『タダシイコト』紀行

 久々に、実家に帰ってきました。

 とはいえ、私が一人暮らししている間に実家の方が移ったので、住んだことのない土地なんですよね。しかも両親が住むために新築したので、初めて訪れる家でした。

 そこは、祖父母が住んでいた土地です。昔からよく訪れてはいました。その土地を舞台にした小説『タダシイコト』を先日公開したのですが、ここでは写真などを交えて小説の背景を紹介していきたいと思います。

作品はこちら


【例年のようにさわやかな暑さがやってきて、例年にはないにぎやかさもやってきていた。特徴のない田舎町だったはずの土地に、リニアの駅ができることになったのである。たんぼを区切る農道は、大型の重機を通すことも難しい。そのためにまずは、道を造るための工事が始まったのである。】

 本当に、何の変哲もない田舎町なんです。田んぼに小川、小さな神社、そしてと遠くに高い山々。それが、リニアの駅ができると聞きびっくりしました。

 一県に一つ駅を作りたいけれど、愛知は名古屋で決まりなのでそんなに近くにはできない。というわけでこんなところにリニア駅。


【いなかの駅にしては、ホームが随分と長い。昔近くでとれた鉱物を運ぶため、貨物が停まっていたからだと幸也は聞いたことがある。南側にはスーパーや小さな商店が立ち並び、北側には田んぼが続いていた。その田んぼの中に、リニアの駅ができる予定である。】

 田舎と言っても結構長い電車が、一時間に二本来ます。便利なので人口は増えているらしいです。


【そのローカル線は、山間を縫っていなかの村々を結ぶものだった。昔は水菜が高校に通うのに使っていたらしく、何度か幸也はその話を聞いていた。
 美鶴はいなかを知らない。見るものすべてが新鮮だったが、何から見ていいのかもわからない状態だった。幸也はそんな彼女に、観るべきところを教えてあげたかったのである。
 列車が、ホームに入ってきた。】

 ローカル線って、いいですよね。車で移動する人が多いですが、高校生などにとっては重要な移動手段です。私は三年前に初めて乗りましたが、見どころの多い路線でした。


【少し進み、角を曲がる。そこにはただ古いだけではなくて、趣のある木造の建物が整って並んでいた。
「わあ」
「城下町なんだって」
 幸也も詳しいことは知らなかった。水菜の同級生がこの町の出身で、昔一度連れてきてもらったことがあったのだ。】

 古い景観の残された町に感じる「懐かしさ」ってなんなんでしょうね。古い町で暮らしたことはないのに。ただ田舎なのではなく、田舎に残された昔の町には、独特の趣と温かみ、そして寂しさを感じます。

 お世話になった店がなくなっていたり、田んぼだったところに家が建っていたり。昔と変わったところはあります。それでも、あんまり変わらなかった田舎。引っ越しの多かった私にとって、昔からそこは「帰る場所」だったと思います。

 そこに、リニアがやってきます。これから、どんどん変わっていくのだと思います。そんなつもりはなかったのですが、「タダシイコト」は思い出の土地を書き残しておく、そんな作品になったかもしれません。


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