い換えれば、リストを作って作らなくても、そこにある「現実」は揺るぎません。それは、体重計に乗ろうと乗らまいと、あなたの体重が変わらないことに少しだけ似ています。

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デイリータスクリスト作りは、タスク管理という分野のテクニックであり、そのタスク管理はセルフマネジメントの一分野にあたります。

セルフマネジメントは自分が持つリソースをマネジメントすることですから、自分のリソース外のもの、つまり自分の能力を超えるもの、あるいは自分に裁量がないものまでは影響を及ぼせません。空が飛べないのも、電話を止められないのも、至極当然の話です。

もちろん、あなたが二十四時間以上かかる仕事を抱え込んでいて、それを一日でやり遂げようとしていたり、弱気な性格を急に変えて断る力を発揮させようとしていたり、収入を10倍にしようとブラック企業の中で目論んでいたりしても、デイリータスクリストはそれを叶えてくれることはありません。できないことは、できない。悲しいけれども、それが現実です。

一方で、リストを作ることによって、変わるものもあります。それが認識です。

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体重計に乗れば、自分がどの程度太っているかがわかります。それは精神的ダメージを発生させるかもしれませんが、それによって「よし痩せよう」という強い心構えが湧いてくるかもしれません。少なくとも、その決意は体重計に乗らなければ生まれなかった気持ちです。

同じように、家計簿をつけても収入自体は一切変わりませんが、何にどうお金を使おうか、という気持ちの方は変わるかもしれません。思っているよりも娯楽費に使っていることがわかったら、来月はそれを1割減らそうと決意することはできます。

無論、決意が実行を確約してくれるわけではありませんが、体重計や家計簿によって、自分の行動(いつも大盛りを注文すること、ガチャに大金を注ぎ込むこと)の価値が変化することは十分起こり得ます。

「現実」を突きつけられることで、自分の価値観が変わり、それが行動の変化にまで波及していくのです。

その変化は、私たちと「理想」の関係にも影響を及ぼします。

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