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アーマード・コアⅥ それは最も自由なロボットゲームの末裔

ゲームファンの皆ごきげんようランガタロウです

長い時を越えて蘇ったアーマード・コア
アーマード・コアⅥが発売されました。
PS2の時代に出会い…シリーズはほぼ全作遊んできた私も大満足の名作ゲームです。

しかしながら過去作からはかなり新しいシステムとなった今作
では一体何が今作を「アーマード・コアの新作」たらしめているのか。

これはアーマード・コアだ

アーマード・コアは…まぁなんだシリーズごとに色々ゲームの仕様が変わる関係で「あれはもうアーマード・コアじゃない」みたいな話もされる作品ではあるのだが

これは間違いなくアーマード・コアだと言えると思う
最初のステージで機体を移動させながらライフルでMT(雑魚敵)を破壊しながら前に進んでいるだけで「俺はアーマード・コアを遊んでいる」という気持ちにさせてくれる。

何がどういった作用によるものかはわからないがアーマード・コアとはそういうものなのだ。

ここを「こういうシステムだから」と言語化できれば一流ゲームライターになれると思うがそこはまぁ他の人に任せよう。

ストーリーとかフレーバーテキストがどうこうではなく
コントローラーを握り「このボタンを押すとロボットがこのように動き このように敵が撃破され プレイしている人間の脳にこのように快楽信号がでる」という一連のプロセス これが完璧にアーマード・コアをプレイしている時のそれになっているのだ。

大切なのはロボットの動き

ロボットアクションゲームというのは世の中にそれなりにはある。
ガンダムのゲームを含めれば膨大な数になるだろう。

だがそれぞれのゲームがそれぞれに個性的な挙動をする
これを文章で説明するのは難しいが
アーマード・コアはその中で最も「敵の位置に囚われない挙動をするゲーム」と言えるだろう

ロボットものに限らずゲームでは敵をロックオンすればそいつを視界の中心に据えて、そいつに攻撃が飛ぶようにする

一方で過去作のアーマード・コアは「視界の中央のロックオンサイトに捉えた敵の方向に【銃を構えた腕だけ】が向く」という仕組みをしている。
これが非常に特徴的なのだ
敵をロックオンしても「銃口がそちらを向く」だけであり
自分のロボットの顔は真正面を向いたままなので
敵が横に言ってしまえば見えなくなる
自分で旋回し あるいはブースト移動を組み合わせながら
敵を視界の中に捉え続けるというゲームプレイを求められる

4でクイックブーストが導入されたことでよりめちゃくちゃな動きで
「相手の視界に入らない動き」が加速されていった。
時速2000kmのオーバーブーストは語り草である(PS2系でも999km AC6のオーバーブーストは時速400kmぐらいである)

一方V系では早くなりすぎたACの速度を見直した代わりに「建物や崖を蹴ることで加速する」という3次元挙動を求めた。

翻ってAC6はどうか
6はロックオンサイトを撤廃し、視界内にいれば距離に応じてロックオンが成されるようになった。
そしてターゲットアシスト機能をONにすれば視点操作、旋回操作をしなくても自動でカメラが敵を追うようになった。

これだけ書けば「過去作と全然違うのでは?」となってしまうが
フロムソフトウェアはそんな甘い調整をする会社ではない。

アーマード・コアのロックオンの肝は「腕がそっちを向いているかどうか」である

過去作では「ロックオンできる距離やサイトの広さ」を決めていたFCSパーツは今作では「距離に応じて腕が追いつく速度の補正が変わる」という仕組みになった。

ターゲットアシストをONにして敵を常にカメラが追うようになり、旋回速度の概念が撤廃されても「敵に銃口を向ける腕の動きが与える影響」をフロムは撤廃しなかったのだ。

敵がクイックブーストしても視界から消えるようなことは無くなったというユーザーへの優しさを残しながらも「クイックブーストされると腕が向いてる位置がズレるためそのまま射撃すると絶対外れる」という仕様が残っている。そして「そのズレを治す速さがFCSと腕の射撃補正である」というアセンブルとカスタマイズ 自分の機体がどの距離でなら最も補正されるのかを理解した立ち回りをさせるゲームとしての本懐が残っている。

逆説的にクイックブーストは「相手の視界から高速で消える」技術ではなく「相手のロックオンを狂わせる」ことでただ弾を避けるよりも回避力が上がっていると言って良い、もちろん補正を即座に戻される場合もあるが。

「何を変えたら新しくなり 何を残したらアーマード・コアのままなのか」ということを緻密に残されたゲームがアーマード・コア6なのだ

歴代ACを逆手にとったストーリーテリング

ゲームシステムが変則的ながらも芯の部分でアーマード・コア体験を提供している話はした。ではストーリーの満足度について

今作は色々な部分でアーマード・コアのお約束を意識しながらもその通りにはしない作りをしている。

アーマード・コアといえばどんなにシリーズが変わっても「傭兵となり自由に依頼を受ける」という部分にある

しかし今作は「他人の傭兵ライセンスを使って偽名で傭兵登録をする」ところから物語が始まる。
そしてそれは「ハンドラー・ウォルター」という人物の指示だ

序盤のうちは主人公 強化人間621は自分の意志で依頼を受けているわけではないウォルターに「依頼を受けろ」と言われて受けるのだ。

過去作と同じようで同じでない、偽の傭兵登録、指示で受ける企業からの依頼。

「傭兵として依頼された案件をこなしていただけなのに 全ての依頼をパーフェクトにこなすイレギュラーとして狙われる」という過去作とは真逆

「全ての依頼をこなしていくことで 企業の信頼を勝ち取ることが目的で依頼をこなす それは別の目的のため」という流れ。

レイヴン 初代PSからPS2シリーズまでの間アーマード・コアに乗る傭兵のことはそう呼ばれてきた。

しかし今作6では「レイヴン」という名前で登録していた傭兵の身分証を奪って勝手に登録した男の物語なのだ。

「企業からの依頼を受け自在にこなしていく」という体験がストーリー上ではまったく別の意味に変わっていく、今までと同じで新しい体験…
アーマード・コアのままで新しいことをする技術はストーリー面でも深い

そして今作は珍しく「縦軸のストーリー」がしっかりしている
全ての勢力が一つの目標「新物質コーラルを手に入れる」という壮大なレースに参加しており、その進捗に主人公が影響を与えていく

「企業の利益争いに傭兵として関与する」というのは過去作と同じだが
ゴールの見えない争いが続くかつての企業間抗争と違って明確なゴールがあり、主人公勢力もまた「企業を出し抜いて先にゴールしなければならない」という目標があるため 仲良くなりながらもいつかは戦わねばならないサツバツをいい塩梅に備えている。

そして過去作と違って今回はハッキリ言うことが多くなった
「なぜ彼はこんなことをするのか」「なぜこのような目的を果たすのか」何もかも言ってくれるあるいはゲーム内に残っているログ文書で見れるようになった。

10年ぶりの復活だからこそ余すこと無く伝えたいことがあったのだろう。
わけのわからない誤解や考察などなくとも伝わるように全部教えてくれる。

それは過去作からの改善とは言わない、あのサツバツとした、一周回ってカラッとした空気が楽しかったのも事実だ。
だが今回は多くの6からの参入者もいるし、なおかつ既存のプレイヤーに新しさを提供した。

そしてストーリーの終盤でついにプレイヤーに「選択を迫る」という構造
そしてそれを「ED分岐の回収」で終わらせないために2周目3周目でしか見られない依頼によってさらに変わっていくストーリー。

レイヴンとはワタリガラスを意味する言葉である
だが6の主人公621を人々が呼ぶ異名はカラスではなく「猟犬」「飼い犬」
「野良犬」など犬に分類されるものになる。

だがストーリーのある段階で飼い主から解き放たれた時 彼がその翼でどこに行こうとするのか、それは君自身がプレイして君の手で決めてやってほしい。

巨大ボス

さて今作の最大の特徴は毎回巨大ボスが出てくることだ
過去作にも色々と巨大なボスそのものは登場したのだが。

HPが少ないことと巨大な肉体には「ロボット同士の打ち合いだとまったく当たらないが 当たったら一撃必殺」みたいな様々な武装が当たってしまう関係で登場と同時に沈められ「何だったんだあれ」みたいな顔されるのが一般的なのがアーマード・コアの超巨大ボスであった。

というのもアーマード・コアというゲーム基本的には「書いてある数字の通り」のダメージがでるゲームであり、そして「ロボット」のゲームである以上「ロックオンできないからマニュアルエイムになる代わりに当たったら凄い威力が出る」だの「腕の代わりに8つの穴があいた筒を付けておくと ボタンひとつで8発バズーカ弾が出る」だのとアホの武器がいっぱいあり、それらを余すこと無く浴びるのが巨大ボスの宿命だったのだ

しかしながら6ではこれらの巨大ボスたちに多大なHPと装甲
そして凄まじい攻撃力を持たせて行く手を阻む大ボスとして配置してきた。

ていうか6になって歴代で初めて敵のHPバーが見えるようになった
結構凄い進化である

きちんと巨大ボスを巨大ボスとして成り立たせるために
膨大なHP(ACを一撃粉砕できる攻撃でも死なない)
そして「こういうモーションで攻撃してくるからこう回避する」というアクションゲームのちゃんとしたボス戦めいた動きがきちんとある。

こういったボス戦の要素を「ソウル系」という声も上がっているが
「いや、これはアーマード・コアだぞ」という要素は濃い

なにせアーマード・コアはロボット兵器であり飛べるのである
相手の頭上を通り抜けてもよいし
バックブーストを吹かすことで剣戟の間合いから一瞬で離れることも許されるし

全身にミサイルをまとってボスの射程外からひたすらミサイルを撃ち込んで勝つことも可能だ、相手の攻撃モーションの隙をついて3回ロングソードで殴るゲームとは違いターンファイトを意識しなくてもいいのである。
※もちろん大火力武器を叩き込む場合ターンファイトを意識した方が速い場合もある。

総評

アーマード・コア6は我々の前に帰ってきたフロムソフトウェアのロボットアクションゲームだ

ロボットのパーツを組み替えることで性能が代わり
その性能が数字として表示され
実際にその数字の通りにゲーム内性能が変化し

様々な組み合わせを試し、強力な武装を装着し、依頼を受け任務を果たす。

これは間違いなくアーマード・コアだと言って良い

アーマード・コアを目指して様々なインディーズのロボットアクションゲームがSteamなどで発売されたが、彼らは結局「ロボットが空を飛んで的を撃つシューティングゲーム」になってしまった

だが本家本元が「アーマード・コア」の名前を付けてゲームを出すとこんなにも「動かすだけで」「パーツを組み替えて変わるパラメーターを見るだけで」「ミサイルを回避するだけで」これはアーマード・コアなのだと理解させられる。

もちろん私の意見はアーマード・コアにどっぷり漬かった人間の意見だ。

Steam版の売上が130万本に達したとも言われてる
過去作の売上が20万本なので 110万人の初見が雪崩込んでいるのだ

アーマード・コアというものが持つドライな厳しい部分に躓いているかもしれない。

だが私はアーマード・コア経験者だ、この6が過去作と同じドライさと「過去作ではこんなに優しくなかったぜ」と言わんばかりに全てを説明しユーザーに理解されようという意志を持ったゲームだと受け止めている。

願わくば多くの人が惑星ルビコン3に降り立ち。
鋼鉄の巨人が打ち合いをする姿に胸を躍らせてほしいと思う

あとアーマード・コアのお約束でナンバリングタイトルの後に
同じグラフィックを使い回してパーツを増やした続編が出るというものがあるので アーマード・コア6/SLFAVDを楽しみに待っている

ではまた次回までごきげんよう

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