追悼—手を合わせる、お幸せに

寂しかった

関係が終わることが寂しかったわけじゃない

関係が終わるのに寂しくなくて

なんとなくすっきりしてしまっていることが

なんとなく寂しい

「別れよう」と言われたときに、なんかストンと腑に落ちてしまったことが

納得してしまったことが

寂しかった

そうか

もうずっと前から、ずっと離れてしまってたんだ

あなたと連絡を取らなくなって

だだっ広く広がる時間

いつも「おやすみ」を言う時間に

電車が通り過ぎる

そうだった

一緒に箱根行ったなぁ

延々と続く普通列車で

帰りは眠くなって

足は疲れて

帰りにラーメン食べたなぁ

なんでか、思い出した

ふわふわって

広がる時間に

なんでか思い出が出てくる

熱海にも行ったなぁ

高い窓から海が見えたんだ

台風であんまり外出られなかったけど

暑かったなぁ

また電車が通り過ぎる

号泣でもできたらすっきりするかもだけど

あんまり泣けなくて

それがじんわり寂しくて

泣けない

ゆっくり思い出す時間もなくて

仕事が仕事に追われて追われる

ごめん

無責任だった

なんて言うのも無責任だから

言わない

なんてことないような顔で

かみしめる

目を閉じる

祈る

手を合わせる

ありがとう、本当に

どうかお幸せに、

僕も幸せになります


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?