ゼツメツ少年 重松清

リュウのお父さんの最後のセリフ

自分の子供に一番伝えたいことは、生きていてほしいんだ。

この一言にすべてもっていかれました。

重松さんの小説はすべて読んだわけではないけど、そこかしこにあの作品に出てきていた登場人物だ。って気付いたときは、私も長らくあっていなかった大切な人達に再会したときのような喜びがあった。幸せであってほしいと、幸せであってくれれば私が嬉しいと思った。

「生きることは大切だ」なんて、もうずっと言われ続けている抽象的で輪郭のない論理を押し付けるつもりはない。
だけど私も辛かった時期に、その後に、自分の生きる意味や存在に出逢えたことがある。それはこの世の全員にあてはまることはきっとなくて、私は幸福な人間なんだろう。だけど、特に子どもたちには、その希望を捨てないでほしい。長い人生の中でみたらたった三年間。虐げられている子ども達には一日がずっと永遠に続く苦痛の時間だろうけど、それでも三年。我慢しなくてもいい。ただ生きてほしい。その原動力が怒りだとしても。

生きててよかった、という瞬間が絶対おとずれる。私は死ななくてよかった。私の生きる意味である存在に会えた。あのとき私を軽視していた奴らに負けて死んでいたら、私は彼や彼女に会えていなかったと思うと、生きていてよかった、としか言えない。ざまあみろ。今、私は幸せだ。残念だったね、最後まで私をゼツメツさせることができなくて。
そんなときを信じて、生きてください。