らりるれろ

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記事一覧

企業向け哲学対話について

はじめに:企業内での哲学対話みなさんこんにちは! 今日は、私が企業向けに行っている哲学対話について、その概要・進め方・会社でやる意義について説明します。 哲学…

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1か月前
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大学院入試のための西洋哲学史<列伝>

はじめにみなさんこんにちは、らりるれろです。 お待たせしました。以前公開した「大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)」の正式な版を、ようやくお届け…

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1か月前
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追悼—手を合わせる、お幸せに

寂しかった 関係が終わることが寂しかったわけじゃない 関係が終わるのに寂しくなくて なんとなくすっきりしてしまっていることが なんとなく寂しい 「別れよう」と言…

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3か月前
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レヴィナス思想史—その試みと挫折

概論はじめに 本稿は、学問バー@新宿のイベント(02/23)「哲学対話、レヴィナスに向けて、レヴィナスと共に」でお話しするレヴィナスの思想について、実際にプレゼンす…

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3か月前
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プラトン『饗宴』解説(第1章)

読解の前提歴史的背景 p255の「解説」にある通り、ここで語られている「饗宴」の様子は紀元前416年とされており、プロローグでアポロドロスとその友人がその様子を追憶し…

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読書会レジュメの作り方/社交ダンスとしての読書

みなさんこんにちは、らりるれろです。 私は色々な場所で色々な読書会をしており、その都度レジュメを作って説明しています。どんなやり方でレジュメを作っているか、簡単…

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3か月前
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大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)

はじめにみなさんこんにちは。らりるれろです。 そしてすみません。「院試のための西洋哲学史を作るぞ!!」と息巻いていながら、最低限人前に出せるものを作ろうとすると…

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4か月前
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フーコー「真理と権力」読書会用資料

はじめに:いま、フーコーについて語るということ 先日、会社の先輩と帰りの電車でバッタリ会った。違う部署なので普段あまり話したことはなかったが、(なぜか)後輩指導…

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踊り手の存在論ー世界の中に存在しつつ世界を始め直すことー

衝撃から始まった。文字通りの意味での衝撃である。 存在が踏み鳴らされている。その事実の衝撃が耳をつんざく。 そこでは、存在の音が音楽の中にありつつ、同時に存在の…

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生きている他者に対して、哀悼可能性を見出すことは可能か:2023/05/06読書会用資料

要旨本章全体の議論の予告(1~4段落) 本章では、「何によって、私たちは他者の生命を保護しようとするのか」という問いの前提を問う。言い換えれば、「いつ、どんな時に…

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『歴史の概念について』(ベンヤミン)原書解読

なんで翻訳するのか 私はまだドイツ語の入門書を一通り読み終えた程度のドイツ語入門者だが、ベンヤミンの『歴史の概念について』の原典購読会に参加している。 正直、一…

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企業向け哲学対話について

企業向け哲学対話について


はじめに:企業内での哲学対話みなさんこんにちは!

今日は、私が企業向けに行っている哲学対話について、その概要・進め方・会社でやる意義について説明します。

哲学対話の源泉はいくつかありますが、日本では2000年頃に大阪大学臨床哲学研究室のメンバーがハワイでのP4C(=Philosophy for Children、子どものための哲学、学校教育での哲学対話)を踏まえて紹介したのが始まりとされてい

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大学院入試のための西洋哲学史<列伝>

大学院入試のための西洋哲学史<列伝>

はじめにみなさんこんにちは、らりるれろです。

お待たせしました。以前公開した「大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)」の正式な版を、ようやくお届けできる状態になりました(希望的観測かもしれませんが)。

このnoteは、西洋哲学・思想を先行する大学学部生・大学院生向けに、定期試験や大学院受験のために必要な西洋哲学史の知識の概略を提供するものです。「列伝」のタイトルの通り、250

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追悼—手を合わせる、お幸せに

寂しかった

関係が終わることが寂しかったわけじゃない

関係が終わるのに寂しくなくて

なんとなくすっきりしてしまっていることが

なんとなく寂しい

「別れよう」と言われたときに、なんかストンと腑に落ちてしまったことが

納得してしまったことが

寂しかった

そうか

もうずっと前から、ずっと離れてしまってたんだ

あなたと連絡を取らなくなって

だだっ広く広がる時間

いつも「おやすみ」を

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レヴィナス思想史—その試みと挫折

レヴィナス思想史—その試みと挫折


概論はじめに

本稿は、学問バー@新宿のイベント(02/23)「哲学対話、レヴィナスに向けて、レヴィナスと共に」でお話しするレヴィナスの思想について、実際にプレゼンする内容よりも詳細に記述したものである。

レヴィナスの思想「について」と書いたが、レヴィナスの思想「について」語ることを、おそらくレヴィナスは倫理的に異議を唱えるだろう。後段で見ていくように、他者を対象化する営みは<私>を分離された

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プラトン『饗宴』解説(第1章)

プラトン『饗宴』解説(第1章)

読解の前提歴史的背景

p255の「解説」にある通り、ここで語られている「饗宴」の様子は紀元前416年とされており、プロローグでアポロドロスとその友人がその様子を追憶しているのはそれよりかなり後の時代である(p226の記述の通り、ソクラテスが刑死する少し前、紀元前400年頃と推定されている)。

本作を執筆した時期のプラトンは、イデア論の理論的構築に取り組んでおり、その過程の中で「人間がイデアの認

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読書会レジュメの作り方/社交ダンスとしての読書

読書会レジュメの作り方/社交ダンスとしての読書

みなさんこんにちは、らりるれろです。

私は色々な場所で色々な読書会をしており、その都度レジュメを作って説明しています。どんなやり方でレジュメを作っているか、簡単に紹介させてください。

まず、本と出会います。この瞬間から私の読書は始まっています。本屋で、Twitterで、Amazonで、あるいは別の本の中で。タイトルや装丁、帯の文が、パッと目に留まる。その時に得られる印象から、読書体験が始まりま

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大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)

大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)

はじめにみなさんこんにちは。らりるれろです。

そしてすみません。「院試のための西洋哲学史を作るぞ!!」と息巻いていながら、最低限人前に出せるものを作ろうとするとかなりの年月がかかることに気が付き、早期の公開は断念しました。

その代わり、「とりあえずこのくらいのメモがあれば、阪大の臨床哲学と上智の哲学研究室はかなり余裕で=専門試験で9割取れるくらいで合格できるぞ」という指標の提示を目的として、僕

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フーコー「真理と権力」読書会用資料

フーコー「真理と権力」読書会用資料

はじめに:いま、フーコーについて語るということ

先日、会社の先輩と帰りの電車でバッタリ会った。違う部署なので普段あまり話したことはなかったが、(なぜか)後輩指導の話で盛り上がった。

その先輩は、後輩指導の悩みについて次のように話してくれた。
「コミュニケーションを取るのが難しい子がいてね……。言ったことは丁寧に実行してくれるんだけど、なかなか自分から動けなくて、お客様の前でフリーズしちゃうんだ

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踊り手の存在論ー世界の中に存在しつつ世界を始め直すことー

踊り手の存在論ー世界の中に存在しつつ世界を始め直すことー

衝撃から始まった。文字通りの意味での衝撃である。

存在が踏み鳴らされている。その事実の衝撃が耳をつんざく。
そこでは、存在の音が音楽の中にありつつ、同時に存在の音が音楽を作り直していた。

踊り手の存在をめぐるこの二重性は、この舞台の装置に関係している。

舞台のライトが当たる部分に踊り手がいる。舞台の袖にギタリストと歌い手がいる。
視覚的に捉えれば、光の当たる場所(前景)に踊り手がいて、バック

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生きている他者に対して、哀悼可能性を見出すことは可能か:2023/05/06読書会用資料

生きている他者に対して、哀悼可能性を見出すことは可能か:2023/05/06読書会用資料

要旨本章全体の議論の予告(1~4段落)

本章では、「何によって、私たちは他者の生命を保護しようとするのか」という問いの前提を問う。言い換えれば、「いつ、どんな時に、生命の保護は要求されるのか」、そもそも「何が生命としてみなされるか」という議論の特徴を明らかにする。

他者の生命の保護について論じる際、その問いは特定の一人の他者の保護に関する問いと、特定の人間集団の保護に関する問いに分かれる。本章

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『歴史の概念について』(ベンヤミン)原書解読

『歴史の概念について』(ベンヤミン)原書解読

なんで翻訳するのか
私はまだドイツ語の入門書を一通り読み終えた程度のドイツ語入門者だが、ベンヤミンの『歴史の概念について』の原典購読会に参加している。

正直、一文の意味を取るのに、普通に10分〜15分程度はかかる。4行以上に渡るような長文だと、30分くらいはザラに掛かる。

それでもベンヤミンの論文は比較的短いので、なんとか心折れることなく読むことができている。

それにしても僕たちは、Deep

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