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体癖小説「雨宿り」⑨
飲み会に行く前は、
今日は、ニシナさんが、みんなとたくさん話せるように、悩み事なんかも打ち明けられるように、もっていくんだ!
なんて決めていたのに。まあ、あたしらしいと言えばあたしらしい……。
体癖小説「雨宿り」⑧
結局、どこにも寄らずに、帰宅した。
なんだか、あたしの部屋って、色が多すぎる!なのにカラフルハッピー!って感じじゃない!……そっか、片付けてないからだ…。いろんなものが散らばってるもんね。あーあ、でもこれがあたしの部屋だ。昨日まで、これで当たり前だったのに。
そうだ!冷蔵庫の中に、ふわふわチーズケーキがあるんだった!食ーべよっと!
体癖小説「雨宿り」⑦
やっぱ「名刺といえば、こういうカンジですよね。シンプルだけど、マークとか、かっこいいです。ありがとうございますっ!」
「わたしも趣味で作っているものがあるから、そっちを渡しましたけど、名前も、電話番号も、メールアドレスも書いてあるので、どうぞよろしくお願いします。雨、すっかり止みましたね~!」
あたしは窓の外を見た。
体癖小説「雨宿り」⑥
「ニシナさんみたいに、滅多にミスをしなくて、いつもきっちり仕事してくれる人がいるから、あたしも助かってるし、会社もそうだと思います、ニシナさんがいることで、みんな安心して仕事できるんじゃないかな。さっきだって、電話来てたし!」
と言ったら、すごく納得したような、その場でパッと思いついたことを言っただけなのに、あたしの話をすごく受け止めてくれたように感じた。そんなに有休も取ってないから、胃が痛
体癖小説「雨宿り」⑤
「文房具集めが趣味の一つなんですよね~」
ニシナさんは、少し恥ずかしそうに言った。
「だからカレンダーも3つ貼ってあるんだあ」
あたしは、もう一度カレンダーを見たくて、首にタオルをかけて部屋を歩いた。するとニシナさんが机の引き出しをもう一度開けてくれたので、あたしもニシナさんの隣に立った。
そこは引き出しの中というより、文房具の住処のようだった。
体癖小説「雨宿り」④
「はい、座って座って」
と言いながらニシナさんが先にソファーに座ってくれたので、あたしも座った。
「すっごくキレーな部屋ですね・・・カレンダーも、おしゃれっていうか、ポスターみたいで」
・・・カレンダーが好き?・・・あたしは一瞬、何て返していいかわからず、きょとんとしていた。すると着信音が聞こえてきた。
「うわ、電話だ、ちょっとすいません」
体癖小説「雨宿り」③
2人で階段をのぼる足音だけが、しばらく響いていた。
ニシナさんのテンポとあたしのテンポは全く合わず、不思議なリズムが刻まれていた。
正直、ニシナさんは毎日この階段をのぼっているとは思えないくらい、遅く感じた。というか、全く焦っていない、っていうのかな。
さっき走ったから、やっぱり疲れてるのかもしれない。あたしは一段跳びでものぼれるって思ったりしたけど、さすがにやめておいた。
体癖小説「雨宿り」②
その瞬間、手に大粒の雨が落ちてきて、あたしは空を見上げた。雨粒は、みるみるうちに、たくさん降ってきた。
「これきっとゲリラ豪雨」
とニシナさんが言った。
「私のマンション、もうすぐだから雨宿りしてって!」
確かに雨はさっきよりも激しくなってきて、バッグを頭に乗せて、とにかくニシナさんの後を走った。
体癖小説 「雨宿り」①
会社を出たら、少し前をニシナさんが歩いている。
どうしよう…追いついて、話しかけてみようか…?それでどうする?一緒に帰る?えっ、仕事の用件以外ほとんど話したことないのに?
ニシナさんって、あたしとは大違いに仕事ができる。だから何となく近寄りがたい…。でもこの距離。今のままじゃ、ニシナさんのストーカーみたくなっちゃう気がする!…なんか、いろいろ考えすぎ!
あたしは小走りにニシナさんに追い