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網羅版:科学視点からの探求やレシピ公開

次世代の"分子ガストロノミー専門誌"へようこそ!最新論文を用いて、時代に取り残されない為に、古い情報をアップデートしよう!マガジン「滞在率なんと90%超」脅威の満足度! フラン… もっと読む
このマガジン(更新される教材本)を通して、歴史、技術、科学的な観点からの解説など、フランス料理に関… もっと詳しく
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記事一覧

【”魚”のタンパク質変性】:41度/63度/70度の”魔法の加熱温度”の使い方/理論的に魚を攻略する

【”魚”のタンパク質変性】:41度/63度/70度の”魔法の加熱温度”の使い方/理論的に魚を攻略する

魚の火入れについては何度も説明してきましたが、多くの人が肉と比べて難しいと感じるようです。これは、魚の繊維の構造が理解しにくく、思い通りに調理するのが難しい性質を持つためです。また、魚のタンパク質が変性する温度が、肉や野菜とは異なるため、さらに調理が難しくなります。

まず理解すべき重要な事実の一つとして、野菜、肉、魚のそれぞれでタンパク質の変性温度が異なるという点があります。これらの食材を扱う際

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料理の科学:完璧なレシピとその構成フレームワークを”数学的”に作る/インスピレーションと技術向上

料理の科学:完璧なレシピとその構成フレームワークを”数学的”に作る/インスピレーションと技術向上

基本味の比率とその先完璧な料理は、味覚と嗅覚の総合的な評価によって決まり、さまざまな心理的影響を受けます。

しかし、その基礎となるのは、料理の基本的な味構成を完璧にマスターすることです。この基本的な味構成には、一般的に知られる五大味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)が含まれます。さらに、最近発見された6つ目の味覚である脂肪味も、これらに加えて重要な要素となっています。

和食において比率が重要視

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現代飲食市場で勝ち抜く:料理人が考えるべき戦略/『売れる料理を作る仕事が、真に料理人である』

現代飲食市場で勝ち抜く:料理人が考えるべき戦略/『売れる料理を作る仕事が、真に料理人である』


時代を生き抜く経営戦略料理人にとって「提供している価値とは何か?」という問いは常に重要です。

料理に売り上げが伴わなければ、その活動はただの趣味やボランティア活動と同義になります。実際、飲食店の廃業率は3年で70%、5年で80%、10年で90〜95%に達するとされています。

これは、多くの飲食店がビジネスとして実質成立していないが運営している、つまり適切な"価値を提供できていない"ということ

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量子力学と料理:「不確定性原理と量子もつれ」”おいしさ”を加える感情のエネルギーについて

量子力学と料理:「不確定性原理と量子もつれ」”おいしさ”を加える感情のエネルギーについて

さて、今回は”料理×量子力学”について触れていきます。皆さんは「量子力学」をご存知ですか?

量子力学とは、一般相対性理論と共に現代物理学の根幹を成す理論・分野を指します。

おおそよ、料理とは関係ないと思われる、量子力学ですが、実は全ての理論の根幹を担っている学問です。最近では科学的な料理から一歩離れ、「感情」を料理に取り入れる視点に注目していますが、実は量子力学と深い関係があり、それへの準備運

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「料理は最終的には感情であり、食材の正確な扱いとそれに対する敬意がすべて」:Thomas Aloysius Keller の言葉の真意

「料理は最終的には感情であり、食材の正確な扱いとそれに対する敬意がすべて」:Thomas Aloysius Keller の言葉の真意

料理の本質とミシュラン志向のギャップ多くの人が高い料理の評価を求め、ミシュランやガストロノミーの頂点を目指しますが、実際には、一般的な飲食店は高級志向からは程遠い現実にあります。消費者にとって最も重要なのは、価格、味、サービスが見合っているかどうかです。一般的に、料理の価格が低ければ低いほど、顧客の満足度は高くなる傾向にあります。

この現象から、「安くて、おいしくて、ボリュームがある」という三拍

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フランス料理の進化とソースの濃度科学:ヌーヴェルキュイジーヌ(Nouvelle Cuisine)による新しいソースとは?レシピ

フランス料理の進化とソースの濃度科学:ヌーヴェルキュイジーヌ(Nouvelle Cuisine)による新しいソースとは?レシピ


ある日、疑問が頭をよぎった。フランス料理におけるソースの殆どが、コーンスターチを加えるときちんと とろみ がついて安定するのに、何故ハンバーグ用のソースやフレッシュなソースだけがすぐに緩くなってしまうのだろう?キッチンに立ち、その問題について考えた。

彼は何度も試みた。さまざまな比率でコーンスターチを加え、様々な温度で熱を加え続けた。また原因となる酸やアルコールなど何が原因成分か探った。

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ウェルダン指定を黙らせる根拠”よく焼き”でも何故『ピンク色』になる?/中心温度が高くても「おいしく食べれる」性質と温度について

ウェルダン指定を黙らせる根拠”よく焼き”でも何故『ピンク色』になる?/中心温度が高くても「おいしく食べれる」性質と温度について

よく焼き指定でも「ピンク色」はNGなのか?さて、お客様の中には「よく焼き」でと指定する方は、たまにいらっしゃいます。よく焼きはどこまで焼くのが正しいのか?疑問に思ったことはありませんか?

肉の火入れ加減で定義はもちろん存在しています。

■レア、ミディアムレア、ミディアム、ウェルダンの4種類

それは、主にレア、ミディアムレア、ミディアム、ウェルダンの4種類に分かれます。 最も生に近いのがレアで

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ビストロの魅力「科学とは真逆の”美味しさ”に迫る」:隠された哲学について

ビストロの魅力「科学とは真逆の”美味しさ”に迫る」:隠された哲学について

日本におけるビストロの魅力と定義

日本の食文化の中で、ビストロは特別な位置を占めています。一般にビストロと聞いた時、多くの人が思い浮かべるのは、シャルキュトリー(肉の冷製料理)やアミューズ料理(食事の始まりを告げる小さな前菜)などの作り置きの前菜の盛り合わせなどを提供する居酒屋形態の店です。

ビストロ誕生の背景

ビストロの歴史は、19世紀のフランスにさかのぼります。産業革命により急速に都市化

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低温調理やスチコンは時代遅れ?『古いオーブンにこだわるシェフたちの存在』技術革新は伝統的な調理法を本当に置き換えるのか?

低温調理やスチコンは時代遅れ?『古いオーブンにこだわるシェフたちの存在』技術革新は伝統的な調理法を本当に置き換えるのか?

時代を象徴する技術、低温調理とスチームコンベクション

低温調理とスチームコンベクションオーブンが食文化に革命をもたらした21世紀初頭から現在にかけて、我々の食に対する理解と技術の進化は目覚ましいものがありました。この二つの技術が広く受け入れられた背景には、食材本来の味を最大限に引き出すという共通の目的があります。しかし、時間が経つにつれ、技術の進歩とともに、食文化における新たな問いが浮かび上がっ

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ピューレの”正しい”作り方/味と風味を損なわないコツについて:『葉野菜は本来"緑色"ではない?』

ピューレの”正しい”作り方/味と風味を損なわないコツについて:『葉野菜は本来"緑色"ではない?』


美味しいピューレを作るためには、鮮度と濃度のバランスが非常に重要です。ピューレにする際に火を通すことで滑らかなテクスチャを得られますが、色や味が損なわれる可能性があります。

また、水分量を増やすと滑らかにはなりますが、味が薄まることがあります。そこで、火入れを最小限に抑えつつも、適切な濃度を出す方法が求められます。そのためには、コーンスターチ、片栗粉、デキストリン、大豆レシチンなどの材料が有効

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「空腹時」と「満腹時」どっちに料理を作った方がいい?/時間帯や空腹時で変わる味覚の知覚について

「空腹時」と「満腹時」どっちに料理を作った方がいい?/時間帯や空腹時で変わる味覚の知覚について

空腹時の味覚感受性について
美味しい料理を一貫して作る秘訣は、"味見"にあります。ただし、単に各パーツを味見するのではなく、それぞれの要素を組み合わせた後の全体の味わいを確かめることが重要です。

新しい料理が完成して、一皿としての完成度をちゃんと確かめている人は案外少ないのではないのでしょうか?

個人的に自分自身がつくった料理を、完食することこそ、自分自身の料理の完成度を上げる近道だと考えます

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