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一枚の葉が落ちるとき

一枚の葉が落ちるとき
思い起こす

ちいさな新芽がみえたとき
やわらかな若葉が次第に広がるとき
強い日差しのもとで葉はやがて
しっかりと呼吸をし
厚みを増し色を増す
夏が過ぎ
数々の試練を乗り越え秋になると
一枚の葉は色を付ける
最期の灯のように赤々と燃え
赤々と燃え
やがて満足したかのように
茶色く干からびてゆく
そして人知れず
人知れず
自ら離れて落下してゆく

人の死の瞬間が解明されないように
一枚の落葉もその瞬間
いったい何が起き
誰が決意して
どうやって
すべてが生と切り離されるのか
わからない
しかしその瞬間が来るときには
生きているものの意思が
必ず反映されている

99という数字はもはや
継続しない
けれども
書いたものは残る
良いものは必ず残ってゆく

瀬戸内寂聴さん
どうぞ安らかに