小野俊太郎

『シェイクスピア劇の登場人物も、 みんな人間関係に悩んでいる 作品から学ぶ言葉の力』、…

小野俊太郎

『シェイクスピア劇の登場人物も、 みんな人間関係に悩んでいる 作品から学ぶ言葉の力』、『シェイクスピアの戦争 虚構と現実の格闘のなかで』(小鳥遊書房)。

最近の記事

『魔の山』

「100分de名著」は『魔の山』。ハンブルグという自治都市と市民の関係や、投資や国債など気になることもあります。ハンスはエンジニアなので、C・P・スノーを批判したピンチョンならば、どのように読むのかと考えさせられました。 https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/episode/te/L5QRRKNZVX/

    • PERT(覚書)

      PERT(Program Evaluation and Review Technique)が、プロジェクト管理のツールとして登場したのが1958年で、ポラリス潜水艦の発射弾道ミサイルの開発においてでした。つまり冷戦下の技術の一つとして生み出されたのです。同様のものにデュポンが開発したクリティカル・パスがあります。 PERTとは何か?PERT図の作り方をツールの紹介含めて1から解説 | Promapedia(プロマペディア) (ssaits.jp) PERT図は出発と終わり

      • 世界で最初のゲームブック

        世界で最初のゲームブックは、1930年に出版された "Consider the Consequences!"とされています。https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Consider_the_Consequences! Doris Websterと Mary Alden Hopkinsのコンビによるのですが、Websterはよくわかりませんが、Hopkinsはフェミニストでした。そうしたなかで生み出されたもののようです。 序文は

        • 白黒作品をカラー化する功罪

          白黒作品のカラー化は、ハリウッド映画などをテレビで流すために、アメリカで始まったものようです。現在では、AIのおかげか、白黒作品のカラー化をする技術も進み、色々と試みられるようになりました。 先日見たのがカラーでよみがえる「夢であいましょう〜上を向いて歩こう〜」 - NHKでした。「上を向いて歩こう」の世界でのヒットを受けて、「スキヤキ」となったので、すき焼き食べるところではじめ、歌詞をそのまま訳すとどうなるのかとか、なかなかおもしろい試みを含んでいました。田辺靖雄と坂本ス

          90分が映画の長さの最適とか

          最近はやたら長い映画が上映されていますが、90分程度が最適という結果がアメリカで出たという記事「理想的な映画の上映時間の長さは92分。新たな調査で明らかに : カラパイア (karapaia.com)」がありました。 エディソン社の初期映画のように何でも10分というのは、リールの長さの関係でしょう。こんなに長くなったのも、リール交換をする手間が消えたせいもあるのではないでしょうかね。いまではディスクなどに記録しておけば、長くするのは簡単ですから。 映画の最適な長さは92分

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          「皇帝円舞曲」とフロイト

          あまり話題にはならなかったようですが、「100分de名著」の立木康介によるフロイトの『夢判断』はなかなかおもしろいものでした。最後ラカンにまで踏み込んだのもなるほどと感じました。 第1章の先行研究つぶしは、学問の手続きのお手本のようなものですが、普通の読者はここでへこたれるので、大平健のようにバッサリと切り捨てたもののほうが分かりやすいのも理解できます。「不気味なもの」も同じ手続きをとっているので、読者を減らしている気がします。 シンクロニシティではないですが、立木康介に

          「皇帝円舞曲」とフロイト

          おしどり夫婦作家

          ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』が再映されるとか。色々すぐれた点のある映画ですが、脚本家のリイ・ブラケットが果たした役割をもっと評価すべきに思えます。 ブラケットは、エドマンド・ハミルトンといわゆる「スペースオペラのおしどり夫婦」でしたが、ブラケットの凄さは、ハードボイルド小説を経て、『三つ数えろ』以後のハワード・ホークスを支える脚本家となったことです。ホースオペラを焼き直したのがスペースオペラなわけですが、そのエッセンスを活かしたといえるでしょう。 ブラケットの重

          おしどり夫婦作家

          日本研究は衰退しているのか

          筒井清輝スタンフォード大学社会学部教授が、日本研究がアメリカの大学機関で占める割合が減り、有望な研究が減っていると嘆く記事がありました。 確かに日本研究そのものは後退している気がします。第二次世界大戦戦後の「カウンターカルチャー」とみなせる文化への関心から、冷戦後の「サブカルチャー」への関心に移行したことで、今でも同時代的な文化領域には一定の人気はあるかもしれません。 そのため日本文化についてときには日本語で解説してくれる「外国人」学者も増えています。「世界サブカルチャー

          日本研究は衰退しているのか

          「季節のない街」

          クドカンによる2023年の配信ドラマ「季節のない街」をテレビ東京で流してくれています。話題作となった「不適切にもほどがある!」の前に「あまちゃん」のパロディと自己解体のドラマがあったことはもっと考慮すべきでしょう。 『ゼブラーマン』とか「吾輩は主婦である」のように本歌取りが得意というか、ある意味それしかできない宮藤官九郎ですが、それだけに現代的な問題を盛り込むのがうまい脚本家です。 12年、つまり干支が一回りした時期を狙って東日本大震災の復興の内実を描くドラマを打ち立てる

          「季節のない街」

          『牛泥棒』

          蓮實重彦の文章で『牛泥棒』のタイトルを目にして、なかなか見事な映画のことを思い出しました。アメリカの民主主義の理念を考えるうえで外せない映画の一つだと思います。もっとも、十分にわかっていながら政治的読解を忌避する蓮實さんのことですから、あれこれのショットの話かなと思ったりもします。 この映画のヘンリー・フォンダがなければ、『荒野の決闘』も『間違えられた男』も『十二人の怒れる男たち』もなかったのは確かでしょう。ダナ・アンドリュースファンとしても見逃せない映画です。そして、『つ

          『舞台は廻る』

          ホームドラマチャンネルで『舞台は廻る』1948を。笠置シヅ子が「ラッパと娘」などを歌いまくる映画です。監督が田中重雄(『永すぎた春』に『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』)で、作曲家役に小津映画の常連斎藤達雄が出ていて、それも興味深かったです。 冒頭にNHKが街頭で市民の声を聴くラジオ番組をやっていて、そこで、古い価値観をしめす作曲家(斎藤)と、その隣人で新しい価値観を示す若い女性(三條美紀)が意見を戦わせる場面が出てきました。戦後の「声」を考えるうえで興味深いものがありました

          『舞台は廻る』

          ヨハンナ・スピリの『ハイジ』

          テレビでヨハンナ・スピリの『ハイジ』1881についての番組をやっていましたが、当時ヨーロッパで著作権に関する法律がそれほど明確に確立していなかったこともあり(1891年が重要な日付となります)、英語などにすぐ翻訳されました。 『ハイジ』を読んで自作に大胆に取り入れたのが、バーネットの『秘密の花園』1911です。テクストを読み替えるお手本でしょう(30年離れているのは案外著作権が絡むのかもしれません)。 アルプスの代わりに、ヨークシャーの田舎(これ自体語り手がロンドンから保

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          「スイスの象徴になった少女 〜“ハイジ”はこうして生まれた〜」

          「スイスの象徴になった少女 〜“ハイジ”はこうして生まれた〜」を。戦後、ナチス・ドイツに協力したスイスのイメージの払拭や観光産業に『ハイジ』が果たした役割が浮かび上がります。小田部羊一たちのスイス再訪を取材し、可能な限り可能性を汲み取りながらも、高畑アニメがスイスの脱色に加担していることを静かに告発しています。 (『赤毛のアン』と同様に)ハイジが児童労働力として売買されている事実を消している点の指摘もありました。スイスのなかでも、フランス語圏では書き換えと続編が作られ、ドイ

          「スイスの象徴になった少女 〜“ハイジ”はこうして生まれた〜」

          世界サブカルチャー史 欲望の系譜「シーズン4 21世紀の地政学 アニメーション編」

          世界サブカルチャー史 欲望の系譜「シーズン4 21世紀の地政学 アニメーション編」を。少々古臭くなったネイピア史観が強いので、異論もありそうですが、それなりにまとまっていました。収穫もいくつかありました。 ベティ・ブープをきちんと扱ったのが重要でしょう。個人的には筒井康隆の最良の仕事のひとつが『ベティ・ブープ伝』だと思います。ディズニーを相対化するのに、フライシャーをもってくるのは鍵で、宮崎駿も含めて影響は大きいわけです。「カワイイベティサン」という絵本が映り、「カワイイ」

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          「こんなところで裏切り飯」の秘書課長

          志田彩良と伊武雅刀とのW主演の「こんなところで裏切り飯」が意外とおもしろい。第1話は松山のグラタンの話だった。 冒頭で「孤独のグルメ」に喧嘩を売ったように、社長と臨時採用の秘書との物語である。描かれるのは祖父母と孫という離れた世代間の関係性であり、「釣りバカ日誌」のスーさんとハマちゃん的な共通の趣味なり事項において、身分や地位を超える関係性を描いている。そこに、ご当地グルメではない料理を挟み込む。グルメに飽きた社長が喜ぶ隠れた料理が紹介されるというわけだ。 となると、二人

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          ダンドリドラマとしての「ハコビヤ」

          田辺誠一主演の「ハコビヤ」は毎回のダンドリが決まっているフォーマットドラマのひとつだが、第1話のフォーマット紹介がそれなりに上手く終わった。共演の影山優佳がコメディエンヌの素質をもっているのに助けられている。 『トランスポーター』が切り開いたサブジャンルをどのように展開していくのかが課題なわけだが、今放送しているなかでは、韓国ドラマの『デリバリーマン~幽霊専門タクシー』が、そうした系譜につらなる。第1話でのタクシーが警察と組んで窃盗犯を捕まえる場面など、まさに車のスピードや

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